活動報告 「世界の学校から」vol.14 長澤慶美

今回は、慶應義塾大学法学部政治学科3年の長澤慶美さんから、カナダのオンタリオ州トロントにあるVictoria Park Collegiate Institute(旧Victoria Park High School)を紹介していただきます。オンタリオ湖岸の北西に位置する州都トロントは、カナダ最大の都市であり、グレータートロント(GTA)の人口は550万を超え、北米第5位の世界都市でもあります。

長澤慶美。1987年千葉県生まれ。13歳のときに単身留学し、カナダのトロントへ。約6年間滞在し、Victoria Park Collegiate Instituteを卒業。帰国し、慶應義塾大学法学部政治学科に入学。現在3年に在籍。経済学部のPCP(プロフェッショナル・キャリア・プログラム) に所属。

活動報告

卒業校の紹介

私が通った高校、Victoria Park Collegiate Institute は、カナダ・オンタリオ州にあるトロント市の住宅街の中にあります。1960年に開校し、今現在では1400人の生徒が通っています。通称“VP”と皆に呼ばれています。

アカデミック

VPでは一般のカルキュラムの他にIB(International Baccalaureate)を導入しており、05年に教育委員会から大学進学に特化しているカルキュラムであると認められました。それ以前は、Victoria Park High Schoolという名称でしたが、これを機に現在の名称、Victoria Park Collegiate Instituteに変更されました。

IB(International Baccalaureate)というのは一般教養科目を提供することが特徴で、世界中で認められる学際的な教育です。IBは世界で最も知られている大学、オックスフォードやハ―バードでも認められており、入試にはとても有利になることで知られているプログラムです。VPではこのIBプログラムに大変力を入れています。

質の高い一般教養科目を提供している一方、音楽や美術といった分野においても、非常に充実したものが得られるのがVPのユニークなところです。ここにはオーケストラがあり、学校での様々なイベントや行事で演奏するといった活動もIBを専攻した生徒によって構成されています。もちろん、一般の生徒とIBの生徒の交流もあり、お互いに良い刺激を与えながら勉強できる環境があることも、この高校の良いところでしょう。

ユニークなイベントや活動

上記に書いたように進学校的な要素があるにも関わらず、生徒が中心となって面白いイベントや活動が企画されています。スポーツ大会への出場はもちろんですが、任意参加で、コスタリカでの社会活動やお隣の国アメリカのニューヨークへの旅行企画などもやっていました。

また、イベントでパジャマ・デイという日が設けられ、生徒も教師もパジャマで授業をするのです(笑) 皆本当になりきって、スリッパで来る生徒もいました。普段は見られない教師の姿もあり、こういったエンターテイメントは、高校生活での素敵な思い出の一つです。

一番衝撃を受けたのは、教師の顔面にケーキを投げるというイベントでした。生徒に指名された教師がステージへ上がり、そして……。観客も当事者も皆楽しんでイベントに参加する様は壮絶でした。その他にも本当にユニークなイベントが開催され、こういった行事が出来るのも、教師と生徒の間に信頼関係があるVPならではないかと思います。

多文化的な生徒と教師

カナダにいながらも、VPで異文化と接することが可能です。トロントという市が多文化的であることも含め、生徒たちは実に様々な背景を持っています。アフリカや中東、ヨーロッパはもちろん、アジア出身の生徒も沢山います。校則もそういった生徒たちを配慮した内容になっています。

例えば、原則として帽子の着用は禁止ですが、ヒジャブのような宗教的なものは許されています。また韓国や中国では旧正月を祝いますが、そういった学生の欠席も容認しています。旧正月に限らず、様々な国の、あるいは、宗教の祝日も同様で、当日は校内放送で一緒に祝ってくれます。

これは生徒だけではなく、VPの教師もまた様々で、ユダヤ系もいればアフリカ系もいます。それぞれのクラスでは、彼ら・彼女らのバックグランドなども絡めて授業が進められるので、とても興味深いものを体験しました。生徒と教師との信頼関係が強く、英語の授業では、アフリカ出身の教師が伝統料理を持ってきてくれたりしました。

委託児所

高校には委託児所も設置されています。教師の子供たちがここに預けられるのですが、それだけではありません。中には子供がいる生徒もいます。そういった生徒が高校で勉強できるように、様々な制度が整備されています。また、ここの設備を生かし、家庭科の授業も行われていて、子供の扱い方や育児の仕方について学ぶこともできます。

私の高校生活

私の高校生活は充実していました。友人も教師も本当に温かく支えてくれて、沢山の思い出があります。私が所属していた美術部の先生はとても素敵な方で、皆 から好かれている方でした。生徒がやりたい! と言うと、可能な限りサポートしてくれたので、ファッション・ショーや演劇舞台の背景作りなど、色んな体験 をすることができました。

実は、私は単身留学だったので、高校のときは、一年の半分は一人暮らしという状態でした。もちろん、知り合いの方から協力を頂いたのですが、その事情を知ったある先生は、何かあったら家にホームステイしてもいいのよと言ってくださって。当時は、周りのサポートが本当に温かく、恵まれた環境だったと思います。

また、ここでの生活によって、自分の悩みを解消することが出来たと大きく感じます。自分は日本人と韓国人のハーフということがいつも引っ掛かり、複雑な思いがありました。しかし、この高校で多様な人々と触れ合い、他の生徒が経験した境遇を共有したことで、ハーフはたくさんいるし、そんなに特別じゃないんだということを教えられました。今では、自分がハーフであるということの複雑さはほとんど感じません。また、友人とお互いの国のことや文化のことを共有することで、国際問題などに興味を持つようになりました。特に、中国の友人と日本の歴史的背景について話し、たくさんの国籍の人や人種の人と触れあうことで、色々な発見があり、貴重な体験をしたと思います。

Victoria Park Collegiate Institute :
http://victoriaparkci.com/index.php