海外生活体験者・社会人インタビューvol.68〜後編〜

interviewee_s_178_profile.jpg M.H.さん。北海道出身。学生時代はサッカー部に所属。北海道大学工学部工学研究科を卒業後、某商社に入社。入社二年目の秋にカナダへ4ヶ月の語学研修へ。その後、1年モスクワにてロシア語研修を積み、研修後モスクワに滞在。仕事をバリバリにこなす傍ら、小学校2年より続けているサッカーを通じて多くの方と交流を深める。

語学研修キックオフ

―カナダやロシアでの研修時代は、どのように過ごされたのですか。

現地語の習得に、ひたすら全力投球でした。

カナダにいたときのメインイベントは、サッカーチームを探したことです。サッカーで有名な大学が近くにあったので、そこの監督に拙い英語ながらも体当たりで申し込みに行きました。さすがに、その大学のサッカー部には入れてもらえませんでしたが、社会人クラブをいくつか紹介してもらえたので、そこでサッカーをしながら、英語を学びました。

モスクワに来てからは最初の3ヶ月、1週間ごとに小さな目標を作っていました。今週は地下鉄に乗れるようになろう、次の週は郵便局に行こうといった具合に。3ヶ月ほど経って、ある程度こちらの生活がわかってきた頃には、3ヶ月ごとの目標を立てて、その達成に勤しみました。

こちらでロシア語を学ぶときに、仕事をする上で自分は何が求められているのか、自分に付加価値をつけるにはどうしたらよいのかを考えました。ロシア語の読み書きは、ロシア人に任せた方が早い。だとすれば、自分に求められるのは読み書きではなく、むしろ日本人とロシア人の間を瞬時につなげるような役割、つまりは会話能力にあるのではないかと考えました。

そのために、いろいろなアクションをとりました。現地の大学のサッカー部や外国人主催のサッカーサークルに入って活動しました。外国人と接する機会を増やそうと考え、ロシア語の堪能な外国人の友人と話していく中で、彼らの使う表現を真似てみたり。宿題はいつも喫茶店で行いました。

―なぜ、喫茶店なのですか。

家だと心地よくて寝てしまうので(笑) それに、喫茶店だと必ずウェイターさんが来てくれるので、彼らと話すことができますし。カプチーノ1杯で昼過ぎから閉店まで粘りました(笑) あまりに通いすぎのたで、ウェイターさんとも仲良くなり、彼らの家で飲んだり語ったりする機会も増えました。

―このお話、あと一年早くお伺いしておきたかったです(笑)

モスクワでのハットトリック

―ロシアでのお仕事で、特に印象に残っていることはございますか。

3つあります。一つ目は、会社機能を見ることができたこと。二つ目は、自身の成長を確認できたこと。三つ目は、在モスクワ駐在員の方々との交流です。

一つ目ですが先述の通り、弊社では比較的若い内に海外で研修・勤務経験を積みます。日本だと仕事は縦割りになっていることが多いのですが、海外勤務ですと大抵の場合、小さな所帯で会社機能全体を俯瞰するということが多く、やることは多くて大変なのですが、とても良い経験をさせてもらったなと思っています。

二つ目は、現地のロシア人の方々と働いていて感じたことです。日本であれば1時間で伝えきれることを、ロシア語や英語を使った場合は2時間も3時間もかかることが、初めの頃はしばしばありました。わかりやすい表現でスタッフに自分の考えをどう伝えようと、四六時中考えていましたよ。でも、それがだんだんと慣れてきて、ついに1時間で伝えられるようになったときには、自身の成長を感じ、とても嬉しかったのを覚えています。

三つ目についてですが、現在、モスクワで邦人のサッカーチームを組んで毎週活動しています。最初はサッカー好き8人が集まった小さな団体でしたが、今では20人を越え、活動も趣味の範囲を越え本格的に練習を行なっています。参加されている方は、モスクワに滞在されている社会人の方が多く、みなさん実に様々なお仕事をされています。

