海外生活体験者・社会人インタビューvol.14


N.Yさん。1974年和歌山県に生まれる。中学時に渡米、5年6ヵ月をアメリカ・カルフォルニア州で過ごし、高校卒業後帰国。東京大学文科Ⅱ類へ進学。経済学部を卒業後、大手通信会社に入社。ネットワーク・エンジニアとして、システム構築プロジェクト管理やインターネット国際接続の運用を経験後、中央官庁に二年間出向、国際会議における政府間交渉に携わる。通信会社に帰任後は、経営企画業務に従事している。

ところで、RTNプロジェクトってなんですか?

―え?! いきなり、インタビューウィから質問ですか?(苦笑) RTNプロジェクトは、海外生活体験者のネットワークを構築し、それをweb2.0のプラットフォーム化しようとしています。そして、組織や人間関係のあり方を、今より自由で開かれたものへと変えてゆく、そんな趣旨のプロジェクトです。

そうですか。海外生活体験者であるということについて、今までとりわけ意識することはありませんでしたが、最近になってそれを意識してもいいんじゃないかと思うようになりましたね。

―それはどうしてでしょうか。お聞かせ願えますか?

なんて言えばいいかな。日本独特の堅苦しさというものを感じることが、時としてあるからではないでしょうか。そのような文脈で、海外生活体験者を意識してもいいんじゃないかと思うようになりましたね。いわゆる帰国子女のような海外生活体験者に留まらず、それに共感する人たちは少しずつ増えていると思います。

―それはどのようなものでしょうか?

日本にしても海外にしても同じことかもしれませんが、大きな組織には独特の堅苦しさというものがあります。日本の大企業には特に顕著かも知れませんが、仕事において、上司、あるいは上司の上司がどちらを向いているのか、細心の注意を払います。そして、上司の考えと自分の考えが合致していても、そこには思わぬギャップがあるのではないかと、必要以上に気を使う傾向があると思います。

問題は、双方向のやりとりに欠けるということだと思います。もちろん、人と人とのやりとりで交換できる情報は限られていますし、みんなが何でも言いたいことを言えば、すべてが上手く廻るわけではありません。組織ですから、上に行った人のほうが経験も知識も豊かなことが多いですし、正しいことが多いかもしれません。ですが、フランクなやりとりの必要性を感じている人は、私を含め多いのではないでしょうか。

―今の仕事をどのような基準で選ばれたのですか。

朝から晩まで仕事だけしたくなかった(笑) ワーク・ライフ・バランスに重きを置いて仕事を選びました。

あとは、仕事の面白さですね。僕が就職したころは、ちょうどインターネットを使い始めた時だった。インターネットってどんなものだろうみたいな好奇心が、大きなウェイトを占めていたと思います。インターネットの仕組み、機能、それらを学んだりできることはとても面白いんじゃないかと。

インターネットという空間においては、リアルと違って、情報の非対称性が大きく縮減されます。僕は大学で経済学を学んだのですが、放っておけば不完全かもしれない情報を、より完全な情報へと近づけるという情報技術に興味を抱いています。今の仕事を選んだのはインターネットのおかげかもしれません。

―ワーク・ライフ・バランスが大事とおっしゃられましたね。休日は何をして過ごすのでしょうか。

サッカーするかジムで運動するか。最近はジョギングに嵌ってます。あとは読書ですね。本は、経済学の本からサブカルから、幅広い興味関心があります。

―大学時代はどのように過ごされたのですか。

寝てたよ(笑) 昼まで寝てた! 自由な大学生活を謳歌していました。

でも、寝てるだけじゃなくて、まじめに勉強もしてました。ここで言う勉強というのは、いわゆる授業とかの勉強だけではなくて、一緒にいて楽しい仲間をつくるという、社会勉強を含めた広義の勉強です。ちなみに、僕はスポーツ・サークルに所属していましたが、そこではいろいろと面白い出会いがありました。

