海外生活体験者・社会人インタビューvol.44〜後編〜

interviewee_s_112_profile.jpg エレーヌ・サルヴィニ・藤田(Helene Salvini Fujita)さん。フランス人の血と日本人の血を併せ持つ28歳の国際人。フランス語、日本語、英語に中国語とドイツ語と5つの言語を操る。生後5歳までをフランス、5歳から12歳の間を日本、12歳から大学卒業までをパリで過ごす。パリ第二大学 Pantheon-Assasの法学部を卒業後、一人東京に移り住み、5年間大手ラグジュアリーブランド、クリスチャン・ディオール(株)にて勤務。ファイン・ジュエリー&ウォッチ部のマーケティング・マネージャーを経て、女優に転身。

成功したプライドに、ゼロ地点の再スタートを試したかった

―最近は、どんなことをしているのですか?

アメリカの大手テレビプロダクションのABCが、この間日本でReality TV Showを撮っていたんだけど、そこで私1ヵ月働いたの。DIORを退職して2週間後、本来目指している役者としてではなく、制作アシスタントとしてセットの裏を駆け回ったわ! 未知の業界に飛び込むfirst stepとして、良い経験になると思って。

1本の作品を完成するためにはたくさんの人が一所懸命関わっている。だから、役者の立場からしても周りの人間の活躍をこれからちゃんと把握していたい。制作部のアシスタントとして働くのは、誰よりも下っ端で影の存在。私は、これからの新たな挑戦に向けて、それまで努力して手に入れた管理職の地位から一番下に戻ることの辛さを、自分に体感させたかった。

一度キャリアで成功したプライドに、ゼロ地点の再スタートを試したかったの。オフィスワークにすっかり慣れていた私には、突然の現場仕事はなかなか大変だったわ(汗) 根性は充分試されたと思います(笑) それ以外にも、アメリカの大手プロダクションが実際どういう仕事を行っているかを、自分の目で見て体験することができたことは、とても貴重な経験だったわね。 ABCの企画で一度制作から役者サイドに移ったとき:ボートのスチュワーデスを演じた

 ABCの企画で一度制作から役者サイドに移ったとき:ボートのスチュワーデスを演じた

―目指すお芝居の方は?

『Richard3世』の舞台を無事終えて、その後2ヵ月の間に、長編・短編共に3本映画のオーディションに受かって、東京で撮影を行ったわ。まだエージェントもいないにも関わらず、これだけの機会がすでに訪れているのは、本当にラッキー。ただ、現実として、これらの作品では出演料はほとんどもらえていない。Low costな独自企画は、チャンスを与えてくれても、女優を本業とさせてくれないから、今後は実際「プロ」として扱ってもらえる事務所を見つけて、自分が提供するパフォーマンスに価値をつけてもらいたい。そのためにも、フリータイムはすべてスキルアップに使ってるわ。ワークアウト、ダンス、歌、演劇、語学のレッスン数々。以前は時間がなくてできなかったこれらのactivityは、今フルパワーで行えるから、とても充実した気分。少し若返った気もしなくはない。。。?(ウィンク)

今は毎日淡々と通えるオフィスや会えるチームメートがいるわけでもない。日々変わるスケジュールは、すべてセルフ・コントロール。行動派の私にとってはexcitingな分、手帳に空白ができてしまうと、ちょっと落ち込んでしまう日も。。。まっ、基本、楽観主義でもあるから、気がつかないうちに、楽しく忙しく生きていることが多いわね(笑)

アメリカ人の監督による短編コメディーの撮影
アメリカ人の監督による短編コメディーの撮影
         
先月撮影した日本語の短編映画で主演をゲット!
先月撮影した日本語の短編映画で主演をゲット!

日本のActingの世界は、「日本の社会」を映し出してる

―日本でActressをやっていく上で、何か心配なことはありますか?

やっぱり、島国でしょ? 見渡せばほとんど全員日本人で、外国人はそうね、ほとんどいない。。。そんな日本でも、モデル業ならば、外国人や私みたいなハーフは大歓迎(笑) でも、私がやりたいことはacting。脚本があって、キャラクターがいる、芝居の世界で。でも、芝居って大抵の場合、現実を映し出しているじゃない? 日本の場合、それはJapanese societyなの。

―なるほど。つまり、ほとんど全員が日本人。

そう、ほとんど全員が日本人。そこには私みたいなハーフの人間はいない。だから、私みたいな人間が求められる脚本がないんじゃないかって思うときはあるのよね。別に誰に言われたわけじゃないけど、そこには大きなバリアがある気がする。

―そのバリアというのは、具体的に言うと……?

