活動報告 「世界の学校から」vol.5 古屋遙 ~後編~

ブリストル大学で演劇を専攻された古屋遙さんからの大学紹介です。学校の紹介にとどまらず、彼女のUKにおける日常生活や芸術活動が、幅広く紹介されております。大学内外において、役者・演出・舞台美術・ショート・フィルム監督・イラストレーション・歌といったさまざまな表現分野で、若きアーティストのマルチに活躍する姿をご覧ください。

report_s5Furuya1.jpg 古屋遙さん。1986年東京生まれ。幼少時代をドイツで過ごし、小中は日本に滞在、高1から再び家族と共にドイツに渡り、フランクフルト・インターナショナル・スクールに4年間通う。中学の頃より没頭していた演劇(パフォーミング・アート)をイギリス人講師の下で3年間学び、彼女の演出に感銘を受けたことから、19歳のときにイギリスに単身留学し、ブリストル大学ドラマ学部シアター、フィルム、テレビジョン学科で3年間演劇・映像を学ぶ。在学中は、大学内外で演劇(役者・演出・舞台美術)・映像(ショートフィルム監督)・イラストレーション・歌といった表現の分野で、マルチに活躍する。卒業後’08年に帰国し、来春よりCM制作会社(太陽企画株式会社)のCMプランナー(企画演出)として映像制作に携わる。

活動報告

大学外の活動(サークル・プロの演劇活動・自主映像制作)

しかし、そんな私を支えてくれた一つのサークルがありました。私はちょうど同時期に、パントマイム・サークルという「オーディションさえ受ければ、誰でも舞台にあがれる」演劇サークルに所属していたのですが、そこでの出会いが私の人生観を大きく変えたのです。

私はそれまで、ある意味「他人を蹴落とす演劇」をイメージして渡英したのですが、このサークルは違いました。共に演劇を楽しみ、共に舞台を作り上げる彼らの姿を見て、私は自分がそれまで何を見失っていたのか気づかされたのです。10年間演劇を続けていた私が失っていたものは、「楽しむ事」だったのです。それも独りではなく、みんなで。その感覚を取り戻した私は、再び演劇と向き合い、表現することの楽しさを取り戻しました。 interviewee_s_76_profile.jpg

同時に中国文化交流サークルの仲間と縁を深めていた私は、彼らの舞台制作の演出に携わったりもしました。日本文化交流サークルにも初めて参加し、ピアノの弾き語りをしたり、イベントの手助けをしたりと、とにかくこの時期は何事にもチャレンジしてみました。その背後には、常に私を支えてくれた沢山の仲間達の姿がありました。

日本人を演じる恐怖を払拭した私は、っていうかふっきれたんですが(笑)、同年「言葉の分からない日本人」を演じ、観客の笑いを誘い、大好評を得ることが出来ました。見たこともない観客の反応に、心が震えました。その後、プロのイギリス人詩人の方にスカウトされ、同年の9月に、彼と二人三脚で制作・演出・演技した舞台(HANA NO KAGE1)を発表し、08年には同舞台を映像化し、他の芸術祭にも出展しました。彼とはその後も共同活動を続けており、海を隔てた今でもプロジェクトに誘い合う仲です。 interviewee_s_76_profile.jpg

interviewee_s_76_profile.jpg また、舞台での出番がなかなか貰えずに、表現の場を模索していた私は、その頃、アート雑誌サークルの専属イラストレーターとして、装丁やイラストを手がけていました。その作品がある日、大学内のベストアート賞を受賞したのを機に、自主アニメーション制作にも手を伸ばし、私の人生のなかに「映像」という表現方法が初めて浮かび上がってきたのです。
3年目の冬、授業の一環としてショート・フィルム(Dream Project2)を一本監督し、同じ「移民」として、ポーランド人労働者の苦難を描きました。その後、春にロンドンの語学機関のプロモーション・ビデオ(What’s in the box?3)を制作し、08年度大学内ベストフィルム賞にノミネートされました。

「国境を越える表現」そして「ジャンルを越える表現」

3年目の春、卒業制作の一環として、舞台Sweet Home4を発表。去年、長崎にある永井隆館を訪れた私は、医学博士であり「ヒバクシャ」である彼の自叙伝「ロザリオの鎖」にとても感銘を受け、舞台化を決意しました。私が3年間学んだ「自己を演じること(自叙伝の表現)」「記憶の表現」「ドキュメンタリー・ドラマ(事実の表現)」の知識・経験を全て投入し、「長崎原爆ヒバクシャの記憶の表現」を題材に、当舞台を完成させました。 interviewee_s_76_profile.jpg

