海外生活体験者・社会人インタビューvol.55〜後編〜

interviewee_s_144_profile.jpg 須藤展啓さん。1981年生まれ。北海道小樽市出身。04年、北星学園大学文学部英文学科を卒業後、民間の語学学校IAYインターナショナルアカデミーに入学。その後、06年に青年海外協力隊に合格し、2ヵ月間の訓練を経た後、07年1月より2年間キルギス共和国にて日本語教師として活動。帰国後は、札幌市内の専門学校にて日本語教師として勤務しつつ、日露青年交流センターの日本語教師としての試験を受験。合格後、09年9月より、モスクワ市立教育大学にて日本語教師として活動中。

ロシアのスパルタ教育

―モスクワで日本語教師として活動されていて、どのようなことを感じましたか。

私の大学の学生だけなのかも知れませんが、ロシア人は意外と漢字に強いです(笑)

ロシアは実は、日本語教育の歴史が深いようです。100年以上はあると聞いています。最初に日本語教育に携わったのは、ロシアに漂着した日本人だとか。だから、ロシアの日本語教育は、他国のものと比べると独特で、「こういうやり方で、日本語が本当に上達するんだろうか?」というやり方でも、実際に上手くなっていますからね。

―具体的にはどのような方法なのでしょうか

一言で言えば、詰め込みですね。

私はモスクワ市立教育大学以外にも、高校などで日本語を教えたりもしているのですが、ロシアの教育方針には少し驚きました。例えば、どんな先生が「いい先生」だと思います?

―「わかりやすい授業をしてくれる先生」でしょうか。

そうなんですよね。日本だと、わかりやすい授業をしてくれる、生徒の長所を伸ばそうとしてくれる、優しく親切な先生が「いい先生」と言われることが多いですね。でも、ロシアでいい先生と言うと、スパルタ教育をする先生なんですよ。教える過程で嫌われても構わない、結果的に生徒が伸びていることが重要、厳しく宿題をたくさん出す先生が「いい先生」と言われます。場合によっては手を出す先生もいるそうです。

―ひと昔前の日本のようですね……、竹刀を片手に授業を行う、あの。

そうですね(苦笑) でも、ロシアでは先生が厳しいのは当たり前なので、体罰と騒がれたり、学級崩壊だと言われたりすることもないですし。また、結果を出してくれる先生は生徒からも尊敬されます。

―ゆとり教育1年目の私としては、詰め込み教育は羨ましい限りです……。

こうしたやり方が一概にいいとは言えませんが、でも、実際にロシア人学生は覚えるのが得意ですし、よく勉強します。だから、私も人気取りに走るような下手な授業はできないな、と(笑) 日本人教師ではあるが、ロシアで教えているので、「楽しくやりつつ、締めるところは締める」。こういった授業を行えるよう頑張っています。

ロシアは大阪みたいだ

―須藤さんから見るモスクワは、どのようなものでしょうか。

初めは、モスクワで働くキルギス人を見て、少し悲しくなりました。

キルギスにいたときは、周囲のキルギス人には様々な職種の方がいました。「俺はモスクワで一発あててやるんだ!!」と夢を語っている人も見ました。でも、実際にモスクワに来てみると、厳しい仕事や低賃金の仕事に従事しているキルギス人の方をたくさん見かけます。このお店のレジに立っていた人もキルギス人でしたよ。

―そうだったんですか!?

ええ。だから、最初はどこか悲しい気持ちになってしまいました。ですが、すぐそうした気持ちはなくなりました。私が悲しんでも仕方のないことですし、私にはまだ何もできません。それに多分、彼らもそれをわかって来ているでしょうし、仕事に貴賎はありませんから。

次に、モスクワそのものについてですが、想像していたよりもずっといい街でした。快適です。地下鉄も、ショッピングモールやファストフードも、スーパーもありますし。街を漂う灰色の雰囲気さえ気にならなければ(苦笑)、とても住みやすいです。

―寒さを気になさらなかったところが、さすが北海道という感じですね(笑)

あ、そうですね(笑)

