海外生活体験者・社会人インタビューvol.42〜後編〜

interviewee_s_108_profile.jpg 久松伸一さん。1951年生まれ。北海道滝川市出身。大学卒業後、建具メーカーに就職するも、2年で退社し、渡英。以後、アルバイトをしながら、およそ70カ国を放浪。1985年に帰国後、地元企業で「翻訳・通訳・コンベンション業務」に従事。長野オリンピック、パラリンピック、スペシャルオリンピックの通訳責任者をはじめ、札幌で開催されたノルディックスキー世界選手権のチーフ通訳コーディネーターなどを歴任。現在も地元企業に所属し、「地域のイベント・コンベンション支援」をテーマに活動中。

今回インタビューを受けていただいたのは、株式会社イベント・コンベンション・プロ(E.C.PRO)にて、MICEアドバイザーとして業務をされている久松伸一さんです。彼の豊富な海外経験と、北海道活性化への熱き思いを語っていただきました。

MICE : Meeting、Incentive、Convention/Congress、Event/Exhibitionからなる造語。イベント誘致による地域振興。

北海道国際村

―久松さんの今後の活動方針についてお聞かせいただけますか?

北海道に翻訳者・通訳者のための「国際村」を作ることです!

優秀な通訳者・翻訳家の大多数が東京にいます。でも、東京は暑いでしょう? 北海道は気候もいいし、土地だって余り過ぎるほどあります(笑) ですから、梅雨や夏などの過ごしづらい時期に、通訳者・翻訳家が集まって活動できる場所ができたらと思うんです。寒くなったら、東京に帰ればいいだけですしね(笑)

それに、北海道は比較的、開放的な土地柄だとも言えます。もともと様々な出自の人が集まって開墾された土地ですし、日本発の英語のネイティヴ・スピーカーの教師ラナルド・マクドナルドが利尻島に漂着した時でさえ、拘留さえしましたが、扱いは酷くなかったですしね。そう思いませんか?

―僕もその点は、北海道に初めて来たときに強く思いました。何より、帰国子女であることを隠さなくていいのですから(笑)

でしょう?(笑) こうした開放的な土地柄があるのだから、他の土地からも、人が足を運びやすいはずなんです。日本人だけでなく、外国人の方にとってもです。

それに、通訳業務や翻訳業務というのは、近年のIT技術発展のおかげで、遠隔地にいてもできるようになってきているんですよ。そうなれば、わざわざ気候が過ごしづらく土地の高い東京に住まなくても、過ごしやすくて食べ物もおいしい北海道で仕事ができるようになります。そうして、北海道に定住していく方が増えれば、そうした方に会いに来る人が増える。まさに、MICEですよ。

ただ、現時点では、北海道での「知のインフラ」は、東京ほど整備されていません。しかし、それさえ東京のように整備してしまえば、多くの人を呼び込めると私は考えているんです。そのためにも、通訳・翻訳家のための最先端の「知的インフラ」を整備した環境や、外国人の方のための徹底した日本語教育機関を、北海道に設立する必要があります。

「通訳・翻訳の仕事をしたいから、北海道に行こう」「日本で仕事をするから、まず北海道に行かなきゃ」こういう社会になることが、私の今後の活動方針でもありますし、夢でもあります。

足元がしっかりしていれば、どこまでも歩ける

―北海道を大変愛されていますね(笑)

まぁ、そうですね(笑) しかし私は、誰にでも「地元エゴ」というものがあると思います。そして、地元エゴを持って、地元にこだわっている人がいるからこそ、地元が良くなると思うんです。

北海道だとか、東京だとか、日本だとか。それらは人が勝手に決めた境界線です。この国が、いつ「アジア国日本州」になるかわからないでしょう? そのような境界線にこだわるのではなく、「今自分が住んでいるところ」を大切にしていくことが、大事なのだと考えます。今住んでいるところに、どう生活圏を持ってくるか。これが、地元を良くし、ひいては、自分の生活環境を向上させると思います。

海外に70ヵ国も行っておいて、こう言うのも何なんですが、グローバルに考える必要なんてあるのでしょうか? 何かをしていて、それを「広げよう」というのは、野望です。松下幸之助さんのように、「規模を拡大することで、お客様により安く製品を提供できる」というのであれば、それは善ですが。

本当に良いものというのは、自然に広がっていくものだと思います。ですから、手元のことからしっかりやって、よいものを創っていくことに専念していくことは、大切だと考えています。

やりたいように、やればいい

―では最後に、若い人や現在働かれている人へメッセージをいただけないでしょうか?

