海外生活体験者・社会人インタビューvol.19

interviewee_s_45_profile.png Corinne Vallienne(コリンヌ・ヴァリエンヌ)さん。通称マダム・ヴァリエンヌ。パリ生まれ、パリ育ち。23歳の際にトゥルーズに移住するが、その後パリの大学に戻り、文学を専攻する。今年で来日して7年目。現在は日仏学院、慶応義塾大学など、多くの学校でフランス語を教えているほか、作家としても活躍している。

―マダムは日本に来て7年目ですよね。日本で、一番びっくりしたことはなんですか?

そうねぇ……。びっくりしたことは色々あるけど、一つ言えというなら、日本の女の子が将来に対して持っているヴィジョンには驚いたし、今でも驚かされるわ。ほら、日本の女の子の多くは、「22歳で大学を卒業して、社会に出て2、3年働いて、そしたら素敵な男の人と結婚して、28歳で子供を生んで、家を買って……」というヴィジョンを持っているでしょう? フランスで女の子がそのような将来のヴィジョンを持っていたのは、1950年の辺りだったから、驚いたわ(苦笑)

―なるほどなるほど。では、日本文化についてはどう思いますか?

大好きよ。なんだかんだ言って、7年もここに居るのは、日本が大好きだからだもの。

―じゃあ、何か嫌なところは?

うーん、これと言っては……、あ、レストランでなかなかメニューが決まらないこと! あれは、ちょっと困ってしまうときがあるわ(苦笑)

例えば、日本で親しくしている友人とレストランに行くでしょ。「何が食べたい?」って聞いても、ストレートに答えが返ってこない時があるの。二人で同じものを食べたいなぁと思うことがあるのに、なかなか彼女の食べたいものが分からないと、結局私の食べたいものになってしまうんだもの。なんだか、「モウシワケナクナッチャウ」(とおっしゃったマダムの日本語は、とても素敵なアクセントでした)。

―そうそう、マダムは、日本語勉強してらっしゃるんですよね?

もちろん。日常生活くらいなら日本語でできるわ。でも、あんまり使う機会がなくって。(F:・・・?それはまた、どうしてですか?)うーん、たとえば銀行に行って、職員さんに日本語で話しかけると、彼らが英語で返してきちゃうの。ヘンケンよねぇ。私みたいに、英語を話さない外国人もいるのに(苦笑)

―ところで、マダム・ヴァリエンヌ、日本人の学生とフランス人の学生の違いってなんでしょう?

AH.(と人差し指を軽く挙げ、待ってましたと言わんばかりに)その違いは、間違いを犯すのが怖いかどうかね。日本人の学生は、文法から熟語の使い方まで、間違いを犯すのをとても恐れるわ。だから、しゃべらない。それに対して、フランス人の学生は、間違いをそれほど気にせず、とりあえずしゃべろうとするわね。そういう意味で、彼らは間違いを犯すのを怖がらないの。まぁ、だからERREUR(間違った表現)もいっぱい言うんだけど(笑)

―その違いは、どこから来るのでしょう? やっぱり、文化的なものなのでしょうか?

それはちょっと難しいわね。きっと、いろんな意見があるのだと思うけど……、私は、日本とフランスは「習慣」が違うから、そういう違いが生じるのだと思うの。

例えば、フランスでは、あらゆる状況において意見を求められる習慣があるわ。フランス人は、小さいときからずっとそういう習慣の中で生活するの。幼稚園のときなら、「あなたはどの色が好きなの?」とか、「あなたはどんな絵が描きたいの?」とかね。

そうしているうちに、自分の意見を言うことに慣れて、間違いを犯すことが怖くなくなるのね。日本人の学生はなかなか話そうとしないのは、その習慣がないから。

―でも、せっかくフランス人の先生が教えてくださるのに、話さないなんてなんだか勿体ないです(苦笑)

ええ、それは確かにそうね。私は、それはとても残念だと思うの。話さないと確かに間違いは犯さないわ。でも、話さないと上達することだってできないんだもの。ある言語に慣れていないときに話すと、ERREURも沢山言うことにもなるわ。

でも、ERREURを言うか言わないかということは、本質的なものではないということを、どうか分かってほしいの。だって少なくとも私のクラスは、フランス語をいっぱいしゃべって、上達するためにあるのですもの。

―確か、「しゃべらない」「質問しない」ということは、フランスでは失礼な行為にあたるんですよね?

えぇ。「質問しない」ということは、相手に対して関心がないということを意味するの。だから、どんなに些細なことでもいいから、とにかく「質問をする」ということがフランスではとても重要。

”Apprendre la langue est apprendre une culture (言語を学ぶということは文化を学ぶということ)” だから、フランス語を学ぶ学生にも、そのことはぜひ知っておいて欲しいと思ってるの。

―マダム、今日は本当にありがとうございました。

 

(編集者注:インタビューのほとんどはフランス語で行われました。翻訳はインタビューアの藤原彩加によります。)

マダムの最新作“Le Dernier Voyage de Lena Nemirovna”は、www.amazon.frにてお買い求めいただけます。

 

インタビューアから一言

マダム・ヴァリエンヌとの出会いは去年の5月。私は、5歳から9歳までという、実に微妙な時期にフランスに居たので、どのクラスもレベルに合っておらず、色々と模索していました。「あそこは簡単すぎる、かと言ってここは難しすぎる」などと言っているときに、少人数制のヴァリエンヌ先生のクラスに辿りつきました。このインタビューがきっかけで、マダムのクラスに生徒が殺到して、少人数制じゃなくなったら、いやだなァ……(苦笑)などと思いつつ、マダムの魅力を伝えたい!という気持ちでインタビューしました。それではマダム、来学期も日吉でお会いできるのを楽しみにしてます。Madame Vallienne, je me réjouis de vous rencontrer l’année prochaine à Hiyoshi!


藤原彩加。1988年生まれ。5歳から9歳までフランス・パリで過ごし、帰国後、東京の小学校に通う。小学校6年からインドネシア・ジャカルタ。中学1年の時に日本に一時帰国、中学2年でインドネシアに戻るが、その直後にカナダに渡り、オタワにある私立高校へ編入。卒業後、慶應義塾大学法学部政治学科に進学し、現在1年在学中。