海外生活体験者・学生インタビューvol.28 ~後編~

interviewee_s_62_profile.jpg 樋口舞さん。1989年兵庫県神戸市生まれ。0歳で渡米、アメリカのボストンへ。その後、1歳で豪州のキャンベラに渡り、6歳から小学校を卒業するまでの6年間を日本で過ごす。小学校卒業と同時に、スイス・ジュネーヴへ。15歳で再度渡米し、‘07年6月にヴァージニア州にて高校を卒業。帰国後、‘07年9月に早稲田大学国際教養学部へ入学、現在1年に在籍中。。

―9.11は日本で経験されたと思うのですが、昨年、ヴァージニア工科大学で事件があったときは、アメリカにおられたのですね。当時は、いかがでしたか?

被害者の一人が、同じ高校の卒業生でした。私の高校は大体がVTech(Virginia Tech)かUVA(University of Virginia)に進学するところだったので、あの事件があったとき、VTechに進学が決まっていた友人もたくさんいましたし、被害者のひとりであった女の子を知る人々はなおさら落ち込み、校内はしばらく暗い状態でした。

しかも、犯人が韓国系アメリカ人だとニュースで判明したとき、学校では韓国人批判をする人も現れ、またそれに対して、国籍だけで人を侮辱するなと、反対する人たちも行動を起こし、事件によって、人に対する見方を見直す機会が与えられたと思います。9.11のときもそうでしたが、国籍だけで人を判断しているような状況でしたから。

とあるアメリカ人の女の子が、イラン人女子生徒に向かって、テロリストと同人種だから彼女とは仲良くなれないと、発言したことがありました。人種や国籍でひとくくりにしてしまうのは、おかしいと思います。ひとというものは、国籍や名前や外見だけではなくて、中身が一番重要なのであるということを、いつも念頭において、人と接していきたいと思います。

―いろいろなことを経験されて、そうして自らの意思で帰国を決めて、早稲田大学の国際教養学部に入学されたのですね。進学のきっかけなどありましたら、教えてください。

11年間海外で過ごして、自分は本当に日本人なのかと思い始めたのがきっかけです。日本史も分からず、漢字も知らない。その自分が、スイスに住んで、外から日本を見て、今度はアメリカに移って、また日本を見つめてみて、日本を知らなすぎて、日本を誇れないことに気付きました。「日本って?」と思ううちに、日本を内側から「再体験」したくなって。

国際教養学部は、教授も、生徒も、多文化を「住んで」体験していて、多文化あふれる学部だから、様々な視点に触れ続けることもできるし、みな様々な意見を持っているから、意見が多ければ多いほど、広い考え方ができると思うし、一緒に毎日を過ごせば楽しいだろうなと思ったんです。

また、「日本人」という、私にとっては枠組みでしかないidentityの中から、どれだけ自分を発展させていけるか。どのようにして自分の価値を見出していけるか。このようなことを考えて、国際教養学部に入りたいと考えました。

あと、英語で勉強をするということも重要で、英語で書かれた文献は多いけれど、それが日本語に訳される前にも、情報を原文で、間に極力なにも挟まずに、「そのまま」の状態で、たとえば、訳者の概念に左右されることなく受け取れるということは、とても大切なことで、すごく意味のあることだと思います。だからこそ、英語で勉強をしたいと思いました。

でも、もし子供が生まれたら、日本語は絶対教えるし、関西弁も(笑) 英語やいろんな言語を学んで、いろんな世界を学んで欲しいと思います。言語は楽しんで学ぶもので、新しい世界への扉だと思うので。

―最後に、これだけは常に心がけていようと思っていることはありますか?

食べることが好きなので(笑)、食べ物に関して、食わず嫌いはしないことかな。どれだけおいしいかは、食べてみないと分からないですから! 例えば、友だちの家に行って、その友だちの食文化のひとつを振る舞われたとして、それが見たことのないような色のものであっても、食べてみる。

それって、人に対しても同じかな。初めて会った人に対して、結構人見知りするんですけど、でも、初めて会った人だからこそ、特に一所懸命話しかけようと心がけています。

常にオープンでいて、常に好奇心旺盛でいられるように。色々なことを吸収出来るように。でも、いくらオープンとはいえ自分を見失っちゃいけないから、自分というアイデンティティーはしっかり持っていたい。世の中で、自分が何をどう動かしていけるかを考えていきたいです。

世の中とはいっても、物理的に規模の大きいことでなくて、例えば、友だちとの関係が作るものだって、大切な大きな世界だと思うし、とりあえず、たくさんのことを精一杯頑張っていきたいと思います。

インタビューアから一言

やわらかい雰囲気を持ちながら、まっすぐ真摯に人と接する姿勢を常に持つ人です。インタビューアの以前からの知己ですが、謙虚でありつつ、会うたび輝きが増すようで、今回のインタビューでも新たな、さらに磨きのかかった彼女に会えました。初心を忘れないという気持ちを、いつも分けてもらってます。今後の活躍を期待しています。
interviewer_s_48_profile.jpg 倉門亜実。1988年、東京生まれ。国内を幾度か移動した後、中学2年でスイス・ジュネーヴに移り住む。インターナショナル・スクールを卒業後、帰国し、現在は早稲田大学法学部1年に在籍。