多種多様な業種の方々が、共通の目的に向かって共に少しずつ成長できる。おかげで在モスクワ邦人の方々とは一生付き合っていきたいと思えるほど、非常に深い交流が持てています。もしかしたら同期より深いんじゃ?(笑) こうして異業種の方々と深く交流できるのは、モスクワのような地域ならではだと思います。東京ではまずなかなかないでしょうし、アメリカなど駐在員の方が多い地域ですとグループが細分化しますし、かと言って駐在員の方が少なすぎる地域だと、ここまで多様な方にたくさん出会えないでしょうから。

―私もモスクワで働きたいです!!(笑)

スカラーとベクトル、時点と成長

―今後の方針をお聞かせ願えますか。

二つあります。一つは「真剣勝負の場に立つ」。もう一つは「組織力はベクトルの和」です。

まず、一つ目ですが、今までその時々でそのとき出来得るベストな選択をしていきたいと思っています。今の仕事が天職なのかと考えたことはあります。30歳を目前とした今から見れば、就職活動は20代前半の若造の決断ですから、今考えると色々と不十分な点もあります。しかし、その決断はその時に持ち合わせていたもの全てを使って、全力で考えて出した結論であって、だからこそ今この仕事に就いているわけです。その意味で、例え将来の自分から見れば至らない決断になってしまうとしても、その時々の自身が考えられる最善の選択を常にとり続けていればそれで良いと思っています。それは真剣勝負の場に立たねばできません。

言い換えると、今できる・やらなければいけないことは、全て全力で行うということなのかもしれませんね。この先もし、コレだっ! というものが見つかったとしても、見つけた時点での自分は力不足で、その道を選べないということほど、悲しいことはないと思うので。「ああ、○年前にあそこでこう頑張っておけば、今この選択ができたのに」ということがないよう、今できることは全て頑張りたいと思っています。

二つ目ですが、自分の価値観の多くはサッカーで形成されているので……(笑) 多くの人と共通の目的を目指して達成するということが好きなので、組織というものに私は重きを置いています。常々「組織力はベクトルの和」であると思っています。

―あの……どういうことでしょうか?

組織を「ベクトル」と考えます。 例えば、組織の構成員の力をスカラーと捉えれば、組織の力は構成員の力の単純和となります。でも、それがベクトルだったら、各構成員の力の大きさ・向きにより、組織の力が決まってきます。

例えば、初め1の力だった人が成長して10まで力を上げた。同じ期間で、初め10の力だった人が11まで能力を上げた。単純に数値だけ見れば11の人を使いますが、それだと前者の努力・伸び幅に潜む他への影響が評価しにくいんです。前者が1から10まで成長するのに途方もない努力をして、それに影響されて自分も頑張ろうと思った他の組織員が10人いたら、と考えたりするんです。そこが組織の醍醐味だったりします。

みんなと笑うためには真剣勝負の場が必要になる、そこで結果が出せて、初めて楽しかったと思えるのではないかと考えています。それが組織の楽しみだと私は思っていますし、だからこそ「組織力をベクトルの和」と考えて、そんな組織の中に自分を置いて勝負していきたいと思っています。

―本日はたくさんの勉強になるお話、ありがとうございます!!

インタビューアーから一言

モスクワに、自分の大学のOBさんがいる! という情報を耳にし、友人やイベントでお会いした社会人の方々からご紹介いただき、Hさんとお会いしました。とても明るく快活な雰囲気の中、自らの強い信念と絶え間ない全力投球の姿勢に、強い衝撃と感銘を受けました。今回も士気高ぶる熱いお話をお伺いでき、とても有意義な時間を過ごしました。本当に、ありがとうございます!!

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木村荘一郎。1987年生まれ。高校三年間を米国オハイオ州で過ごし、帰国後は北海道大学経済学部に入学。現在4年に在籍。1・2年は課外活動、2・3年は学業に精力的に取り組み、09年秋より一年間モスクワ大学外国語学部に留学。現在は将来の道を模索中。