それから、語弊があるとマズイのですが、ロシアの方は大阪の方みたいだなと感じました。エネルギッシュでバイタリティに溢れていて。そのエネルギッシュな部分が、ときたまキツく感じたりすることがあっても、実際は親身に向きあってくれていたり。例えば、道を聞いたときも、さらっと答えて、最後に笑顔という感じではなくて、大きな声でまくし立てるように話して、でも「ええから、兄ちゃん、ついて来っ!」と言って、世話を焼いてくれるところとか。敵にまわすとおっかないですが、味方にすると心強いです。

―今、お話を伺って、今までのロシア人の方との会話を全て大阪弁に訳して思い返してみたのですが……、どれも結構しっくりきますね(笑)

でしょう(爆)

キルギスでもそうでしたが、ロシアの方も、人に頼り頼られという生活をよく知っているように思えます。

明日があるさ♪

―日本とロシアは、今度どうあるべきとお考えですか? また、日本がロシアからどのようなことを見習うべきだとお考えですか?

そうですねえ……。もちろん、日本とロシアには仲良くあってほしいです。あと、欲を言えば、ロシア語を使う機会がもっと増えて欲しいですし、日本とロシアの相互交流の場が増えてくれればとも思っています。

ロシアについては、精神的なタフさはとても良いことだなと思いました。深刻なことでも悲観しすぎることなく、前を向いて生きているところなんか特に。「明日やれることは明日やろう」くらいの、変に力みすぎていないというか、いい意味で肩の力を抜いているところもいいですね。

あと、あまり偉そうなことは言えないのですが、ロシア人学生は真面目に頑張っていますからね。日本の学生のみなさんにも是非、頑張ってほしいです。

―かしこまりました!!(笑)

「自分の両親がしてきたような生き方」

―今後は、どのような活動をお考えですか?

これは、たぶん期待されている答えとは違うのでしょうけれども……、一番の目標は「自分の両親がしてきたような生き方」です。具体的には、普通に家庭を持って、子が大学を希望すれば進学させてあげ、夫婦喧嘩もあれど仲は良く、居心地のいい家庭を築くことですね。年を重ねて行くと、両親が当たり前にやっていたことが、実はとてもすごいことだったんだなと感じるようになりました。

ちなみに、この「自分の両親がしてきたような生き方をする」というフレーズ、実はキルギス人の学生の言葉なんです。帰国も近くなって、進路などについて話していたときに、その学生が日本語でこう言ったんです。これを聞いたときに、「私もこれがいいなぁ」と思いました。

仕事に関しては、今後もこのような形で、日本と外国に携われる仕事を頑張りたいです。日本、外国、日本語教師……、何かひとつ、今と関わりを持つ仕事、日本の文化を伝えたり、外国の文化を日本に引き込んだり、そういった仕事に携わりたいと考えています。

―ありがとうございます! では、最後に一言お願いいたします。

僕みたいなものが長々とスミマセン……(苦笑)

―いえ、そうではなくて!!(笑)

違いましたか(笑) では、今後も楽しく、厳しく頑張っていきたいと思います!!

―素晴らしいお話、この度は本当にありがとうございます!

インタビューアーから一言

今回のインタビューは現地では有名な「Удонъясан(読み: ウドンヤサン)」で行いました。読んで字のごとく、「うどん屋さん」です。須藤さんとは、ブログを通じて知り合いになりました。私が書いている留学ブログに、須藤さんがコメントをくださったことがきっかけです。お話を通じて、ロシアに対する私の見方が大きく変わっていきました。また、お互いに北海道から来ているということもあり、北海道でロシア人の方と会う方法や、北海道でのロシア人事情など、個人的にも様々お話いただけました。本当に、ありがとうございます!!

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interviewee_s_41_profile.jpg 木村荘一郎。1987年生まれ。高校三年間を米国オハイオ州で過ごし、帰国後は北海道大学経済学部に入学。現在3年に在籍。1・2年は課外活動、2・3年は学業に精力的に取り組み、現在はモスクワ大学外国語学部に留学中。ロシア語の研修をしながら、現地で様々な出来事と格闘中。