活動報告 「世界の学校から」vol.16 糸木悠

今回は、東京大学経済学部3年の糸木悠さんにBerlin Brandenburg International School (BBIS)を紹介していただきます。BBISは、ドイツの首都ベルリン郊外の小さな町にある、大自然に囲まれた在籍生徒数400名あまりの小さな学校です。豊かな自然環境と歴史遺産、そして、近代都市に囲まれた素晴らしい学校を、みなさんに紹介していただきましょう。

糸木悠。1987年東京生まれ。6歳から18歳まで、インド・トルコ・ルーマニア・ハンガリー・オランダ・ドイツに、それぞれ数年滞在。ドイツ・ベルリンのBerlin Brandenburg International School(BBIS)を卒業後、東京大学文科Ⅱ類に合格。現在、東京大学経済学部3年に在籍中。大学では、サッカーと株式投資をサークルで行い、金融系のゼミに所属。

活動報告

自然、歴史、そして都市

私が通っていたBerlin Brandenburg International School (BBIS)は、首都ベルリンの丁度南東に位置するKleinmachnowという小さな町に位置しています。大自然に囲まれており、Machnower湖とTeltow運河のほとりにあるキャンパスを一歩外に出れば、そこには40万平方メートル(100エーカー)近い森林が広がっています。近くにはHakeburgという、20世紀初頭に中世の要塞を改築して作られたお城があるくらいで、混雑や雑音から離れ、非常に穏やかで、緑に溢れる自然環境に囲まれています。

車で森を抜け、東南ベルリンの住宅地を越えると、湖沿いにGlienicke橋が見えてきます。この橋は、アメリカ合衆国とソビエト連邦が、冷戦中にスパイの交換を行ったことで知られています。この橋を渡ると、そこからはポツダムに入ります。ポツダムは、第二次世界大戦の終結に関する勧告を行った、かの有名なポツダム宣言が発せられた場所です。ポツダムでは、1745年にプロイセン王国のフリードリヒ大王が造営した夏の離宮サンスーシ宮殿や、第二次世界大戦末期の1945年にポツダム会談が行われたツェツィーリエンホーフ宮殿など、ユネスコの世界遺産に登録されている文化遺産を見ることができます。

学校から20分ほど車を走らせれば、ベルリンの中心街にも行くことができます。ベルリンは、ヨーロッパで最大の経済大国、ドイツ連邦共和国の政治的機能を担う首都であり、ヨーロッパ有数の大都市でもあります。そのため、高度に発展しており、実に近代的です。しかし、その一方で、歴史的にみても非常に特殊で興味深い都市です。冷戦時代に、ドイツがベルリンの壁を隔てられ、東西に分断されていたという歴史はあまりにも有名でしょう。冷戦時代の名残から、西側がモダンで発展しているのに対して、東側は古風で芸術的な街並みが広がり、未だに比較的発展途上である様子が伺えます。

秘密兵器研究所が我らの学び舎

以上のように、BBISを取り巻く環境が素晴らしいことはわかりました。では、BBISのキャンパス自体はどうなのでしょうか。

BBISのキャンパスはハウスと呼ばれる4つのレンガ作りの建物から成っています。第二次世界大戦中、これらのハウスでは、極秘の兵器・レーダー開発や暗号研究などが行われていました。転用のため施設を改築したとはいえ、キャンパスのいたるところで、戦争の歴史を垣間見ることができます。そのため、キャンパスの雰囲気は歴史感に溢れ、落ち着きがあるように感じます。

戦時中に作られた建物をキャンパスとして使っているからと言って、施設が不十分なわけではありません。キャンパス内には、最先端の機械や道具の揃った教室や図書館、コンピューター室、科学実験室、音楽室など、授業に必要な施設は一通り揃っています。唯一の問題は、私が通っていたころには、運動場やジムがなく、体育や部活の時間にはバスに乗って、近くの運動施設へ行っていたことでしょう。しかし、07年の秋に、キャンパスの目前に、6レーンのランニングトラックを有する総合運動場が建設されました。また、翌年の春には、運動場の隣に、バスケットボールコートが3面入るほどの大きな総合体育館とトレーニングジムが完成しました。これらにより、その唯一の問題は解決されました。今後も様々な改善によって、キャンパスがより便利で快適になるように発展して行くことでしょう。

