海外生活体験者・社会人インタビューvol.4


S.Fさん。1974年東京生まれ、2歳から5歳までをオランダ・アムステルダムで、高校時代をアメリカ・シアトルで過ごす。上智大学法学部を卒業後、某在京民放キー局に入社し、主に報道畑を歩む。現在、企業派遣により国内の大学院修士課程に在学中。

―海外経験があると伺っていますが、現地での生活はいかかでしたか?

中学3年生から高校卒業まで、アメリカのシアトルに行っていました。アメリカでは、はじめ、どうしてもアジア人とばかりつるんでしまって。英語も全然しゃべれなかったし、日本語英語のようなものになってしまうし……。でもこれじゃいけないと思い、陸上部に入りました。足がちょっと速かったから、一所懸命走って。なんていうか、日本みたいに、みんなで集まってランニングしようっていうサークルのノリとは違って、アメリカの部活は本当にスパルタだった。ウォーミングアップに延々とランニング、遅刻したら何かとプッシュアップ(苦笑)

―アメリカから帰国した後日本の大学に進まれて、カルチャーショックのようなものは感じませんでしたか?

僕はどちらかというと、帰国生特有の「なんで日本は……」「なんで日本人は……」という感覚はなかったんですよ。だからすんなりと溶け込めましたね。カルチャーショックのようなものはあまり感じませんでした。

―海外生活は、今のご職業に繋がっていると思われますか?

海外生活の影響はほとんどない。それよりも、色んなことを自分の中で考え抜いた結果が今の職業なんだよね。はじめは新聞記者になりたかったけれど、入社後の20代を地方回りで過ごすことに抵抗があって。それよりは、多感な20代を情報が集まる東京で仕事をしたいと思った。あと、うちの会社は、某公共放送の約10分の1の人数で仕事をしているから、若いうちからやりたい仕事ができると思って。

―具体的にどのようなお仕事をされていらっしゃるのですか?

これまで警察のほか、政党や外務省、総理官邸などを取材しました。テレビは新聞と違って、スピードと分かりやすさが求められる。だから、どうしても、問題となっているテーマの中身よりも、政治家や派閥など人物関係にフォーカスしてしまいがちなのがジレンマかな。ニュース自体が、政治の本質的な問題の追求ではなく、単なる政治ドラマになってしまっていると感じることがあります。

―テレビ局のお仕事は人気ですし、狭き門だと思います。これから就活をする後輩たちにアドバイスは何かありますか?

一番大切なのはコミュニケーション能力だと思う。立場や利益の違う人たちとどう対応していくか、相手が自分に何を求めているのかを理解することが重要かな。例えば、面接でちゃんと質問に答えたつもりでも、面接官に「具体的には?」とまた質問されるようでは、ちゃんと質問に答えられていないことになる。実際にこういう基本的なことができていない学生が多過ぎるから、基本が出来ている学生は面接でも目立ちやすい。学生のうちから目上の人たちと関わる機会が、あればそういった能力を訓練できると思う。

―海外で生活されていたことの利点は何でしょうか?

個人的に、米中関係や安全保障に興味があります。そういった問題を見ていく中で、書物で読むとかじゃなくて、アメリカを肌で知っているのは大きい。自分自身がアメリカで生活していて、それを肌感覚で理解していることは、政治家や外交官、学者と話す上でも大きな財産だと思う。

―帰国子女が日本社会に対して出来ることはありますか? またその役割は何であると思われますか?

海外生活で得た経験や視野を、身の回りのみんなとシェアすることだと思う。日本国内でみんなが海外で生活できる環境にあるわけじゃないし、恵まれているわけではない。国内でしか生活していない人たちに、「こういう見方もある」という外の視点を伝えられるのは帰国生だし、それが帰国生のミッションだと思う。個人的にはこれからも「こういう見方もあるのでは?」ということを公私両面で自分の言葉で伝えていければと思ってます。

インタビューアから一言

今回初めて、報道関係の方とお話をさせて頂ました。コミュニケーション能力が大切だとFさんは仰られていましたが、話が起承転結まとまって、的確かつ明白に、はきはきとお話をされていて、大変魅力的な方です。報道の現場で働くということは、単なる調査に止まらず、実際に報道する側の自分自身が、ひとつひとつの問題と深く関わり合うことだということも分かりました。この過程で、海外生活を体験していると閉鎖的でない開かれた観点でものを見ていけるという考えも、大いに納得できました。私も、韓国と日本をそれぞれ知っていることを自分のアピールポイントにして、これからの生活の強みにしていきたいと思います。

渡邉マリア。1989年埼玉生まれ。母親が韓国人、父親が日本人のハーフ。小学校3年の時に韓国での生活を体験。その後も、毎年韓国と日本を行き来する生活。高校卒業後、慶應義塾大学法学部政治学科に進学。政治に興味があり、将来は報道や政治に携わっていける職業に就きたいと考えている。