―アメリカ・アーバインではどのような海外生活を送られたのですか。

アメリカは遊ぶにはいいところだと思います。日本人同士でつるんで遊んでました(笑) 車の免許も16歳で取れるしね。部活ではサッカーをやってました。サッカー部の連中を見て、ニュースとか一切見ないアメリカ人って、ホント頭悪いなとか思ったこともありました(笑) でも、共通の常識がない。アメリカの面白いトコです。

―これから就職活動、そしてキャリア・デザインを考える学生に対して、アドバイスをお願いします。

自分のアドバンテージを理解することは重要です。これは僕の考えですが、海外生活体験者には2つのアドバンテージがあると思います。1つは語学。もう1つは適応力です。

適応力というのは、新しい環境に柔軟に適応できる力のことです。建設現場に行けば建設現場の文化を学び、役所に出張すれば役所の文化を学ぶ。この語学と適応力という意味で、海外生活体験者はちょっとした“ゲタ”を履いています。ゲタが磨り減らないうちに(笑)、ゲタをどう生かすか、考えなければなりません。

歩く方向を見定めることが大事なのです。「高いゲタを履いている」=「正しいところへ向かう」ということではありませんから。何をやりたいのか。どこに向かいたいのか。これらを突き詰めることで、最初のアドバンテージをより生かすことができます。ゲタばっかり高くても、どこに向かえばいいのかわからなければ、意味がありませんよね。しかも、このゲタは磨り減ってゆきます! うーん……、磨り減ってゆくというか、まわりのゲタが高くなるということかな。優秀な同僚にすぐにキャッチ・アップされますからね。

僕の場合、本当は入社5年目、6年目の人がする仕事を、3年目で任されたことがあります。お客さんがアメリカ人だったので、語学に長けていた自分を頼ってくれたのです。高いゲタのいいところはここですね。そして、お客さんにしっかり応えることを忘れてはいけません。語学オンリーでは、なかなかいい仕事はできないでしょう。技術かもしれない法律かもしれない、自分の専門性をしっかり鍛えることです。

逆に、海外生活体験者に考えられるディス・アドバンテージとして、やみくもに自己主張することがあると思います。自分の言いたいことを言いたいときに主張しているだけじゃ、多くの場合受け入れてもらえないでしょう。自分と考え方が違うということを前提に、いかに上手に自分の言いたいことを伝えるか。これが大事です。考え方や利害が異なるのは当たり前。売り手、買い手、国内でもそうです。異なる利害をいかにしてまとめるか。そしてその過程で自分の主張をいかにして組み込むか。ここが大切なのです。

―なるほど、そんなYさんが仕事で大事にしていることって何ですか?

言語化を試みたことはあまりないのですが……。自分の目指しているのは、まったり仕事しつつ責任感がある。これですね。まったり、でも責任感100%(笑) 何ていうか、ギスギスしない、変な緊張感を持たない、これって大事だと思います。仕事をしていて、感じても仕方ないプレッシャーってのは、どうしてもあるでしょう。必要じゃないことについて勝手に思い悩むことはよくあることです。自分のコントロールできないところから無駄な影響を受けない。逆に、自分のコントロールできるところはしっかりコントロールする。

―そんな、Yさんの人生のパートナーはどのような方なのでしょうか?

僕は無責任な自由を謳歌しています!(笑)

インタビューアから一言

Yさんは、やることをやってきた人、という感じのする優しそうな大人の方でした。今までの努力が成果を生み、その成果が自信を生み、その自信が決して折れることのない、自分に正直なYさんを支えているのではないかと思います。お忙しい中、自分の拙いインタビューに付き合って頂き、本当にありがとうございました!

佐古田継太。1986年、埼玉県春日部市生まれ。小学3年生の夏まで名古屋で過ごす。その後、香港に5年、台北に5年、計10年間を海外で過ごす。台北アメリカン・スクールを卒業後、帰国。現在、早稲田大学政治経済学部国際政治経済学科2年。バディ・ネットワークPUNKdに参加。また、政治サークルにも所属。中東における人間の安全保障について研究中。