海外生活体験者・学生インタビューvol.61

interviewee_s_125_profile.jpg 鈴木希実さん。1987年東京生まれ。アメリカ・NYに2年、イギリス・ロンドンに11年滞在。ロンドンの高校、The American School in London (ASL)を卒業後、東京大学文科Ⅰ類に合格。現在、東京大学法学部第2類(公法コース)4年に在籍中。大学時代は、英語ディベート部で活動したり、英語スピーチ大会に出場したりしていた。現在は、YGL JapanというNPOで事務局を、ALPHA LEADERSという企業でインターンを、そして、京論壇(北京大生と東大生が一緒に議論する学生会議)でスタッフをしている。2010年4月から商社に就職予定。

もともと完璧主義者だった

―海外体験について教えてください。一番大変だったことは何ですか?

海外にいたから困ったこととか苦労したことは、特にはありませんでした。あえて、言うとすれば、周りの人よりも英語が出来ないという劣等感を感じたことくらいです。これは、そこまで大きな問題ではなかったのですが、自分の中では悔しくて、皆と同じになりたかったので、そのための勉強をしました。

―どのように勉強したのですか?

当時は、アメリカンスクールに通っており、宿題の量がすごく多かったので、まずはそれをしっかりとこなしました。他の勉強を行うよりも、まずは与えられた課題を完璧にすることを目指そうという意識が生まれました。元々完璧主義者でしたしね(笑) 度々、徹夜して本を読んだり、居残りで勉強したりしましたが、課題を自分を成長させるチャンスだと思っていたので、勉強は苦ではありませんでした。むしろ楽しかったくらいです。

次に、大学レベルのクラスを受講することができるAdvanced Placement制度を利用して、様々な高いレベルの授業を受けることもしました。そして、これらのクラスでもオールAを目指しました。この目標を達成するために、私は自分のできる範囲でとことん頑張り、妥協せず、最後まで詰めるという作業を徹底しました。

ボランティアとスポーツから学んだこと

―勉強以外に頑張ったことを教えてください。

課外活動では「ボランティア」と「スポーツ」の2つに力を入れていました。

まず、ボランティアですが、私は障害児向けの特別学校で障害児の世話をしたり、彼らと遊んだりすることをしました。施設では、最初はボールを受け渡すという、本当に単純なこともままならない子どもたちが、私と何度も何度も練習していくことで、成長していく様子が窺えました。人は何かを地道に頑張っていけば、それを達成することができるということを学びました。

また、他のボランティアの一環として、近くの年金生活者を呼んでお茶会を開いたり劇に招待したりするYoung and Heartという活動にも参加しました。そこで印象的だったのは、ビンゴ大会の景品が缶詰ひとつでも、クリスマスパーティーのクラッカーの中におもちゃが入っているということだけでも、喜びを感じていたおばあさんたちでした。Young and Heartを通しては、些細なことでも喜びを感じられることの大切さ、また、些細なことでも人に喜びを与えられる可能性を学ぶことができました。

スポーツはテニスとクロスカントリーの2つを行っていました。

まず、テニスですが、私は家族のみんなが楽しんでいるので、始めてみました。12年生のときは、チームのキャプテンを務め、ギリシャでの大会で団体優勝へも貢献しました。

一方のクロスカントリーですが、実は私は決して走ることは得意ではなかったのです。しかし、クロスカントリーは私の性格に合っていたと思います。というのも、クロスカントリーでは自分を追い詰めることが必要となります。自分をプッシュすることは辛いですが、その果てにある何かを達成した一段階成長した自分になれるので、プッシュすることは嫌いではありません(笑) また、私はどちらかというと瞬発力よりは持続力があると思います。だから、短距離のスプリントよりは、持続力の求められるある程度距離のあるクロスカントリーの方が向いていると考えたのです。

アイデンティティ・クライシスという問題

―なぜ日本に帰って来ようと決めたのですか?

