帰国子女大学入試・合格体験記vol.27

糸木悠さん。1987年東京生まれ。6歳から18歳まで、インド・トルコ・ルーマニア・ハンガリー・オランダ・ドイツに、それぞれ数年滞在。ドイツ・ベルリンのBerlin Brandenburg International School(BBIS)を卒業後、東京大学文科Ⅱ類に合格。現在、東京大学経済学部3年に在籍中。

【東京大学文科Ⅱ類合格】

はじめに

僕は他の東大合格者とは違った道で合格したのかもしれません。というのも、予備校に入りたての頃、僕の英語の成績は上から140番くらいでしたし、受験期には大好きな『24』や『Prison Break』を見ていました。友達と遊んだり、カラオケに行ってみたり。

ここからあることが言えます。まず、僕は特殊なので、多くの「成績優秀・勉強大好きさん」達の参考にはならないかもしれないということ。もう一つは、逆に、成績が悪いからとか、勉強だけに打ち込めないからといって、必ずしも東大に受からないわけではないということです。

行きたいならチャレンジしてください。そのために、これから、僕が東大に受かるまで、最初はどのような状態で、そこからどのように勉強して行ったかということを、IB、英語、小論文、面接の4つの科目別に、簡単に説明していきたいと思います。

とにかく過去問を! ~IB~ (IBに関係のない人は読み飛ばして下さい)

IBプログラムの2年間、僕の成績は悪い方ではありませんでした。ただ、僕は毎日猛勉強をしていたわけではないし、授業中にうたた寝もしていました。試験半年前のpredicted gradeは40点。しかし、実際はそれを数点上回る点数を取ることができました。それはなぜでしょうか?

その最大の理由は、僕が世界でだれよりも過去問を解いたというほど、多くの過去問を解いたからだと思います。IBの試験は5月と11月にあり、それぞれ時間差のため三つの地域に分かれて試験をします。従って、理論上は毎年2×3=6個の過去問を手に入れることができます。僕の場合は全科目においてこれを5~7年分くらいはやり、完璧にしておきました。過去問を解いていくと、頻繁に出てくる問題や傾向性がわかります。それは、多くの場合IBOが問いたいところ、むしろ、問わざるを得ないほど大事なところなので、しっかりと摑んでおくことが大切なのです。

以下に参考までに、教科別の勉強Tipをあげておきます。
・ MATH:データブックレットのどこに何が書いてあるか、どういう時にその方程式を使うのかしっかりと把握しておく。計算機を使いこなす(計算は計算機で。グラフとプログラムの活用)。
・ Physics:データブックレットを使いこなす(上記と同じ)。
・ Chemistry:データブックレット&Periodic tableを使いこなす(上記と同じ)。過去問において、頻繁に聞かれるものがたくさんあるので、それらは完璧に答えられるようにしておく。
・ Geography:すべてのオプションについて学ばない。選択と集中で、とにかく精通したCase study(阪神大震災とか)を4、5個は用意する。
・ Japanese:テーマ(不条理、儚さ、調和など)を3つ4つ選び、それを軸に考えればよい。

「型」を覚える! ~東大 英語~

前にも触れたように、僕の英語の成績は予備校のPlacement testで140番くらいでした。しかし、その後、徐々にに順位を上げて行き、最後は上から数番目まで上り詰めました。なぜでしょうか?

その理由は、僕が「型」を誰よりも律儀に覚えていたからだと思います。そもそも、僕たちは英語ができないのではなくて、日本の「英語の試験」ができないのです。日本の英語の試験はOpen questionsの多い外国の英語試験とは異なり、大意要約や和訳、段落整除など、形式的に解ける問題が多いです。よって、日本の「英語試験」においては「型」を覚えることが得点アップへの早道だと考えました。

具体的には、まず、『英文法標準問題精講』(原仙作著)や『英語長文問題精講』(中原道喜著)などの問題集をひたすら解き、共通して出てくるようなパターン(簡単なものだと、not only~but…とか)を覚えました。

次に、大意要約や段落整除を、過去問をもとにひたすら解きました。そうすると、Topic sentence、Conclusionがどこにあり、大体何字で、どうまとめるのかということを体が覚えていったのです。

このようにとにかく問題を解き続け、「型」を覚えたことが点数に繋がったのだと思います。

以下に、そのほかの細かいTipを載せて起きます。
・ 大意要約:とにかく、量をこなせば、テーマと結論(主張)が捉えられる。
・ 文章整除:時間がかかるので試験においては最後にやるのがオススメ。内容よりもTransitionsなどに注意して、形式的に読む。
・ 自由英作文:英語エッセイを応用。
・ リスニング:問題をとにかく早めに読む。ここで点数稼ぎましょう。
・ 文法、和訳:「型」を覚えれば大丈夫。
・ 長文読解:形式的に読む。

差別化を図る ~東大(文Ⅱ) 小論文&英語エッセイ~

僕の小論文の成績はそこまで悪くありませんでした。ただ、良くもありませんでした。判定は大体C。普通の点数でした。しかし、平均的では東京大学には入れません。従って、どうしたら他の人より一歩前に出られるかと考えたのです。そして、最終的には平均的にB-からB+までを取れるまでに成長しました。それはなぜなのでしょうか?