学業と同等に大事な課外活動

BBISにおける授業は、IBと略称される国際バカロレア・プログラムに則って行われています。IBとは国際バカロレア機構の定める教育課程を修了すると得られる資格です。11年生と12年生の2年間は、大学入試資格であるDiploma Programに参加します。この2年間のプログラムは6つの選択科目、卒業論文および「知識の理論」(Theory of Knowledge)、課外活動を含み、それらの成績によって45点満点の卒業成績および大学受験資格が与えられます。

BBISは、IBにおいても、重要な位置を占める課外活動をたくさん提供しています。例えば、サッカー、バスケットボールなどのスポーツ活動、そして、料理や模擬国連、人権クラブなどの文化的活動です。これらの課外活動は、日本の部活のように3年間続くわけではなく、基本的に学期末の大会をもって、学期ごとに完結します。

生徒たちは、自分の所属したい部活に学期毎に応募し、選考を受けます。見事合格し、チームの一員となれたら、週2回から3回の練習、および、若干の親善試合を経て、期末にある大会に出場します。通常3日間の大会ですが、相手の学校の生徒の家に泊めてもらったり、パーティーをしたり、観光をしたりと、大会以外にもイベントが充実しており、非常に楽しい旅行になります。

異種混合! 少数精鋭!

BBISは、3歳児プリスクールから12年生まで、わずか430名しか在籍しておらず、非常に小さな学校です。私の学年は16名のクラスが2つしかなかったので、学年に32名しか生徒がいませんでした。人数が少ない分、一人ひとりに先生の目の届く質の高い授業を受けることができ、また、学年の結束力も高まります。

生徒数は430名ですが、生徒の国籍数は41もあります。実際に、私の学年には、10ヵ国程度の生徒が在籍していました。もちろん、ドイツ人が一番多いのですが、次に多いのは欧米人ではなく、イスラエル人でした。それは第二次世界大戦の歴史的理由から、ドイツのイスラエル大使館を中心として、多くの滞在者がいるためです。米軍の基地も近くにあったため、アメリカ人の生徒も多かったと思います。このように、歴史的背景の全く異なった生徒たちが集まり、例えば、第二次世界大戦などについて議論をすると、様々な切り口から議論が発展していくので、非常に面白い議論に発展します。

もちろん、多国籍なのは生徒に限ったことではありません。教員も世界各国から様々な資格、経験を持った方々が来て、教鞭を執ってくれます。それが、授業をさらに多角的・多面的にし、活性化させることは言うまでもないでしょう。

スマトラ沖地震には負けない!

私は、このような素晴らしい学校で、卒業までの2年間を過ごしました。その間には、学内外を問わず、さまざまな経験をしました。

学内では、私は特に大きなプレゼンスのある人権クラブの活動に力を入れていました。このクラブは、主なプロジェクトとして、毎年ボリビアの貧困層に寄付金を送ることを目的としています。しかし、エイズに関する啓蒙活動を行うなど、活動は多岐に渡っています。資金集めなどは順調に行っていたのですが、問題は05年に起きました。スマトラ沖地震が発生したため、被害者への寄付金で、本来ボリビアに送るはずの資金が集められない可能性が出てきたのです。

支援先の方々は人権クラブからの寄付金を元に生計を立てていますから、寄付金は必ず継続する必要があります。そこで私たちは、「Move-A-Thon」という、チャリティー・マラソンという資金集めのイベントを企画しました。このイベントによって、なんとか資金を集めることができました。この運営は非常に大変でしたが、とてもいい思い出になっています。

3ユーロの幸せ

一方、学外では、昼休みに学校の近くの店にドネール(トルコのサンドイッチ料理)を買いに行くのが楽しみでした。BBISでは12年生になるとSeniors’ Privilegeと言って、休み時間や空きコマに学校の外に出る権利を与えられます。その権利を行使して、今日はどんなソースにしようか、思い切って3ユーロの肉2倍のやつ頼んじゃおうか、などと考えながら、木の香りが漂う森の中をみんなで漫ろ歩きするのです。清々しくて、とても気持ちいいですよ。もちろんドネールの味も最高です。

最後に

BBISは小さく、人里離れた学校ですが、豊かな自然環境と歴史遺産、および、近代都市に囲まれた素晴らしい学校です。もし、訪れる機会がありましたら、是非とも街を見て、自然に触れて、BBISの良さを感じてください。

Berlin Brandeburg International School :
http://www.bbis.de/