海外生活体験者・学生インタビューvol.17


木村洋介さん。1984年山形県に生まれる。生後すぐにサンフランシスコへ渡り、9歳までアメリカで過ごす。その後、日本へ帰国するが、中学3年から高校卒業までシンガポールに滞在。大学受験のため日本へ再帰国し、現在は一橋大学経済学部4年に在学。株式会社キヤノンへ入社が決まっている。

―アメリカ、シンガポールと二ヶ国を経験していらっしゃいますが、初めて海外行きが決まった時はどうでしたか?

僕は生まれて5ヶ月でアメリカに行ったから、特に何かを感じるということはなかったよ。生まれてすぐのことだったから、全然覚えてないけど(笑) ただ、シンガポールに行く時は、家族会議とかしたね。普通の高校に行く予定だったし、受験の準備とかしていたから、最初行くのは嫌だった。だから、日本に残るかシンガポールに行くか、いろんな人に相談したけど、いま思うと、シンガポールに行ったのは正解だった。

―シンガポールでの生活はどうでしたか?

9歳までアメリカにいたから、英語は日常会話には困らなかったんだけど、歴史とかを英語で勉強しなきゃいけなかったからね。それは難しかった。シンガポールのインターナショナル・スクールに通っていたから、昼休みの時間とかには、日本人が1つのテーブルで固まっていたよ。でも、僕はそこに絶対に混ざりたくはなかったから、最初は友達とかはあんまりいなかった(苦笑) ただ、段々と外人の友達ができ始めて、自分で作っていたプライドの壁が取り払われたとき、気が付いたら日本人の輪にも入れるようになってた。

―自分が帰国生であるということについては、どう思いますか?

そうだなぁ……。いろいろな捉え方があると思うけど、自分にとって自分が帰国生であることは、国籍やジェンダーと同じように、大きなアイデンティティだと思っている。

―帰国後は自分が帰国生であることを意識することはありましたか?

意識というか、帰国後は、日本にいる人たちはなんで視野が狭いんだろうと思うことがあって、ある意味日本人を見下していたかも(苦笑) でも、ずっとこっちで生活していると、色々なところで自分の視野の狭さを実感する機会がたくさんあって、あまりそういう醒めた視線で見ることはなくなったね。以前は、「自分は日本にいる人たちとは違うんだ!」と思いたがっていたけど、歳をとり、いろんな人々に出会ったこともあって、そういう気持ちは減っていったよ。

―僕はまだ「自分は日本にいる人たちとか違うんだ!」という年頃です……。

そうだねぇ……(笑) 帰国生であることに自信を持つのはいいけど、それだけではなく、人間として自信を持てることを見つけるのも大事だと思うよ。僕はアカペラ・サークルに入っていたんだけど、サークルの代表として、皆をまとめたり、様々な問題を解決したりしているうちに、成長できた気がする。帰国生としてのアイデンティティとは切り離された別のところで、サークルを仕切り、それをやり遂げたことが、自分の新しいアイデンティティにもなり、自分の考えを広げることにもつながったよ。

―帰国後の生活はどうでしたか?

帰国後は普通に塾に通っていたよ。ただ、国立志望だったから、ぎりぎりまで試験があった。暇な時は麻雀とかしてたけど(笑)

―キヤノンへの内定、おめでとうございます。少し気が早いのですが、将来の夢はなんですか?

ありがとう(笑) でも、就職はゴールじゃないと思っている。将来の夢かぁ……。うーん、そうだなぁ。やっぱりね、大きいことをしたいから、いろんな人を動かして、自分だけじゃ出来ないことをしたいね。

いつかは政治的な場に活躍の場を移して、日本だけではなく他国で起きている問題を解決出来るようになりたい。その夢のためには、自分が自立していなければならないし、人のために何かをするにも、やはり自立が必要だと思う。自立していない人がする支援は、自己満足の域から抜け出せないのではないかと感じているから。まだ先の話だし、その実現方法は変わるかもしれないけど、それなりのスキルを身につけて、早く一人前になりたいな。

―そのために何か大切にしていることはありますか?

そうだねぇ……。日本に住んでいると、場の空気を読む力とかが必要だけど、根本的なこだわりは絶対に譲らないようにしてる。それ以外のところは妥協するけど、自分の曲げたくないところを持つことが大事だと思うよ。まぁ簡単に言ったら「自分の中の正義」だね(笑)

―「自分の中の正義」ですか?!

そう、普遍的な正義ではなくて「自分の中の正義」。その「正義」に関して、自分を甘やかさないことが大事だと思う。自分もそうだけど、多分甘えてる人って最近多いと思う。その「正義」を大事にして、まずは自立した人間になりたい。そのためには、相手を自分と同じ個人として尊重し、対等な立場でつきあっていきたいね。

―その他に大切にしていることは?

そうだねぇ、物事をまず客観的に見ようとしていることだね。物事を否定したり、バイアスのかかった視点から見るたりするのではなく、そのものを認めて、実際に何が出来るのかを考えるのが大事だと思うよ。

―最後にこれから就職活動をする人たちにアドバイスをお願いします!

うーん……。そうだなぁ、まず決めつけないことかな。自分が「これは自分にあっている!」とか決めつけない。僕は最初商社を目指していたんだけど、受かんなくて結構落ち込んだよ(苦笑) 自分に何があっているのかを、他の人から意見をもらったりしながら決めた。だから、今はキヤノンに行くことになって後悔とかしていない。ある程度自分の軸をもって、他人の意見を聞いたり、たまには流れに任せたりするのもいいと思うね。何でも自分の力で選び取れるのは素晴らしいことだけど、そうじゃないことの中から学べることも、たくさんあると思うんだ。もし間違ったと気づけば、そのときにまた新たなチャンスを掴めばいいと思う。

インタビューアから一言

木村さんはとても気さくな方で、インタビューしているこちら側も楽しくなってしまいました。木村さんのお話しは興味深いものばかりで、大人としての余裕も学ぶことができ、とても有意義なインタビューになったと思います。雰囲気を十分に伝えられないことが残念ですが、僕も木村さんのように心に余裕をもった人間になりたいと思います。今回はお忙しい中インタビューをお受け頂き、本当にありがとうございました。今後の活躍を期待しています!
interviewer_s_33_2profile.jpg 古屋悠。1987年東京都生まれ。生後間もなくドイツへ移住。ドイツのデュッセルドルフに5年間滞在し、帰国後鎌倉へ。中学3年からドイツのフランクフルトへ渡り、高校卒業後まで滞在。現在は早稲田大学人間科学部2年に在学中。