海外生活体験者・社会人インタビューvol.27 ~後編~

interviewee_s_68_profile.jpg Roland Nozomu Kelts(ローランド・ノゾム・ケルツ)さん。アメリカ人の父親と日本人の母親の間に生まれ、ニューヨークで育つ。オーバリン大学、コロンビア大学を卒業後、ニューヨーク大学、ラトガーズ大学、バーナード大学などの教壇に立つ。アメリカでは、数々の雑誌や新聞に、作品・記事・エッセイを寄稿。’06年に“Japanamerica: How Japanese Pop Culture Has Invaded the U.S.”を出版。日本では、「朝日新聞」「読売新聞」「毎日新聞」「ジャパン・タイムズ」などに作者プロフィールが紹介され、「群像」「ヴォーグ・ニッポン」などの雑誌に、エッセイや記事を提供する。書き下ろし小説“ACCESS”が’08年中に出版される予定。現在、東京大学、上智大学、聖心女子大学の講師を務め、また、ニューヨークを基点にした雑誌の共同編集者も務める。

―秋葉原が話にあがりましたが、先日の事件についてどう思いましたか?

The Daily Yomiuriや他のところに記事を書いたので、詳しく知りたいときは、是非それを読んでくれたらいいと思います。
(http://thestar.com.my/lifestyle/story.asp?file=/2008/6/22/lifefocus/21578050&sec=lifefocus)

ただ、考えたことを簡単に言うと、秋葉原はアンダーグラウンドだったのが、いまや観光客やメディアから注目を集める場所となってしまったということ。私が“Japanamerica”のためにオタクたちを取材していたころ、彼らが案内する場所は小さな路地の小さなお店でした。今は、あの大きなヨドバシカメラがあって、世界中の観光客のために、お店がひしめいています。

今年の5月には、女性の露出行為が原因で、路上パフォーマンスが警察によって中止されました。秋葉原のストリート・パフォーマンスは、以前は簡単でさりげないものでしたが、メディアが注目するにつれ、多くのアイドルなどが、秋葉原を自分を売り込む場所として使うようになってきたのです。そして6月には、例の秋葉原通り魔事件がありました。今年は、秋葉原にとって、興味深い一年だったと思います。

オタクと加藤の関係は、全くないと思います。加藤は宮崎勤とは違います。宮崎勤の場合は、警察が驚くほどのロリコン漫画が部屋にありました。加藤は、多くの人が言うほど、オタクではなかったはずです。

私が一番の原因だと思うのは、孤独だと思います。日本は集団行動で知られた国でしたが、最近はそれが変わってきています。多くの若者は、大部分は40歳以下ですが、一人で住んでいます。そして、孤独を感じている人は、インターネットが唯一自分を表現できる場所になってしまいました。そして、加藤がブログに書いていたように、インターネットに仮想の世界を求めるようになっています。でも、インターネットは現実世界の代わりには絶対にならないのです。

インターネットは多くの先進国で使われていますが、アメリカでは、2チャンネルのような掲示板は絶対できないでしょう。あの掲示板は、多くの日本人が自分を表現するための場所を探していて、インターネットに依存していることの現われであると思います。加藤のような、社会とのつながりが全くなくなってしまった人は、あまり珍しくはない。私は、あの事件が社会のせいだとは思いません。無論、あれは加藤自身に罪があるものです。ただ、日本人の中にある孤独と不満がこの悲劇を生み出したのではないか、と感じてしまいます。

―私も、孤独や不満について、同じことを感じました。一人暮らしをしている何人かの友達が、加藤のことがわかると言っていたんです。私は絶対に彼に共感するなんでできないので、彼のブログを読んで泣いたとも言っていたことに、とても驚きました。

―では、話題を変えて、日本の好きなところはどこですか?

東京はとっても便利な場所ですね。東京と大阪のサービスは、すばらしいです。昔、アメリカ人のジャーナリストが日本に来たとき、「東京は都会特有の悩みの種を取り除いてくれる」と言っていました。普通、都会では、人で込み合っていて、サービスも雑になりがちです。ですが、東京はとても違います。電車は頻繁に来ますしね。

私が以前大阪に住んでいたとき、東京行きの新幹線に乗らねばならないことがありました。日本語が出来ないので、友人に時刻表で時間を調べてもらって、それに間に合うように準備して、気合をいれて新大阪駅に向かったのですが、なぜか迷ってしまって、時刻に間に合わなくなってしまいました。これじゃ東京には時間通りに間に合わない、どうしよう、一回家に帰った方がいいのかな、などと落胆していたら、チケット売り場のおじさんは怪訝な顔で私を見て、10分後に次の列車があることを指差して教えてくれたんですね。私は、新幹線を飛行機のようなものだと、勘違いしていました。だから、数時間に一本しかないのかと。数分に一本走ってるんですね!(笑) とても驚きました。

それから、大阪の人は、ニューヨーカーのように、自分の町を愛していて、とても似ていると感じました。もし、東京で何か改善するところがあるとしたら、電車を24時間走らせたいです。なぜなら、みんながみんな終電に乗ろうとするから、終電が異常に混むんですよ。なんで楽しく過ごしたのに、また気分悪い思いをしなければいけないのか! ニューヨークは24時間地下鉄が走っているので、是非そうして欲しいなと思います。それ以外は、私は日本が大好きですよ(笑)

翻訳:内山紗也子(インタビューア) 

インタビューアから一言

私がケルツ先生の講義を受けたのは2年生の夏学期。点数が取れるかなという不純な理由で選んだのですが、受けてみると、英語をバシバシ書かせる、とてもためになるものでした。そして、毎回の宿題に丁寧に添削と感想を書いてくれていた先生が、こんなにお忙しい方だったとは! ソフィア・コッポラのあの映画の下書きを先生が書いていたなんて! そんな先生の小説がまた出るようです。そして、多くの場所で公演をするようなので、是非ぜひ見に行ってお話してみてください。とても聡明で素敵な方です。それから、“Japanamerica”も是非読んでみてください! 翻訳も出版されています。

Part 2 English Version>>
interviewer_s_38_profile.jpg 内山紗也子。1986年鹿児島県生まれ。その後、東京、沖縄に暮らし、小学5年から2年間マレーシアに滞在。東京に帰国後、中学2年の夏から米国シカゴへ。高校卒業まで5年間在住。帰国後、東京大学理科Ⅱ類に入学。現在、農学部獣医学科3年に在学。