海外生活体験者・社会人インタビューvol.71

interviewee_s_185_profile.jpg 佐々木延子さん。高校3年間、アメリカ・テネシー州に滞在する。Morristown-Hamblen High School Westを卒業し帰国する。横浜国立大学経営学部国際経営学科にて、海外での日本企業活動や海外企業の日本での経営について学び、特にM&AやMBOについて、興味を持つ。卒業後、日興ソロモン・スミス・バーニー証券、リーマン・ブラザーズ証券での勤務を経て、現在はドイツ証券に勤務。

日本人とメキシコ人が2人ずつ

―アメリカ・テネシー州での高校時代はどのようなものでしたか?

高校で初めての海外生活でしたし、高校にいる外国人は日本人2人とメキシコ人2人がすべてという田舎町だったため、もちろんカルチャーショックはありました。ただ、田舎ならではのピュアさがあり、周りの人がみんな親切だったため、滞在場所が田舎で良かったと思っています。学校への送迎から授業まで、全て友だちが面倒を見てくれましたし、仲の良い友だちもできました。

―高校卒業後、なぜ帰国して横浜国立大学の経営学部に進む道を選ばれましたか?

日本の大学を選んだのは、日本の大学に進む方が自分にとって有利だと思ったためです。高校時代は、「外国人である」がために優遇してもらっている部分はありましたが、大学ではそうはいきません。大学に入って周りの人と勝負を続けるよりも、帰国して大学に進む方がベターだと思いました。

アメリカで住んでいた場所では、「日本」という国に対する認知度が本当に低くて、「アジア人は全部同じ言語で話している」と思ってる人も多い一方で、「TOYOTA」「YAMAHA」といった日本メーカー名は知られていましたし、メーカーは技術だけでなく経営方針をアメリカに進出するときに持ってきているように感ました。その経営方針に興味を持ち、海外と日本で比べてみたいと思い、日本の経営学部に進みました。

外資金融でのキャリアを歩み始める

―大学卒業後に外資金融に就職されたのは何故ですか?

就活を始めたときに、はじめて「何をしたいのだろう」と考えました。最初は技術力に魅力を感じてメーカーも見ましたが、英語を使った仕事をしたいと思ったことと、日本企業ならではの目に見えないルールというか、そういうものにあまり自分は共感できないように思ったので、外資を目指しました。そのなかで、ソロモン・スミス・バーニーに決めた理由は、半分日系で半分外資系なところがバランス良く思えたところと、何回も面接を受けるうちに「この人たちと働きたい」と思ったことです。

―最初の会社での仕事はいかがでしたか?

新卒で入社したときから、外国債券の業務に携わりました。その部署は外資系の気質であり、メール等は英語で、海外とのやりとりもありながらも、日常のコミュニケーションは日本語であり、「英語・日本語どちらも使いながら仕事をしたい」という面接での希望とマッチしていたため、入社後のギャップは少なくて済みました。

―入社から4年後に、リーマン・ブラザーズに転職された経緯を教えてください。

ソロモン・スミス・バーニーで4年程働き、仕事は順調に進みモデルロールになる上司の方にも恵まれていました。ただ、自分の5年後の姿を思い浮かべて、それが安心と思いつつも、まだ20代なので少しはリスクをとりたいという気持ちもありました。ハイリスクなところはハイリターンでもあり、ローリスクなところはローリターンです。また、もっと日常的に英語を喋りながら仕事をしてみたいとも思い始めていました。そのタイミングで、ヘッドハンターの方からリーマン・ブラザーズに誘われたため、堪と勢いで転職を決意しました。

リーマン・ブラザーズは、あまりにも日本的ではなく、異空間に行ったように感じました。自分の評価をする上司もイギリス人なのに、当時はイギリス人の訛りが苦手でしたし、「私は英語ができない」とも最初は思いました。しかし、上司ともコミュニケーションを取っていくうちに、お互いの仕事のやり方なども理解できるようになりました。

それに加えて、これだけ外資だと、とても自由でした。具体的には、仕事が終わっても「帰ったら駄目」といった雰囲気がありません。「明日できることは明日すれば良い」と割り切っている雰囲気があります。また、敬語があまりいらないので上司とフランクに「私はそれには反対です」のような主張も言いやすくなります。ただ、もちろん会社のカルチャーや上司のキャラクターに依存することではありますが。

リーマン破綻のわずか1ヵ月前のこと

―その後の2回目の転職を決意された経緯を教えてください。

08年、年初に赤字が初めて出てから、社内では給与に対する期待が持ちにくくなり、今までの活気がなくなってきました。特に、私のいる事務方では、「プラスの成果を出すのではなくマイナスさえ出さなければ良い」という雰囲気で、左から来たものを右に流すというだけの仕事になってきたため、その雰囲気の中で仕事をするのは嫌だなと思いました。

