海外生活体験者・社会人インタビューvol.11 ~後編~


宮本大輔さん。1980年東京生まれ。4歳のときにイギリスへ渡航。9歳で日本に帰国し、中学1年まで日本で過ごす。中学2年のときに再びイギリスに渡る。イギリスではパブリック・スクール(英国の名門私立学校)に通う。帰国後、慶應大学法学部法律学科に入学。大学在学中は、サークルで音楽イベントの開催を企画運営。卒業後、三井物産に入社。現在、石油化学製品を扱う部署で活躍中。

―帰国後の大学時代はいかがでしたか?

高校のときは、数学、化学など、理系の科目ばかり勉強していました。だから、大学では文化に触れられる分野を勉強したいと思い、法学部を選びました。勉強以外では、テニスサークルにいたり、新しいサークルを立ち上げたりしました。

テニスサークルについては、日本っぽい、ちゃらい(笑) 先入観があって、そういう雰囲気が苦手だったので、一度そういうところに飛び込んでみるのもいいかなと思って入りました。実はかなり偏見を持って入りましたが、ノリであんなに場を盛り上げられる彼らに正直感心しました。

―ご自身で立ち上げたサークルについても、お聞かせ下さい。

やはり軽い話題ばかりの集団に物足りなさを感じて、歴史はありますが、当時崩壊寸前だった別のサークルに入りました。音楽イベントのサークルで、DJとリスナーの集まりなのですが、このサークルでは帰国子女や、頭はいいのに3、4年留年している変わり者ばかり集まっていて、音楽そのものを純粋に楽しむこと以上に、彼らの話題や発想に深みがあって居つきました。

しばらくすると、一年生が入ってきたのですが、非常に幼くて自分勝手だなという印象を持ちました。DJは、何よりも場の空気を読むことが大切だという認識を持って私はやってきましたが、お客さんや流れを無視している後輩が目立ちました。技術的には僕らより優れているんですが、自己顕示欲が強かったり、協調性がなかったり。

世代別にイベントをやってしまおうという案もありましたが、やや複雑な環境で育った帰国子女や大学在籍年数7、8年の者から見れば、後輩が幼く見えるのは当然と思うようにしました。異なるバックグランドを持つ者達が、時に不細工にぶつかり合い、徐々に調和して新しい何かを生み出すプロセスに、英国で面白みを感じるようになっていましたので、彼らにももう少し色々と問題意識を持ってほしくて、試行錯誤しました。互いが感情をむき出しにせざるをえないような状況を作ったりもしました。時間はかかりましたが、そんな彼らと成功させたイベントは、我々だけでは到底思い浮かばないアイディアに溢れており、また、それぞれの異なる価値観を緊張感のある場で共有できた爽快感がありました。

―現在のお仕事について教えていただけますか?

今は石油化学製品の原料を扱う部署で、貿易、マーケット・トレーディングを行っています。今の業務は6割が英語です。商社には、若いうちから海外に行かせて、感化され成長するように、入社後間もないうちに海外に行かせようという考え方と、仕事のできないうちから海外に行かせても意味がないという考え方があります。

時代や企業によって考え方は変わってくるのですが、今うちの会社は前者の考え方なので、入社後間もないのに海外に行く人もいます。希望すれば、希望する国で学ぶ制度もあります。海外との接点が常に最大のインセンティブです。

また、商社はいらないという意見が常にあります。しかし、商社はユーザー・サプライヤー間の文化の翻訳をする役目があり、これは簡単ではありません。的確なサービスを提供するために、どちらの文化にもどっぷりつからないといけないからです。

―商社に対して華やかなイメージをもっている学生も多いと思いますが、実際はどうですか?

私も華やかなイメージを持っていましたが、実際にはイメージは違いました(笑) やっていることは地味な作業の積み重ねです。まぁ、華やかとは異なりますが、商社ではグローバルな問題意識、外国人が何を考えているか汲み取る感覚は重要になってくると思います。

―自分が帰国子女だなと感じることはありますか?

あります。会社の中では、社員のほとんどが海外経験のある人なので感じません。しかし、お客さんと話すときは、自分が日本の文化について勉強不足だなと感じます。特に日本人と会って話すときの独特の間や空気は未だに不得意です。

―就活生に何かアドバイスを頂けますか?

学生を見ていて思ったのは、勝手にプレゼンを始めたり、自己中心的な面接をしたり、非常に自己顕示欲の強い学生が多いということです。いい意味での荒削りとはちょっと違いました。また、会社研究はばっちりなのに、自分のことはわかっていない学生も多かったです。

会社は、面接にくる学生がどんな人かを知りたいので、そのことを忘れないでほしいです。学生生活の中で取り組んだことについて、なぜ始めようとおもったのか自分自身で考えて、自分が大きな選択をする際の判断基準は何か分析をしっかりしてほしい。また、これから就職活動する方は、普通の会話の中で自分の良さを出せるようにしてほしいですね。

―ご自身の就職活動について教えていただけますか?

OB・OG訪問のときに、いろいろな業種の方からお話を聞き、行った会社行った会社で、「この会社に行きたい」と思っていました。やはり、会社のカラーも感じました。スマートな人が多い会社だなとか、ぶっとんだ人が多い会社だなとか(笑)

―今大学に在学中の学生に何かアドバイスはありますか?

大学在学中に海外に行けばよかったと思います。社会人になると時間がないし、出張で海外に行っても、いつも真剣勝負で、ゆっくりと文化について考える機会がないです。海外に行って街を歩いているだけでinspirationが得られますし、問題意識が磨かれると思います。

それからもう一つ。自分が入ったらきついと思う環境に入っていってほしい。答えは出さなくてよいので、必死に考える環境を自分で作ってほしいです。

―最後に、ご自身の夢や大切にしていることについて教えていただけますか?

特定のお客さんといい商売をするだけでなく、僭越ですが産業構造そのものを良い方向に導いていきたいという意識を持って働きたいです。産業が持続的に発展して、成長し、夫々が仕事を楽しめる仕組みを考えたいです。

大切にしていることは、自分とは違ったり、到底理解できなかったりする価値観の存在を楽しむことです。自分の考えを押し付けることはしたくないです。変な人もいるけれど、相手からみれば、自分も変だということを頭の隅に置くようにしています。価値観の違いはビジネスのチャンスでもあります。また、一つの目的のもとに、いい意味で妥協するプロセスを楽しみたいです。自分と違う人がいれば、ぶつかることもあります。でも、相手を尊重することを大切にして、謙虚になろうと思っています。

インタビューアから一言

異なる人間と一つの目的を達成するために、いい意味で妥協するプロセスを楽しみたいとおっしゃっていました。この言葉にとても感銘を受けました。私は、いままでそうして来なかったので、それを楽しめるように努力したいと思いました。また、私はイギリスに行ったことがないので、イギリスについてのお話は大変興味深かったです。お忙しい中インタビューに応じてくださって、本当にありがとうございました!

秋山雪乃。1986年京都府生まれ。中学2年まで日本で過ごし、その夏に渡米。カリフォルニア州サンディエゴ・アーバインなどに滞在し、高校2年の年に一時帰国。その夏、再び渡米。帰国後、早稲田大学法学部に入学、現在二年に在籍。学生NGOチャオに所属。