活動報告 vol.26 長山大介

今回は、東京大学大学院新領域創成科学研究科国際協力学専攻博士後期課程に在籍されている、長山大介さんからの活動報告です。18年間を米国で過ごされた長山さんは、07年7月に、東京大学学生国際交流機構(UT-IRIS)を、ご友人とともに立ち上げられました。その経緯や活動内容、そして目指すところについて、ご報告をお願い致します。

interviewee_s_122_profile.jpg 長山大介さん。1983年12月、兵庫県神戸市生まれ。生後4ヵ月のときに渡米、カリフォルニア州サンディエゴで、高校卒業までの18年弱を過ごす。02年、大学受験のために帰国し、03年4月東京大学教養学部理科Ⅱ類に入学。05年に東京大学工学部社会基盤学科に進学し、07年3月に卒業。同年4月に東京大学大学院工学系研究科社会基盤学専攻修士課程へ進学、09年3月同専攻を修了、同年4月から東京大学大学院新領域創成科学研究科国際協力学専攻博士後期課程に在籍、現在に至る。学部時代は、運動会(体育会)空手部に所属、幹部学年時は副将を務める。07年7月に友人と東京大学学生国際交流機構(UT-IRIS:http://www.ut-iris.org)を立ち上げ、国際交流の活性化のために活動中。

活動報告

私は、25年の人生(2009年7月現在)のうち、3分の2以上(18年間)をアメリカで過ごした帰国子女です。このことを初対面の方にお話しすると、かなりの確率で「日本語、お上手ですね。」というお褒めの言葉や「日本語はどうやって勉強されたのですか?」というご質問が返ってきます。人生のほとんどをアメリカで過ごした、「ほぼアメリカ人のような経歴」を持つ私に対する、至って自然な反応であると思います。

しかし、学士課程では運動部(体育会)に所属し、英語を使うこともほとんどない環境に身を置いてきました。帰国子女であるからこそ、自分がまだ知らぬ日本を知るべきであり、世界で活躍したいと切に願うからこそ、日本人としての自身のルーツを知り、アイデンティティを確立することが肝要です。生まれ育ったアメリカを離れて日本で学び、日本にしっかりとした礎を築きたいと思った背景にはそのような思いがありました。ただし、実際の大学生活は、必ずしもそのような高尚なものだけではなく、単位を取るために奔走したり、お酒に呑まれて後悔したりしながら、典型的な大学生の生活も送ってきました。

そんな私に転機が訪れたのは、2006年の初夏です。既に、空手部の幹部学年を終えて、部を引退していた私が偶然目にしたのが、台湾、中国、韓国など、東アジアの国々の研究型大学から60名ほどの学生が集まる、「Association of East Asian Research Universities」の学生フォーラムの参加者募集でした。

持ち回りで開催されるこのフォーラム、2006年度の開催国は台湾でした。私は北米と日本にしか足を踏み入れたことがなかったのですが、東京大学が渡航費も滞在費も支給してくれるこの機会は、正直に言えば「旅行的」な意味でも非常に魅力的に感じましたし、また、台湾という国が大変親日的であるということも聞いていたため、この目で見て、台湾の人々と交流してみたいという気持ちもありました。

こうして、他3名の東大生と一緒に、計4人で参加したAEARUこそが、私の東京大学における国際交流活動の原点です。

日本人は、国際的な場では控え目で、充分に活躍しないことが多いと言われます。しかし、このAEARUの約1週間のプログラムでは、一緒に参加した東京大学の学生がとても積極的であり、参加した男女それぞれに4つ(合計8つ)準備された賞 (Mr./Miss AEARU, Most Diligent, Most Funny, Dream Lover)のうち4つを、約60名ほどの参加者の中から、4名の東大生参加者が受賞しました。

お遊び企画ではあったため、「成果」や「活躍」と胸を張ることは難しいかもしれません。ただ、「日本人」「東京大学」「日本」を、良い意味で印象付けることを「活躍」と呼ぶ僭越が許されるなら、この1週間の中での東大生の「活躍」によって、アジアのトップ大学を代表して集まった60名ほどの学生の中で、日本と東大のプレゼンスが高まったはずだと感じています。

また、主催大学・国立台湾大学の国際交流団体「NTU-ISO」は、「台湾を知ってもらい、台湾を好きになって帰ってもらう」という素朴な目標を掲げていたのですが、見事にその目標を達成し、私たちだけでなく、参加者全員が、台湾という国に強く魅せられて帰国の途につきました。

そして、この帰国便の中で、二つの共通の想いが、私たちの胸に宿っていました。

「日本人がもっともっと海外で活躍して、世界の至るところで、日本人が日本のプレゼンスを高められたら」

「海外の学生に日本に来てもらい、日本を好きになって帰って行ってもらえたら」

これらの想いを実現するために、東京大学本部の支援を受けて設立されたのが、東京大学の国際交流活動の促進を使命とする、東京大学学生国際交流機構 (UT-IRIS)です。

一人でも多くの東大生が、東京大学を代表して、海外の学生と接し、他国の学生との相対の中で自分を、他国の大学との相対で東大を捉えること。一人でも多くの日本人が、他国との関係の中で日本を捉え、日本に対する誇りや、時には悔しさを感じること。

楽観的に過ぎるかもしれませんが、このような経験ができる社会的風土が日本にあれば、日本が秘めた大きな潜在能力が解き放たれ、近年の日本を覆ってきた閉塞感から脱却する糸口が、必ずや見つかると信じています。

そういう環境を見つけ、作り、広く知らしめていく存在。

自分達が常に最前線に立つのではなく、一人でも多くの東大生が、私たちが幸運にも経験することができた、「相対の中での自分、東大、そして、日本」を感じられるよう、支援を行うこと。

華やかではないかもしれませんし、いつもエキサイティングなことばかりとは限らないかもしれません。しかし、そうした縁の下の力持ちであることにも誇りを持てることが、日本文化が持つ独自の強みでありますし、それが日本の未来に資する活動であると強く信じて、UT-IRISは今日も活動を続けております。