海外生活体験者・社会人インタビューvol.56〜後編〜

report_29ookawa_4.jpg 大川佑さん。1981年生まれ。小学2年生でスイス・チューリッヒに渡り、その後小学5年生から高校卒業まで、イギリス・ロンドン郊外のパブリック・スクールBedford Schoolに通う。帰国後は一橋大学経済学部に入学。美術部やまちづくりなど、複数のサークル団体に所属した。卒業後は、電通およびサントリーの関連会社の広告代理店である株式会社アドギアに就職し、マーケティングやプロモーションの企画提案に3年半従事。その後、09年11月にワールドサッカーキングなど有名サッカー雑誌を多数出版している株式会社フロムワンに転職。現在はデジタルコンテンツ部に所属。

デジタル領域でサッカーのコンテンツをどう活かすか

―退職してからはどうしたのですか?

退職して2ヵ月は無職の状態だったのですが、大学のゼミの先生からウェブサイトを作る仕事の紹介があったので、友人とwebを制作する仕事をその間やりました。それと並行して転職活動をやっていましたが、その退職直後にオファーを貰ったので、フロムワン社に勤めることとなりました。

―現在、デジタルコンテンツ部で具体的にどういう仕事に携わっていますか?

私の場合、主に2つ仕事があります。1つ目はメディアの運営です。マンチェスター・ユナイテッドの日本語バージョンの管理人として、ホームページを更新したりしています。記事の翻訳は他の会社がやっていますが、その記事を編集・校正する仕事を行っています。

2つ目は、メディアの立ち上げや、デジタル領域でサッカーのコンテンツをどう活かすかを色々考えています。例えば、サイトを立ち上げたり、iPhoneアプリを作成したりするのかを考えています。さらに、前職での経験を活かした提案の仕事ですね。そういうデジタル領域で、新しい収益源を見つけるのも仕事の一つです。

以前勤めていた会社で得たマーケティングの知識とwebの構成、それに加えて学生時代に培ってきた英語力を今の仕事に活かしています。現在の会社には英語を話せる人はあまりいないので、海外とのやり取りや翻訳作業等で、英語の担当の一人として仕事を行っています。ですから、以前やっていた仕事がなければ、今の自分はいなかったと思います。

有給取ってフットサル大会でボランティア

―そう言えば、なぜ大川さんはサッカー好きになったのですか?

イギリスに住んでいたことで、その文化に触れて、それがきっかけでサッカーが好きになりました。帰国した後も、帰国子女を集めてサッカーチームを作りましたし、会社に入ってからも、一週間有給取って、アジア杯というフットサル大会でイラク代表のボランティア通訳をやりました。やっぱり、単純にサッカーが好きだし、普段出会わない人と出会えるし、とにかくサッカー関係に携わることが楽しかったので、タダでもそういうことがやりたかったんです。

―好きなことをやっている仕事にやりがいとかありますか?

めちゃめちゃあります(笑) 基本的に自分が好きなことなので、仕事をやっていても嫌だなと思う瞬間はない。例えば、仕事全部がサッカーの話なので、そういう話で皆と話が合うし、毎日が楽しい。それがやりがいとなり、それが今のモチベーションとなっています。これからも出来る限り、この仕事を続けていきたいと思います。

サッカーという文化&サッカーをする環境

―なるほど。では、大川さんはこれから日本サッカーを盛り上げるために何が必要だと思いますか?

サッカーという文化を浸透させることが必要だと思います。ヨーロッパのサッカーリーグは100年以上の歴史があるため、ヨーロッパではお年寄りの方も試合で応援しています。それに比べると、日本のJリーグは発足して17年の歴史しかなく、日本のサッカー文化は浅い。そのためか、日本には気軽にサッカーが出来る環境がありません。

私が日本に帰ってきたときに、気軽にサッカーする環境がないことに衝撃を受けました。イギリスではきれいなフィールドがどの公園にもあって、いつでもサッカーをする環境を提供されていますが、日本ではサッカーする環境がありません。あっても、有料グラウンドなので、子ども、大人ともに気軽に利用できない環境になっています。そんな中で、自分でも何かしらできることを考えています。環境を整えることにより、日本のサッカーは伸びると思います。

