活動報告 「世界の学校から」vol.21 内山紗也子

今回は、東京大学獣医学専攻5年の内山紗也子さんに、ご自身が卒業された米国シカゴのDeerfield High School (DHS)をご紹介いただきます。アナウンサーの小野寺麻衣さんや内田恭子さんも卒業生とのこと。郊外に位置する4年制の公立高校で、Highland Park High Schoolという姉妹校もあります。シカゴの郊外はとても自然が多く、また、冬の寒さは厳しく。マイナス20℃まで下がります。道路の凍結やブリザードのため休校になることもしばしばあったそうです。

内山紗也子さん。1986年鹿児島県生まれ。その後、東京、沖縄に暮らし、小学5年から2年間マレーシアに滞在。東京に帰国後、中学2年の夏から米国シカゴへ。高校卒業まで5年間在住。 Deerfield High School卒業後、帰国し、東京大学理科Ⅱ類に入学。現在、東京大学大学院農学生命科学研究科獣医学専攻高度医療科学研究室の5年生。クルクミンと抗癌剤の併用効果の研究をしている。

活動報告

はじめに

Deerfield High School (DHS)は、アメリカ合衆国イリノイ州のシカゴ郊外に位置する4年制の公立高校です。Highland Park High Schoolという姉妹校もあります。1963年に初めての卒業生が卒業しました。現在、学校には1700人以上が在籍しています。シカゴの郊外はとても 自然が多く、冬はマイナス20℃まで下がります。寒すぎると、雪も降らずに、道路に透明な氷が張ってしまいます。そうすると、車の運転が危険になるため学 校も休みとなります。また、猛吹雪でも学校が休みになることもありました。

キャンパス

Deerfield High schoolはシカゴの郊外に位置していて、裏側にはPrairie Wolf Sloughと呼ばれる保護林が広がり、“Deer”fieldという名前の通り、春になるとシカが走る姿が見られるほど、自然に囲まれた学校です。学校の敷地も広く、6つの野球グラウンド、テニスコート10面、サッカー場ふたつに陸上競技用トラック、そして、大きなフットボール競技場があります。学校の講堂では、生徒たちによるダンスやミュージカル、コンサートなどが実施され、black box theaterと呼ばれる小さな劇場もあり、学生の劇団が活動しています。

学生と教育

DHSには1700人以上の学生が在校しているにもかかわらず、95%が白人で、マイノリティーの人数はとても少ないです。ただ、マイノリティーの中では アジア人は比較的多めです。アフリカ系アメリカ人は少数で、私が在校中でも2人ほどしかいませんでした。

実は、アナウンサーの小野寺麻衣さんや内田恭子さんもこの学校の卒業生なのです。その頃は日本人が多かったようですが、私がいた頃は、日本育ちの日本人は私一人でした。裕福な家庭が多い地域のため、アフリカ系アメリカ人やアジア人であっても、養子として白人に育てられていることも多かったようです。

ちなみにこの地域には、Chicago Bullsに所属していた全盛期のマイケルジョーダンが住んでいたと言えば、そこに住んでいる人たちの裕福さがわかりますよね。白人の宗教はユダヤ教が多く、次にカソリックが多かったです。

裕福な地域であったため、先生の給与も高く、教育にも力を入れていました。06年にはアメリカの公立高校のトップ500以内、07年にはトップ1000以内に選ばれています。U.S.ニュースからは、シルバーメダル(college readiness indexが20以上と高いが、トップ100には入っていない高校)の称号をもらっています。学生の半分以上がAPテストを受け、その中の9割以上が通っています。教育レベルが貧富の差によって決まってしまうのは、とても残念なことでしたが、アメリカらしいとも言えます。

教育には力を入れていましたが、マイノリティーが少ないためESL制度はありませんでした。私は8年生でアメリカに行きましたが、中学校さえもESLには3人しか在籍していませんでした。英語が話せない稀な学生だったため、最初ESL制度のないDeerfield High Schoolには通えないと言われてしまいましたが、ESLが免除される試験を受け、通うことを許されました。

生徒たちのほとんどの両親がその街で育っています。また、生徒たちもほとんど海外に行った経験がありません。街中が知り合いという感じで、とても安全な街 でしたが、排他的でもありました。本人たちは差別をしているつもりではなくても、差別的な発言をされることもありました。仲間意識も強く、スポーツに関し ても、自分の学校に対する愛着がみんな強いです。

スポーツ


イリノイ州立高校協会によって、多くのスポーツの部活が支援されていますが、フィールドホッケーやラクロスは個人の寄付によって運営されており、選手は自分たちで道具も買わなければいけません。そんな状況でも07-08シーズンは州で優勝しました。

姉妹校であるHighland Park High Schoolは、慶応に対する早稲田のような感じで、永遠のライバルです。フットボールの試合があると、学校をあげて応援していました。体育祭のようにみんなが一丸となって燃える行事はありませんでしたが、この試合がそういう存在だったのかもしれません。

その他の活動

感謝祭の休みの後から冬休みまでの間、School Chestという募金活動を毎年行っていました。生徒会によっていろんな催し物が行われ、毎年$120,000以上の募金を集めていました。その募金には、生徒だけでなく、先生、スタッフ、保護者も参加しており、年間行事となっていました。この募金は癌や白血病に苦しむ子どものためのキャンプに寄付されていました。

この活動で、ただの高校生であっても、みんなで協力したら、大きなことを成し遂げられるということを学びました。確かに裕福な地域だったからこそ、高校生でもこの大きさの金額を集められたというのもありましたが、自主的に活動することの価値を知ることができました。

また、上級生が下級生に勉強を教えるPeer to Peer Tutoringというボランティア・プログラムもありました。これは、始業前の早朝に教室に集まり、上級生が得意科目を、それが苦手な下級生に教えるというものです。私も11年生になったとき、教えていました。それまでは、私は自分の英語に自信もなかったのですが、先生に勧められこのプログラムに参加して、教えた生徒の成績が上がったり、母親から感謝されたりして、自分の自信にも繋がりました。

私は大学生になってからも家庭教師をしていますが、教えるこることの楽しさ、そして、教えることで自分の理解がさらに深まるということを学んだのは、このプログラムのおかげだったかもしれません。

最後に

典型的なアメリカ中部に位置するDHSでは、とても濃いアメリカ生活を過ごすことが出来ると思います。日本人が考えるアメリカとは違った、排他的なアメリ カという悪い側面もありますが、豊かな自然に囲まれた中に入ると暖かいコミュニティーが形成されていました。冬は厳しすぎるので、ぜひ夏に、ニューヨーク ともロサンゼルスとも違う「アメリカ」を体験しに来てください。

Deerfield High School :
http://www.usd216.org/HS/index.html