理由は2つあります。第一に、海外の大学に行ったら日本人ではなくなってしまうという危機感があったからです。私は常に自分が日本人であるという意識を持っていました。また、海外にいると必然的に容姿などから日本人だと認識されてしまいます。それにも関わらず、実際は日本のことをよく知らなかったので、非常に中途半端な存在でした。あのまま海外に残り、日本の文化や言葉を失ってしまう前に、帰国することで日本人としてのアイデンティティーを確立したかったのです。

第二の理由に、日本人として世界で活躍したいという思いがあったことがあげられます。そのためにはまず、これは第一の理由にもつながりますが、きちんとした日本人になることが必要です。そして、その後、日本で活躍する必要があります。日本で活躍できなければ、世界で活躍できるわけがありませんから(笑)

ひとりでは何もできない

―大学生活について教えてください。

大学の1、2年生の間は、英語ディベート部に集中していました。私の代は同期がおらず、私一人だけだったので、寂しい思いをしました。新歓でブースを構えたとき、50人態勢のESSのブースの隣で一人熱心に勧誘をしたのはいい思い出です。そんな頑張りもあってか、仲間も増え、北東アジア大会ではチームで準優勝、個人で2位という功績を掲げることができました。

3年生からは、ALPHA LEADERSという企業でインターンをしており、今は「留学生の就職活動ゼミ」を企画しています。また、Young Global Leaders Japan(YGL Japan)というNPOの事務局で、「NPOの組織強化プロジェクト」というものに携わっており、NPOの運営を支援するために、様々な分野で活躍している社会人の方々をお招きして、講演をしてもらっています。

これらの活動を通して私が学んだことは、人の繋がりがとても大切だということです。例えば、YGL Japanにおいては、理事の方が様々な活躍をしている社会人の方々との繋がりをもっているから、外資系コンサルティングファームの方など、私たち学生が呼んで来られないような方々を呼んで来られるのです。一人では何もできません。人との繋りが、色々な価値を生み出すのです。

自分自身に対する大きな挑戦

―将来について教えてください。

将来、私はより多くの人が笑顔である世界を作りたいと考えています。この先、具体的に、どのような切り口(政治、経済、環境、貧困など)でそれを実現するかは決まっていませんが、就職活動を通して、とりあえず貧困の問題、より具体的には、発展途上国のインフラの整備から始めようと決めました。それは、貧困の撲滅が緊急課題だからだと考えたからです。なぜ民間企業によるインフラ整備に目を付けたかというと、ODAなど単発的で、国益に左右されがちな支援ではなく、民間セクターが生み出すwin-winの関係により、世界の持続的な発展に貢献したいと考えたからです。

発展途上国のBOP (Bottom of the Pyramid)には、まだまだ発展・開拓の余地が残されていると思います。そんな可能性が無限大にあるBOPでビジネスを確立し、より多くの人が笑顔である世界を築きたいと思っています。これは世界だけでなく、私自身に対する大きな挑戦でもあるので、非常にやりがいがありそうです。

―最後に、帰国生にメッセージをお願いします。

帰国生を一括りにはできませんが、多くの帰国生は「吸収する力」が強いと思います。それはきっと若いうちに異なったものに直面して、反発したり、受け入れたりを繰り返すことで、そのような姿勢が自然に備わったのだと思います。もちろん普通の日本人だって、後々その力を強めていくことはできます。ただ、言語の習得が若いうちほど容易なように、人生の早い段階において様々な人・文化・社会に触れて、経験を積めるということは、帰国生の特権です。その特権を活かして、大いに習得して、大いに伸びて下さい。

The American School in London (ASL) :
http://www.asl.org/

インタビューアーから一言

鈴木さんは、私が今まで出会った人の中でも、最も「意志が強い」方の一人だと感じました。普通、目標を持ち、計画を立て、目的達成を目指していく道のりには、想像もしていないような誘惑や障壁があり、目的を計画通りに達成するのは簡単なことではないです。だから、大半の人たちは、まるで起きるときに目覚ましを使うように、外部の力を借りて、自分の意志の弱さを補います。

しかし、鈴木さんはその必要がないのです。彼女はどんなことが起きようと、計画に従って確実に目標を達成することができます。私は、この意志の強さが素晴らしい能力であり、それを羨ましく思うのと同時に、一寸のブレもない確固たる軸からは、その強固さゆえに湧き上がる力を感じました。この先も、揺るぎないビジョンとステップ、そして絶えることのない輝きと力で、「より多くの人が笑顔である世界」を築いていくのでしょう。
interviewee_s_104_profile.jpg 糸木悠。1987年東京生まれ。6歳から18歳まで、インド・トルコ・ルーマニア・ハンガリー・オランダ・ドイツに、それぞれ数年滞在。ドイツ・ベルリンのBerlin Brandenburg International School(BBIS)を卒業後、東京大学文科Ⅱ類に合格。現在、東京大学経済学部3年に在籍中。大学では、サッカーと株式投資をサークルで行い、金融系のゼミに所属。