活動報告 vol.25 佐古田継太

ゼミ生全員で、英文スピーチ香港杯へ応募しようという話が盛り上がったとき、彼は特別な感情を抱いたそうです。それは、小・中学校5年間の香港滞在経験があったからです。もともとは、RTNプロジェクト能力開発&人材開発ゼミ(通称すどうゼミ)2008の課題でした。しかし、香港にのみ留まらず、遙か中国大陸にまで、彼は想いを馳せていたのです。「第2回香港杯 全日本大学生英語スピーチコンテスト2008」優勝者佐古田継太さんからの活動報告をどうぞ!

佐古田継太。1986年、埼玉県春日部市生まれ。小学3年生の夏まで名古屋で過ごす。その後、香港に5年、台北に5年、計10年間を海外で過ごす。台北アメリカン・スクールを卒業後、帰国。現在、早稲田大学政治経済学部国際政治経済学科4年。バディ・ネットワークPUNKdに参加。また、政治サークルにも所属。中東における人間の安全保障について研究中。大手資源開発企業に内定。

活動報告

序文

このたびは、多くの人々の協力を得ながら、中国の沿岸都市を旅する機会に恵まれました。東アジアの超大国・中国を知ることは、同じ地域に属する日本にとって極めて重要だと思います。香港、上海、南京、3つの沿岸都市を旅して、さまざまな中国人と交流し、多くを肌で感じ取ることができました。この成果を、政治経済学を専攻する学生の視点から述べてみたいと思います。

香港 中国と世界、世界と中国を結ぶ要

いざ香港へ!

香港へは、香港杯全日本大学生英語スピーチコンテストの特典として、読売新聞と香港政府の協力を得ながら、旅をすることができました。そのお陰で、香港政府訪問、ならびに、香港中文大学でのスタディ・ツアーなど、いくつもの面白いプログラムを体験することができました。

私自身、香港に滞在したことがあります。1995年から2000年にかけて、親の仕事の関係で、香港にて学生生活を送りました。このことからも、私は香港に対して特別な感情を抱いています。

香港と英語

今回、香港の街を歩いていて、「英語が通じないなぁ……」と思うことが良くありました。考えてみると、昔は親に連れられて高級店に足を運んでいたのが、今は自分ひとりで庶民的な店に足を運ぶようになったわけですから、こう感じるのは当然と言えば当然なのかもしれません。高級レストランのウェイター&ウェイトレスならまだしも、屋台のおっちゃん&おばちゃんに「英語を話せ!」と言うのは、いささか無理があると思います。

ですが、香港は元イギリス領であったことに加えて、国際自由貿易港ですので、それなりの社会的地位を得る上で、英語は必要不可欠と言えます。現に、私が滞在した香港中文大学では、その授業の多くは英語で行われていました。このことは、香港大学を始めとして、他の主要大学にも言えることです。

さらに香港では、大学などの高等教育のみではなく、小学校などの初等教育から、ネイティブ・スピーカーとボランティアによる、実践的な英語の授業を導入しています。私もボランティアとして香港の小学生と英語の授業に参加して来ました。熱心な先生と積極的な生徒、もちろん全員というわけではありませんが、その人たちから成る授業は、極めて有効性が高いものであると感じました。

香港と移民

香港には多くの移民が暮らしています。その多くはフィリピンや中国大陸から来ており、メイドなどの単純労働に従事しています。私が香港に住んでいた頃も、フィリピン人メイドのイメルダさんが、週に2、3回わが家に来ていたのを覚えています。


香港では、お金持ちの家庭に限らず、中産階級の家庭がメイドを雇うことはごく一般的です。このことは、家事労働をメイドにアウト・ソーシングすることで、雇用主の社会進出に一役買っています。育児、掃除、洗濯などを移民のメイドにアウト・ソーシングして、雇用主は仕事をしたり学校に通ったりすることができるわけです。

