活動報告 vol.14 佐古田継太~第3編~

早稲田大学政治経済学部の佐古田継太さんからの活動報告です。彼は、政治サークルに所属し、中東における人間の安全保障について研究中だそうです。’07年暮れに、初の実地調査を行われたそうで、その調査報告の第3編として、「パレスチナ編」をお届けします。第1編「テルアビブ編」、第2編「エルサレム編」も、ご一緒にご覧ください。

佐古田継太さん。1986年、埼玉県春日部市生まれ。小学3年生の夏まで名古屋で過ごす。その後、香港に5年、台北に5年、計10年間を海外で過ごす。台北アメリカン・スクールを卒業後、帰国。現在、早稲田大学政治経済学部国際政治経済学科3年。バディ・ネットワークPUNKdに参加。また、政治サークルにも所属。中東における人間の安全保障について研究中。

活動報告

いざ、ラマラへ

ラマラは、エルサレムの北10kmにあり、パレスチナ政治の中心地である。パレスチナの行政機関、諸外国の使節団、NGOなどの建物が密集していて、パレスチナの事実上の首都と言われている。

エルサレムからバスに揺られること数十分、厳重な警備体制を敷いているイスラエル軍のチェック・ポイントにやってきた。チェック・ポイントでは、身分証明のためにイスラエル軍にパスポートを提示する。パレスチナのパスポート保持者は執拗な職務質問を受けることが時としてあるが、日本のパスポート保持者がこのような職務質問を受けることは稀だ。チェック・ポイントを通り過ぎると、そこはヨルダン川西岸地区と呼ばれるパレスチナの地だ。ここから別のバスに揺られること、さらに数十分、色鮮やかなラマラの街にやってきた。

ムスタファ・バルグーディ議員と会う

ラマラに来たのには理由がある。ムスタファ・バルグーディ議員に会うためだ。議員は、「ムバーダラ」という政党で事務局長を務めている。ムバーダラの英語名はPalestinian National Initiative。ハマスでもファタハでもない、「民主主義による第3の道」というスローガンを掲げて、政治活動を展開している。『オリエンタリズム』などの著書で有名なパレスチナ系アメリカ人学者、エドワード・サイードが支持した政党ということもあり、ムバーダラは小規模ながら、パレスチナ内外から高い評価を得ている。

バルグーディ議員と初めて会ったのは、東京で開かれた中東調査会主催の講演会だった。議員は初対面にも関わらず、奇妙な質問をする拙い学生の私に、暖かく接してくれたのだ。その上、「パレスチナに来るときは、私のところを尋ねなさい」というご招待を頂くことに。それを真に受けた私は、バルグーディ氏の秘書と連絡を取り、議員に会えるように面会時間をセッティングしてもらった。

議員への質問

以下は、バルグーディ議員と会った際、私が彼にした質問とその回答の要旨である。

①パレスチナ人と彼らの代表者は、これまでイスラエル・パレスチナの問題をどのように語ってきたか?

パレスチナ人とその代表者は、これまで失敗を犯してきた。彼らは真実を伝えることに失敗してきた。先進国のメディアがこの問題をどう取り上げているかを見れば、そのことが分かる。失敗の多くは、パレスチナ政治指導部によるものである。とりわけファタハが、汚職などの問題により指導力を発揮できずにいることは、この問題においてパレスチナ人を不利な立場に追いやっている。

イスラエル・パレスチナ問題という名称に違和感がある。イスラエルとパレスチナの関係は、決して対等ではない。ここにあるのは、支配者と被支配者という植民地主義の構図だ。パレスチナの主張は一貫している。それは反植民地主義に基づく平和である。

②アラファト後のパレスチナ政治についてどう考えるか?

アラファト議長は典型的なアラブの独裁者だ。それはアラブ政治の問題でもある。彼の興味関心は権力を維持することのみに向けられていた。それがパレスチナ人に少しでも向けられていたならば、状況はもっと改善していたはずだ。

現在、パレスチナ人の状況は徐々に改善している。だが、多くの新しい問題を抱えている。ここで言う新しい問題とは、1)イスラエル軍による分離壁やチェック・ポイント、2)ユダヤ人入植者、および、3)ハマスによるテロリズムの問題などである。

1)イスラエル軍による分離壁やチェック・ポイント、および、2)ユダヤ人入植者の問題は、イスラエルによるヨルダン川西岸地区接収プロジェクトとして見ることができる。イスラエルは国家の安全保障を大義名分に、分離壁とチェック・ポイントの拡大を暫時的に行い、ユダヤ人入植者を意図的に増やしている。入植者の増加と共に、水道代電気代が高騰し、パレスチナ人の多くは苦しんでいる。その数は、時とともに増えてはいるが、減ってはいない。イスラエルによるガザ地区撤退以降も、ヨルダン川西岸地区へのユダヤ人入植は続いており、入植者の総数は右肩上がりだ。このような接収プロジェクトには、断固として反対する。

3)ハマスによるテロリズムの問題は深刻だ。イスラエル・パレスチナ問題において、パレスチナ人を不利な立場に追いやる要因の1つになっている。暴力による改革のみでは、パレスチナ人を幸せにすることはできない。だが、一部のパレスチナ人には、ハマスを支持せざるを得ない理由がある。それはファタハの汚職に対する失望である。ムバーダラは、ハマスでもファタハでもない“民主主義による第3の道”を掲げており、これからも勢力拡大に努める。

③中東地域、並びに、世界に対するイスラエル・パレスチナ問題の影響には、どのようなものがあるか?

イスラエル・パレスチナ問題は、中東地域、並びに、世界の不安定要因である。イスラエルの軍事作戦に呼応して、過激なイスラーム主義運動が拡大することを誰が望んでいようか? 平和への一番の近道は、世俗的な民主主義をパレスチナに打ち立て、パレスチナ政治の強化を図ることだ。

④諸外国や国際連合に期待することは何か?

アメリカや国連も、この地域では無力同然だ。特に、国連はこの地域ではあまり重要ではない。それよりも、経済援助やビジネスを歓迎したい。そのためにも、パレスチナ人のパレスチナ人によるパレスチナ人のための国家建設こそが急務だ。

07年12月下旬
ラマラのムバーダラ事務所にて

結びに代えて

ここまで読んでくださった方々、本当にありがとうございます。

本FWを通して、自分の勉強不足をあらためて痛感させられました。イスラエル・パレスチナ問題は想像以上に複雑です。異文化の壁の高さを、改めて思い知らされました。次にこの地を訪ねるときに備え、パレスチナ人とイスラエル人の双方を満足させるアイデアを今からでも用意しなくてはならないと、思いを新たにしております。
活動報告 vol.14 佐古田継太~第1編~「テルアビブ編」
http://www.rtnproject.com/2008/05/_vol14_1.html
活動報告 vol.14 佐古田継太~第2編~「エルサレム編」
http://www.rtnproject.com/2008/09/_vol14.html