海外生活体験者・社会人インタビューvol.9 ~前編~


高津美咲さん。聖心女子専門学校保育科を卒業後、日本航空に入社し、客室乗務員として3年間勤務。結婚を期に退職し、3年間PRスチュワーデスとして同社と契約。その後1年間はJALアカデミー(旧JALCOS)でビジネスマナーを教える。出産・育児のため一旦仕事をやめるが、13年後にJALWAYSの契約社員として客室乗務員の仕事に復帰し、そこで3年間働くと同時に、ヒューマニケーションなど2つの研修会社に登録。その後人材派遣会社JALビジネスで派遣登録者の面接、研修を担当。‘04年から3年間はドイツ・フランクフルトで生活し、今年6月に帰国後は株式会社アイティフォーで正社員として活躍している。

―さまざまな職業を経験されていますが、まず女性が一度は憧れる客室乗務員への道のりを教えてください。

私は保育士を目指して保育科に進んだのですが、幼稚園での教育実習で自分には向いていないと実感したんです(笑) そこで何がやりたいかを考え、OLには向かないと思いました。当時でいうOLは、男性をサポートする、いわゆるお茶汲みの印象でしたから。自分は人と接することが好きだから、接客業はどうかと考え、小さいころドイツに住んでいたので海外にすごく興味がありましたし、体を動かす仕事がしたいと思い、客室乗務員になろうと決心しました。

―客室乗務員になるには、特別な学校などに行くと聞いたことがあるのですが?

航空会社に入社してから訓練を受けるため、必ずしも学校に行かなければならないということはありません。もちろん学校に行くことで、客室乗務員にはどういうことが求められているのか、厳しい面もあるのだということを知る意味ではよいと思います。時差ボケ、異国での孤独感、毎回変わるメンバーとのコミュニケーションなど、自己管理のしっかりできる人でないと勤まりませんから。

―お仕事をしてきて、実感したことやエピソードなどを教えてください。

いろんな職業を経験しているので、順番にお話しましょう(笑)

客室乗務員時代-昔はヨーロッパへ行くのにロシア上空が飛べず、アンカレッジ経由で8日間、アジア、中東経由では18日間で往復をしていたのですが、アジア、中東、ヨーロッパに立ち寄りながら、国・宗教・人種の違いが次々と感じられ、とても刺激的でした。たとえば、機内においても、その人の宗教によっては、非常口にマットを敷いてメッカの方向に向かって祈りたいという人に方角を教えたり、機内食も祈祷済みのものをお出したり、日本にいては経験出来なかったことが沢山ありました。

PRスチュワーデス時代-フライトはせずに、JALの宣伝広報活動を行っていました。具体的にはJALが協賛しているイベントに出演するのですが、街頭でのPR、テレビ、雑誌出演、講演などの仕事でした。ここでは企業にとって広報活動がいかに大事かということを実感しました。マスコミに対して予算がどこに、どのように使われているのかを知り、普段の生活の中でも雑誌、TV、野球場、電車の中などあらゆる場所でその宣伝効果を感じ、とても面白かったです。

JALCOS(社員研修会社)時代-社員の「質」が上がることによって、会社の業績が上がるものだと思いました。ここで言う「質」とは、頭がいいということではなく、コミュニケーション力です。電話応対ひとつでもその対応がちゃんとしていれば、それが信用にもつながるのです。

―コミュニケーション力とはどのようなものですか?

コミュニケーション手段の一つとして会話がありますが、会話はキャッチボールと一緒です。相手にあったボールを投げなくてはなりません。若い人には、速くて力強いボールを投げてもいいでしょうが、お年寄りや子供に対して同じボールは投げないでしょう? 「投げるよ。いい?」と事前に声をかけたりもするでしょう。相手に合ったボールを投げること、それができることが大切です。コミュニケーション力とは双方向性の関係で、相手と価値観の共有が出来るということです。その手段には視覚的なもの、聴覚的なものがありますがその両方をバランスよく使って人と関わって行くことです。どんなにすばらしい知識や技術を持っていても、それを相手に伝えることが出来るコミュニケーション力がなければ、宝の持ち腐れになるのです。

若い人はマニュアル通りにはできるのですが、マニュアルに書いていないことが起きたときに対応する器用さにかけているように思います。コミュニケーション力をつけるには、それを意識することです。そうでなければ身につきません。

―ここでのマナー研修講師とは、具体的にどのようなお仕事をされていたのですか?

接客5原則といわれる、「身だしなみ」「表情」「挨拶」「言葉使い」「態度」を教えるのですが、電話オペレーターの話し方や、コンパニオンの立ち振る舞い、介護や医療の現場での対応など、行く場所によって内容はさまざまですね。

日本人が苦手なプレゼンテーション力の研修を行ったりもしました。昔は、マナーと言われれば接客業に限られていましたが、段々と、人とのコミュニケーションという意味において非常に重要視され、幅が広がってきました。

―帰国生や海外生活体験者のマナーについてお聞かせください。

私は帰国生だからマナーがどうとかということは思いません。たとえば、どんなに日本に長くいても、自分がおかしい話し方をしていると思わなければ直らないものです。帰国生のように、「もしかしたら自分の話し方はおかしいかもしれない」と思っている人の方が、そのことに対して敏感になります。

そうやってマナーができていないかもと思う気持ちが大事で、そうすれば、じゃあ正しいやり方ってどうなのって思えるでしょう? マナー本を読んでみるとか、検定を受けてみるとか、どういうことが必要か、何をすればいいかと考えていけば、必ずよくなりますよ。

また、帰国生や海外生活体験者は自分を主張する機会にすごく恵まれていたと思います。何らかの形で日本人がどう思われているかも知る機会があったでしょうから、国を離れて学んできた経験を大事にしてください。日本のいいところも、悪いところも見るチャンスがあったのですから、日本人としていいところはきちんと持っていてほしいと思います。 後編はこちらから>>

伊東裕子。1984年愛媛県生まれ。8歳から11歳までバングラデシュ・ダッカで過ごし、中学2年までタイ・バンコクに滞在。その後、ロシア・モスクワで6年間過ごす。日本ではボリショイ・バレエ学校として知られるモスクワ国立舞踊アカデミーを卒業後、フランス・パリのソルボンヌ大学付属講座に学び、 '05年日本に帰国。現在上智大学法学部国際関係法学科2年に在学。