そこでヘッドハンターに連絡しました。インタビューを受けて、雰囲気も良くてたまたま向こうが探していた職歴と私の職歴が合っていたドイツ銀行への転職を決意しました。リーマン破綻のわずか1ヵ月前のことでした。

そして現在は、ドイツ証券の業務部で事務全般を行っています。営業の人が売った後の受け渡しの業務などを行っており、私は外国債券の受け渡しなどを担当しています。最初のアメリカ系の二社からヨーロッパ系へ転職し、やはり雰囲気が全然違いました。アメリカ系はハイリスクハイリターンで、収益を上げるためにかなり危険なことをやる面もあるのに対して、ヨーロッパ系はあまりリスクをとらずに地味な傾向にある代わり堅実です。仕事のやり方も真面目で、毎日の仕事ですし、監査部・調査も厳しいです。

―将来のことについて教えてください。

経済はどこの国にもあるもので、なくなるものではありませんし、金融業界は、景気が良くても悪くても、人の生活をしていく上での必需品を扱う業界です。その意味では、私は今の業界で今の会社で働き続けたいと思っています。

最後に就活生へのアドバイス

―外資系金融を志望している大学生は多いと思います。そのような学生にメッセージをお願いします。

外資系証券というと華やかなイメージが強く、実際、トレーダーや営業は給料面でも仕事のスケールでも非常に華やかです。ただ、その分ハードでもありますし、それに対する覚悟もある程度必要です。やりがいはありますが、そのような職は、長く働くところではないのかもしれません。残っている人たちは一握りです。

そのような中で、最初の何年間「若さだけ、力はあります、寝なくても大丈夫です」という時期に色々な知識を吸収して、ノウハウを学んで、そして、「さあ30代だ」というときに、何をしたいかというところまで考えておかないと、抜け殻になってしまわないのかと思います。仕事をしながら、何をしたいのかと考えるのも遅くはありませんが、忙しいし大変なので、大まかでも良いので、働き始める前に何をしたいのかを考えると良いと思います。

「外資系金融で生き延びていきたい」ということだけを考えていると、会社は本当にすごく簡単に人を切る厳しさもあります。それはもちろん怖いですし、ただ、その怖さをとっても、やっぱり働きたいと思える人が残っていくのかなと思います。

―就活をする上で、どのような基準で就職先を決めるべきでしょうか?

就活は、自分が会社を好きでも、片思いに終わってしまうことも多いですし、自分が好きな相手に好きになってもらう必要があるという点で恋愛と同じです。そこで重要なのは、選ばれるだけではなく、こっちも相手を選んだほうが良いということです。

選ぶ基準は人それぞれであり、給料で選んでも良いとも思います。しかし、どこを見て選ぶかのプライオリティをしっかりつけるべきでしょう。例えば、私自身が重視するのは働く上の環境です。どんなにお給料が良くても、環境が合わないと結局は長続きしないでしょう。会社のカルチャーが納得できるカルチャーであるか、また一緒に働く人が合う人かを見極めるべきです。

インタビューのときに、個人差はあってもその会社のカルチャーの中でという意味では似た人が出てくると思うので、そのカルチャーが自分に合っているかを見極めることができます。もちろん、環境以外にも、仕事の充実や社会への貢献という点から選ぶ人もいるでしょうが、とにかく大切なのはプライオリティを考えることだと思います。

―本日は、どうもありがとうございました。

Morristown-Hamblen High School West:
http://mhhsw.hcboe.net/

インタビューアから一言

外資系金融機関で働きながら、転職も経て着実にキャリアを創り上げていく佐々木さん。とても優しくて女性らしい方でありながらも、冷静に自分と環境を見つめられている方でした。キャリアを積み上げる中で、ときには「直感と勢いで」転職する決断力には驚かされました。これらを佐々木さんから見習っていきたいと思います。
重城聡美。1987年生まれ。京都府出身。13歳から17歳までの5年間をアメリカ・テネシー州ノックスビル市で過ごし、Farragut High School卒業後に帰国。東京大学理科Ⅰ類に入学後、工学部精密工学科に進学。東京大学柏葉会合唱団などで歌三昧の学生生活を送る一方、家電量販店での販売員経験を経て掃除機マニアに。また、ベンチャー企業でインターン生としてウェブ関連の業務に従事する。2010年5月現在、東京大学大学院工学系研究科精密機械工学専攻の修士課程1年在学中で、ナノメートル計測の研究に携わる。