当時、「国の記憶の表現」について論文を書いていたので、私自身の何よりものテーマは、「国境を越えた記憶の表現」を行うことでした。例えば、日本ほど原爆被災者を毎年追悼している国は他にはないでしょう。それは、原爆がまだ「日本の記憶」に留まっている証拠なのです。その結果、「日本らしさ(建築形態や衣装)」を一切取り払った純粋な「記憶」だけの表現を行い、ただ世界で共通する「人間としての苦しみや喜び」を表現しました。たとえば、人間に共通する「愛する者との別れ・愛」を中心に表現するとか。

また3年間、映像と舞台の融合舞台のようなものが私の定番になっており、今回もそれを応用しました。内容・理屈を、卓越したビジュアルで感性に訴える舞台は、西洋人の涙を誘い、日本の記憶が国境を越えて人の心を揺さぶったことを証明しました。その結果、当舞台で最優秀成績を取得し、無事3年間のイギリス生活を終幕しました。
1 HANA NO KAGE- the shadow of flower- (2007)(松尾芭蕉の奥の細道のみをガイドブックに、5ヶ月間日本全国を旅したイギリス人の詩人ラルフ・ホイテ(55)が綴った旅記を舞台化した。映像と舞台を応用したマルチメディア舞台。ブリストルのPoetry Festivalの参加作品。
2 Dream Project-with foreigners help(2008) (英国のポーランド移民労働者の苦難を描いた風刺的ショートフィルム)監督作品。
3 What’s in the Box?(2008) (言語を学ぶ大切さをテーマに、ロンドンのNational Centre of Language開催のコンペティションに出展。あるコトバの分からない女の子が、雪だるま先生と伝言ゲームやぬいぐるみを使った特訓を行い、言葉の壁を溶かしていく。)監督作品。
4 Sweet Home(2008)(長崎原爆ヒバクシャである永井隆の自伝を舞台化。日常的なもの(錆びたバケツ・一輪車・布・スーツケース・旧型扇風機・ラジオを使い、映像と動き、音とコトバを織り交ぜ、記憶と感情を抽象的に表現。チベット人の相方と共同出演。)総監督・演出作品。

最後にメッセージ

interviewee_s_76_profile.jpg まあ、上記の様子だと、結構大変な毎日といった感じがするかもしれません(笑) でも正直言うと、ものすごく楽しくて、毎日充実していました! 私は3年間同じイギリス人の女の子とハウスシェアしていたのですが、彼女から学んだことも沢山ありました。彼女は学生海軍に所属していて、父親がトランセクシャルであったり、両親が離婚したりしているにもかかわらず、とても明るくて毎日バカな話で盛り上がっていました。

また、一時期アフリカ人のカップルやイスラム教の女の子と一緒に住んだこともあったし、安いフラットだったので、お風呂の電気が何度も消えてろうそくでお風呂に入っていたこともしょっちゅうありました。入居したときは、タンスの裏に黒かびがびっしり生えていたし、最初はバイトもなかなかできず、結構質素な生活でしたね。毎日ブロッコリーばっかり食べてたし(笑)

スーパーのアルバイトをしたり、キューバ人のウエイターにやたら気に入られて、カフェのバイトを紹介してもらい、ずっと港のカフェでアルバイトしたりしていたんです。とても毎日が楽しかったですよ! ブリストルにはデヴォン川が流れており、バイト先は川のすぐ側だったので、毎日きらきら輝く水面を見ながら、コーヒーやトーストされたパニーニの優しい匂いや人々の明るい笑い声に囲まれて過ごしていました。バイトの後は、川辺に座ってずっと絵を描いていたり、舞台演出のことを考えたりして、毎日本当にやりたい放題してました。 interviewee_s_76_profile.jpg

何だかんだで、結構大変なことは沢山ありますが、それは多分「道が二手に分かれたら険しい道を行け」のモットーで私が生きてきただけなので、心配要らないと思います(笑) 一つ言えるのは、日本は比較的リッチな国です。全人口の4割が移民とすら言われるイギリスなので、日本の視点から見た異文化や他国の価値観などに触れたときは、多少ビックリすると思いますが、そういう出会い一つ一つが確実に自分の視野を広げるし、確実に自分を成長させます。だんだん、自分の国籍が何かとか、本当に関係なくなってくるんですよ。同じ人間としての共通点が見えてきたときに、世界が本当にきらきらしてくる。その瞬間がたくさん見つかったから、私はイギリスに、ブリストル大学に留学して本当に良かったと思う。

知らないものを知ること、それって辛いこともあるけど、楽しいこともホント沢山あります。留学は知らないものを知ることです。毎日冒険です。「楽しんで」ください。きらきらしてください。応援しています!!

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詩人ラルフ・ホイテさんのHP:http://www.ralphhoyte.net/
University of Bristol Union サークルリスト:https://www.ubu.org.uk/societies
ブリストル大学 HP:https://www.bristol.ac.uk

作品「What’s in the box?」(2分):http://jp.youtube.com/watch?v=pr4bBYGiWFw