いやー、私もそんな偉そうなことを言える立場じゃありませんからねぇ。。。(笑) 強いて言うならば、「自分の立場を正確に知ること」「思うようにやればいいさ」ですかね。

自分の人生は、誰も責任はとってくれません。親切な人も多いので、助けてはくれますよ。友人、知人、家族に親戚。ですが、私も彼らを助けていることだってあります。そこは、ギヴアンドテイクです。ですから、他者からのご好意に感謝することは、絶対に必要です。恩は忘れてはなりません。

ですが、そうしたご好意を当然のように求めるのは、いかがなものかと思います。ましてや、相手に自分の人生の責任を取れというのを求めるのは、おかしいとさえ思います。自分の人生は自分のものなのですから。

社会には、三つの経済的な層があると私は思うんです。「絶対に揺るがない層」「中間層」「底辺」です。絶対に揺るがない層は、たとえ世の中好況だろうと不況だろうと、ヨットで遊んでいたりできます。苦労しなくても人生全うできる層ですね。しかし、こういった層の方々は、普段目にするようなことはありません。

また、私なんかみたいに底辺にいる人も、あまり関係ありません。もう落ちるところがないのですから(笑) しかし、そうやって自分の立ち位置がわかっている分、変に媚びたりしないのです。媚びたところで、アッパークラスにしてくれるわけではありませんからね(笑)

問題は、中間層にいる人々なんです。「勉強して、いいトコまで行って、割と裕福な生活を……」これが、なまじできてしまうから、勘違いしてしまうんですね。例えば、官僚やお医者さんがいますね。社会で言えば成功者の方です。しかし、あれだけ勉強して、あれほど技術を習得して、努力を重ねてきても、官庁内でのトラブルや医療事故などを起こせば、一発でアウトになってしまいます。ここが、絶対に揺るがない層と一番違うところであり、問題となっているところでもあります。

さらに厄介なのは、こうした中間層にいる人々が一度落ち込むと弱いという点です。自分の立ち位置を知っていれば、そんなことはないのですが。ここで、「自分の人生を滅茶苦茶にした責任を取れ!」と求めたところで、仕方のないことでしょう? 自分の人生の責任を取れるのは、自分だけなんですから。

ですから、まず、自分の立ち位置を正確に知ってほしいのです。その上で、自分のやりたいことを、やりたいようにやればいいと思うんです。それが今の自分の力で「できる」と判断したら、迷わずにやる。「できない」と判断したら、今できることを一心不乱にやることです。

人生にはいくつかの区間があると思います。若くてピュアな区間、労働者として脂ののってきた区間、退職後という区間など。そのたかだか20~30年の区間だけを取って比べて、人生が成功しただの失敗しただの比べたところで、仕方のないことだと思います。誰かが成功しているには、誰かが失敗していければならない。経済もそうでしょう?(笑)

―その通りです(笑)

周囲に焦らされることはありません。新卒で就職後2年で退社し、7年近く海外旅行をした私だって、周囲とは違った道を歩んだことに、不安を覚えたこともありました。海外旅行を終えるまで結婚もしていなかったので、親戚からいろいろ言われたのもあります。しかし、今となって振り返ってみると、どの区間でも私は後悔を残していません。また、思う存分海外旅行をしたからこそ、その後ずっと仕事に打ち込むことができました。

自分の立ち位置を知れば、それほど気負わずに、人生を楽しむことができます。そのときは、迷わず好きなことをやればいい。これを、メッセージとしてお伝えしたいと思います。

―素晴らしいお話、今日は本当にありがとうございました!!

インタビューアから一言

昨年度、札幌市で行われた大学サミットで、私は運営スタッフの手伝いをしていました。そのときのコンベンション業務を担っておられたのが、株式会社イベント・コンベンション・プロ(E.C.PRO)の方々でした。「ことば」が大好きな私は、日本における語学学習の機会を増やすような仕事を、将来したいと考えていますが、就職活動の方向性が周囲の学生とずれていることに、不安を抱き始めていました。その様な時期に、今回久松さんから話をお伺いできたことは、非常に貴重な体験となりました。久松さん、本当にありがとうございます!

前編はこちらから>>
interviewee_s_41_profile.jpg 木村荘一郎。1987年生まれ。神奈川県相模原市、栃木県足利市、米国オハイオ州ダブリン市、東京都三鷹市と転々とし、現在は札幌市在住。Dublin Jerome High Schoolを卒業後、北海道大学に進学し、経済学部3年に在籍。秋からのロシア留学に向けて、経済学とロシア語の勉強に没頭中。