香港特別行政区統計処(統計局)の報告書『香港の女性と男性』(2007年版)によると、香港における女性の社会進出には目覚しいものがあります。

「1986年から2006年の20年間の間に男性の労働人口は14%増加。それに対し、女性の労働人口は65%もの大幅な増加。中学校以上に進学した比率は男性が61%(1986年)から79.3%(2006年)へと増加したが、女性はそれを上回る50%から71.9%への増加。現在、政府の高級官僚に占める女性の割合は10年前の1.5倍。」

このような目覚ましい社会進出を支えているのが移民のメイドです。彼女たちは、香港の人々の生活の質を豊かにする、極めて重要な存在です。翻って日本を見ると、共働き世帯が増加している傍ら、育児施設の不足問題が議論されています。育児施設の拡充を補完するものとして、移民メイドの受け入れを検討してみてはいかがでしょうか。

また、メイドなどの単純労働に加えて、香港は自らの経済発展のために、戦略的な移民受け入れを重要視しています。お金を持っている投資家や専門知識を持っている法律家や技術者を、積極的に受け入れることを目指しています。

具体的には、香港投資移民プログラム(Capital Investment Entrant Scheme)があげられます。香港で一定期間に渡って一定額以上の投資をした個人に対して、居住権が与えられます。移民受け入れには、一般的に単純労働受け入れ型と高度人材獲得型の2種類があると言われていますが、英語が頻繁に使用され、多くの外国人が住む香港の移民事情は、「英語圏ではない」「非日本人は住みにくい」などの理由で、高度人材獲得型の移民受け入れが困難である日本とは対照的です。

香港杯のプログラムの一環で、香港入境處(移民省)にて広報の仕事をされている梁紹基さんと、香港の移民政策について議論する機会に恵まれました。まず、移民省の建物に足を踏み入れて最初に目に入ったのが、就労のためビザの申請に来ているフィリピン人や大陸人でごった返している様子です。英語と中国語で書かれた資料が山済みになっている梁紹基さんのオフィスで、香港における移民政策の現状について、多くを学ぶことができました。

梁紹基さんが強調していたのは、香港政府は所得や技能に応じて、戦略的な移民受け入れを実施しているとのことでした。単純労働受け入れ型に伴う治安や雇用の問題について、彼女に聞いてみました。「そのような問題、そして、人権の問題は確かに存在するが、それ以上に彼らを受け入れるメリットが大きい」ということでした。果たして、日本においては香港と同じことが言えるのかどうか、慎重に結論を出す必要があると思います。

香港と東アジア経済統合

「東アジア経済統合に向けた香港ならではの役割」というのが、私の香港杯スピーチの内容です。中国系の人々のネットワーク、並びに、多国籍企業のネットワーク、それぞれのネットワークの中心に位置する国際自由貿易港の香港。その香港が、WTOにおいて独立した交渉主体であり、日本を始めとする東アジア各国とFTAやEPAを締結する可能性を有していることは、香港が東アジア経済統合にとって重要な役割を果たせることを意味しているではないでしょうか。今回のプログラムを通して、経済政策やそれに関連する外交政策を自ら策定する香港政府を見て、香港の重要性を改めて認識させられました。


中国と世界、世界と中国を結ぶ要

旅の最後の夜、宿泊先の寮の屋上で私は香港中文大学の中国人留学生と一緒に煙草をふかしていました。彼は陝西省の出身で、香港中文大学の技術系の学生です。彼は将来、香港からアメリカに渡って、修士号、そして、博士号を取得したいと語っていました。一方で私は、機会があれば、是非、香港から中国大陸を旅してみたいと彼に言いました。彼のように、香港を通して、中国から世界へ旅立つ人びと。私のように、香港を通して、世界中から中国へ旅立つ人びと。なるほど、香港は、中国と世界、そして、世界と中国を結ぶ要なんだなということを、私は直感で理解しました。英語が実質的な公用語であり、多くの移民が暮らす香港。中華文化を世界に発信する一方で、世界中の人、物、金、アイデアを中国大陸に送り込む香港。このグローバル・シティの魅力に一層魅せられて、私は香港を後にしました。

佐古田継太 香港杯2008スピーチ原稿 :
http://www.yomiuri.co.jp/adv/hongkongcup2009/winner01.htm
質問や疑問など「一言申したい!」という方は是非メールください。
ksakoda911@gmail.com