たとえば、(自分の顔を指差して)「これ」じゃあ、誰かの母親だとか、誰かの妹だとか、演じることが出来ないと思う。私がそういう役を演じてるの、ちょっと想像できないでしょ? まぁ、誰かの恋人とかだったら、また違うかも知れないけど……。つまりね、そうならないためには、「自分がどう見えるか」じゃなくて、「自分がどれだけ有名か、どれだけ実績があるか」で選んでもらえるところまで行かないといけない気がするの。

―うーん、なるほど……。

しかも、さらに言うと、ハーフだとますます複雑なの。たとえば、日本人の役は演じられないから、外国人のために用意された役に申し込むとするでしょ。でもそうすると、いかにも西洋人的な人が選ばれることが多いの。ここ数ヵ月オーディションで何度か経験したわ。。。

―ハーフの役者の方にそんな苦労があるなんて、今日初めて知りました。

でしょ?(笑) でもね、私、やるならnow or neverよ。28歳の今は日本にいるから、ここでできることはすべて挑戦して行くつもり。 「半分の故郷」かもしれないけど、ここでしか実現できない、「日本人として」のお芝居をしてみたいの。もしその機会が最悪訪れなくても、「自分にチャンスを与えてあげたんだ」「初めから諦めなかったんだ」って、「自分の中の日本人」に言ってあげたい。以外とこう話していると、私の日本人も捨てたもんじゃないと思わない?(笑)

ポジティブな人を引き寄せる才能には恵まれている

―エレーヌさんの決断に、周りの方はどんな反応をされていますか?

私の周りの人たちは、みんなポジティブにサポートしてくれてるの。本当に感謝しないといけないことなんだけど、私、ポジティブな人を引き寄せる才能には恵まれているみたい(笑) ネガティブな人は寄せ付けないし、寄ってこない。私の周りにいる友人や知り合いは、全く違うプロフィールばかりなのに、私のこの方向転換をみんな応援してくれている。毎日のように励ましの言葉に包まれている幸せモノよ(笑)

―素敵! 私もポジティブな人大好きです。一緒にいるだけで幸せ。

でしょ?(笑) 「女優」って、沢山の人が憧れる職業だから、「えぇっ? じょ、女優?」って驚いて、まじめに接してくれない人もいるのは当たり前。ちょっと馬鹿にする人もね。だからこそ、いつもよりも、今は自分の周りにポジティブな人しかいない。心穏やかな人間と一緒にいると、自然にエネルギーと自信が沸いて来る。努力と運に続いて、成功に欠かせない大切なものだと思うわ。もちろん、「現実的でいる」ことは、それすべてのベース。上向いてばかり歩いていたら、陥し穴にうっかり落ちちゃうから、緊張感を忘れずに、慎重に道を進むのも私の掟ね。

―今後のゴールを教えてください。

やっぱり女優として、日本だけでなく、世界でも活躍すること。その目標に向けて、語学力と人間力を活用して、今以上に異文化交流を増やして行きたいと思います。どうぞ応援してください!

―こちらこそ、ぜひ応援させてください!

前編はこちらから>>

インタビューアから一言

このインタビューは、昼下がりの麻布十番で、英語・日本語・フランス語を交えてという、実に国際的?な雰囲気の中で行われました。エレーヌさんは、ただ綺麗で頭が良いだけの女優さんではありません。強い芯を持っている女性です。現実的だけど、すんっごくポジティブで、思わず応援したくなる。彼女の話を聞いてからというもの、今後の女優としての成長に、私はワクワクするような期待を感じています。エレーヌさん、このたびは興味深いお話を聞かせてくださり、ありがとうございましたっ! これからも応援しています!
    
    
藤原彩加。1988年生まれ。5歳から9歳までフランス・パリで過ごし、帰国後、東京の小学校に通う。小学校6年からインドネシア・ジャカルタ。中学1年の時に日本に一時帰国、中学2年でインドネシアに戻るが、その直後にカナダに渡り、オタワにある私立高校へ編入。卒業後、慶應義塾大学法学部政治学科に進学し、現在3年に在籍。RTNプロジェクト広報代表&慶應義塾大学支部代表として活躍。