その最大の理由は、僕がハードカバーの本を多く読んでいたことにあると思います。人と差別化を図るためには、まず「普通の勉強法」というものがどういうものかを理解しなければいけません。そこで気付いたことの一つが「みんなは新書を読んでいる」ということでした。新書を否定するわけではないのですが、ハードカバーが新書よりもよい理由があります。

まず、多くの場合、新書は大衆向けなので、根源的な理論や仮定など一般的に難しいと思われる学問的なことが深くまで追求されていません。僕たちは大学に学問を学びに行くのですから、採点側からみても、学問的に深く考察されている論文は高く評価されます。よって、情報、知識の深さ・質の高さの観点から、ハードカバーは新書より有利です。

次に、多くの学生はハードカバーは高いので手が出せないという点です。そもそも、ハードカバーが高いのは、専門的であり、高くても売れるだけの情報が詰まっているからなのです。ハードカバーの本を買うことは、質のいい情報に自分だけがアクセスできるということで、みんなより一歩前に出る大きな武器になります。

以上の理由から、私は出し惜しみすることなく、ハードカバーの本を買って読みました。特に、『正義の経済哲学-ロールズとセン』(後藤玲子著)や『ヨーロッパのCSRと日本のCSR-何が違うのか』(藤井敏彦著)などは,面接においても非常に参考になりました。

また、副次的な理由として、他の学生がしていて、僕がしなかったことをあげてみます。

一つ目は、小論文の書き直しです。もちろん、返ってきた小論文のコメントは読みますが、僕は、書き直しをする時間を新しい小論文を書くことに使っていました。書き直しは大切だとは思いますが、書き直しは新しいものを書くときに比べれば頭を使いません。なぜなら、もう既にそのテーマについて考えて一つの作品を作り上げてしまったことに加え、コメントに「ここが悪い」とか「こう書いたほうがいい」などと指示が書いてあるからです。また、学生の一部は書き直しをすることが目的化してしまったり、書き直しをしているから勉強をしていると勘違いしてしまったりしていました。書き直しは修正や変更であって、創造ではありません。試験では創造が問われます。

二つ目は、新聞の整理です。これは記事を切り抜き、ノートに張るという作業に時間がかかるからです。実際、小論文で記事の文を暗記して使うわけにはいかないので、僕の場合は気になった記事は要約したりコメントをしたりして、短くノートにまとめておきました。

そして最後に、本を丁寧に扱うことです。僕の本は折ってあったり、曲がった線が書いてあったり、コメントが書いてあったりと実に汚いです。本に何も記しをつけずに、どのように気になったとき参照するのでしょうか。仮に線が引いてあったとしても、それを定規で引く意味は本当にあるのでしょうか。

僕がしなかった上記の3つには、共通点があります。それは、コスト・パフォーマンス(時間対効果・労力対成績)が悪いということと、それ自体が目的化してしまう(勉強をしている気になってしまう)ということです。これは受験勉強において考えるべきことなので、じっくり考えてみて下さい。

「なぜ?」を繰り返せ ~東大(文二) 面接~

僕はもともと口が達者であり、初対面の人とでも、あまり緊張することなく、スムーズにコミュニケーションが取れました。しかし、面接はおしゃべりではありません。それは試験です。よって、面接未経験の僕は、最初は志望動機で躓いてしまいました。しかし、あることを心がけるようになってから、僕の面接力は飛躍しました。それは一体なんなのでしょうか?

その秘訣とは、トヨタ式「なぜを5回繰り返す」ことです。例えば、将来の夢が医者であったら、「なぜ医者になりたいの?」と聞き、その答えが「人を救いたいから」であったら、さらに「なぜ人を救いたいの?」という風に「なぜ」をひたすら問いかけるのです。トヨタによれば、この作業を5回繰り返せば、ほとんどが本質に届くそうです。

僕の経験から言いますと、これをすると必ずといっていいほど、自分の経験に行き着くはずです。そして、自分の経験に行き着けばそこが終点であり、逆に面接では主張の出発点(根拠の基盤)となります。例えば「私はいちごが好きです」などといった主観的な主張・経験は理由もありませんし、誰も否定できないからです。

このなぜを繰り返す行為をすべての面接の主張に適用し、明確な答えが出せるようになれば、面接でどんなに突っ込まれても大丈夫になります。というのも、面接ではむしろ「なぜ?」と「どのように?」くらいしか聞いてくる質問はないのです。

もう一つ、面接のアドバイスをするとすれば、口頭試問への対策です。僕は実際に数学の問題を聞かれました。これは、統一試験の勉強でなんとかなるレベルなのですが、統一試験から時間が経っていると忘れてしまっていることもあると思うので、復習をしたほうがいいかもしれません。

おわりに

去年帰国生枠で受かった東大生は20人近くいます。そして、その前の年にも、またまたその前の前の年にも20人近くいます。つまり、アドバイスは無数にあることでしょう。そして、それらには多くの共通するところがあります。

では、その共通することに従うだけで合格できるでしょうか。それは、否です。なぜなら、受験勉強は自転車に乗るようなものだからです。僕たちのアドバイスは僕たちが自転車を「どのように乗ったか」という経験・理論であり、これだけでは自転車に乗れるようにはなれません。実際に乗れるようになるためには、本人がアドバイスをもとに、また、自分なりに最適な方法でチャレンジし、練習しなければならないからです。

今回の僕の体験記では、自転車「東大号」に乗りたい皆さんに僕が靴選び、姿勢、そしてこぎ方を提示させてもらいました。「はじめに」で書いたように、多くの受験生の方にはこれらはフィットしないかもしれません。ただ、もし少しでも良い靴、良いこぎ方だと感じたなら大いに活用してください。

最後の最後まで爽快に走ってください。応援しています。

Berlin Brandenburg International School(BBIS) :
http://www.bbis.de/