Jリーグについて言えば、観客席にはとても熱いサポーターもいます。ただ、一部の人たちだけが盛り上がっていて、周りがついて来られていないのではと感じました。今は温度差が激しく、熱くなっている人と冷ややかになっている人がいるので、どうしても一体になりようがないのでは? というのが率直な意見です。個人的には、長期的に見ればJリーグは伸びると思うので、地道な努力でチームへのサポート体制を築くことが大事だと思います。

―ちなみに、今年はW杯yearですが、大川さんはどこの国を応援していますか?

日本以外ではイングランドを応援します。イングランドは1966年以来、優勝していないので、私が学生時代お世話になった国に、是非とも優勝してほしい気持ちが強いです(笑)

―イングランドですか! とりあえず、私は今まで優勝経験がないスペインを応援したいと思います(笑)

自分の好きなことだったらやり通せる

―それでは、もう時間ですので、最後に就活中の帰国生に対してメッセージをお願いします。

スポーツ業界、出版業界、特に前者を目指している人にズバリ言いますが、この業界はあまり門戸が開かれていない状態です。また、一部を除いて小規模な会社が多く、人を雇いたくても雇えないのが実情だと思います。また、小規模な会社が多いことから待遇も決していいとは思いません。

まぁ、現在、大企業も不況で新卒の人たちを雇えない状況なので、同じかもしれませんが、これから就活を迎える学生の皆さんには、会社が何故採用活動を行うのか、あるいは、行わないのかを考えて、この社会の仕組みに早くに気づいてほしい。採用活動にはお金がかかるのです。

この業界を本当に志望している人は、数少ない新卒採用活動をしている会社を探さねばならないと思います。中途で転職して入ろうと思っても、希望の企業に出会えるとも限りません。企業側からしてみれば、中途採用で採るのも中小企業に見合わないコストがかかる可能性があるため、積極的に採用活動を行いません。それぐらい、出会える可能性が低いのです。結局、コネクションがこの業界で働くに至る最も可能性が高いルートかもしれません。ただ、そういう縁があったときは、待遇が悪くても絶対に何が何でも働きたい、それぐらいの覚悟がなければ、働き続けるのは難しいと思います。

自分の好きなことだったらやり通せると思う人は、足踏みする前に、自分の好きなものやそれに関われる仕事で、どのようなものがあるかを探す必要があると思います。特に、最近の人たちはデジタルに慣れている反面、現実での経験値が低い人が多いですから、実際働いてみる、その場に行ってみることが重要です。後悔しないためにも自分が行きたい業界のインターンをやるべきですね。僕自身が出来なかったからなおさらです(笑) インターンでもコネクションが出来ますし、縁があるかもしれないので、積極的にインターンをやるべきです。

―今日は本当にありがとうございました!

Bedford School :
http://www.bedfordschool.org.uk/
活動報告 vol.29 大川佑
http://www.rtnproject.com/2009/12/_vol29.html

インタビューアから一言

今回のインタビューは、私が憧れている業界の方とお話が出来たので、非常に貴重な体験になりました! 大川さんも優しく私に接してくれて、インタビュー中にも関わらず、ときどきサッカーについて雑談をしたりしていました(笑) また、今回のインタビューでは、私にとって得るものがたくさんあって、とても勉強にもなりました。これから就職活動が控えていますが、私も大川さんのように好きなことを仕事にする社会人になりたいと思いました。

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徳井洋平。1989年生まれ。三重県出身。小学1年から中学3年まで、アメリカのロサンゼルス、シカゴなど、様々な土地で暮らし、高校3年間はカナダのト ロントで生活し、Pine Ridge Secondary Schoolに通う。大学受験を機に帰国し、立教大学社会学部に入学。現在2年に在学中。大学では、朝から講義、午後は放送研究会のサークル活動のため、多忙を極める。趣味はサッカー観戦で、ACミランのカカをこよなく愛す。