活動報告 「世界の学校から」vol.27 中野雄介

今回は、国際基督教大学(ICU)の中野雄介さんに、イギリス・サリー州のSouth CroydonにあるWhitgift Schoolという私立男子校をご紹介いただきます。エリザベス一世の治世、最後のカンタベリー大司教John Whitgiftにより1596年に創立され、1600年に開校と、とても歴史ある学校ですが、歴史ある校舎だけではなく、最新の教育設備も整っているそうです。歴史と伝統だけではなく、現在でも、スポーツに勉学に優秀な成績を修める名門校です。

中野雄介さん。1989年東京都生まれ。小学校3年生のときにイギリスへ渡りサリー州に滞在。Whitgift Schoolに11年生(15歳)まで通い、その後日本の高校入学に合わせて帰国。国際基督教大学高等学校に入学し卒業後は国際基督教大学に進学。現在教養学部アーツサイエンス学科の3年生。専攻は経済学だが、リベラルアーツの教育方針の下で、経済学以外の科目も多数学ぶ。部活動ではソフトボールをしており、経験者に負けぬよう練習に取り組んでいる。

活動報告

バックグラウンド

私は7年生から11年生まで、イギリス・サリー州のSouth CroydonにあるWhitgift Schoolという私立男子校に通っていました。10歳から18歳まで(6年生から13年生)の1200人の生徒が通い、敷地は45エーカー(180,000 m2)もあり、とても広かったです。エリザベス一世の最後のカンタベリー大司教John Whitgiftにより1596年に創立され、1600年に開校と、とても歴史ある学校です。しかし、校舎は古く伝統的なものだけでなく、新たに増設された部分もかなりあり、施設はとても充実しています。

この学校はイギリスでも高いレベルの教育を提供するとともに、クラブ活動や短期留学などのカリキュラムに沿った活動にも力を入れ、充実した学校生活を通し て、生徒のあらゆる能力を高めることを目指しています。何かを強制するのではなく、生徒の得意とするものや個性を引き伸ばそうと努力しています。これはイ ギリスでは一般的によく見られる考え方だと思います。

充実した施設

Whitgiftの施設は本当に充実していました。スポーツ施設としては、芝のフィールドは4面、テニスコート4面、ホッケーフィールド1面、トラック1面、体育館にスカッシュコート、プールと環境は抜群でした。特に体育館は05年に新しく改築され、さらに広く充実した内容になりました。音楽施設としては、コンサートホールや練習室がいくつもありました。そして、勉学に必要な施設はもちろん力が入っており、15の理科の研究室、6つのコンピュータールーム、そして2つの図書室などがあり、どんな勉強をするにも困らない環境が整えられていました。

学業

イギリスは多民族国家で、この学校も例外なく様々な人種の人が通っていました。やはり白人が多いのですが、黒人やインド人、中国人も多くいました。日本人に関しては、自分を含め、4人ぐらいしかいませんでした。1200人も生徒がいるにもかかわらず、クラスは少人数制度で、1クラス大体20人程度と、先生と生徒のインターアクションが取りやすくなっていました。

イギリスでは、6th form(日本で言う高校生)になる前に、GCSE(General Certificate of Secondary Education)と呼ばれる全国統一テストがあり、大学に上がる前には、AS-levelを受けた後、A-Level(Advanced Level General Certificate of Education)もしくはIB(International Baccalaureate)を受けるというシステムになっています。11年生まではGCSE、12年生はAS-Level、13年生はA-levelかIBのどちらかに向けて勉強します。

科目は早い時期からどんどん選択して、苦手なものや興味がない科目は落としていきます。GCSEでは10教科に絞り、6月にイギリスにいる全学生が一斉にテストを受けます。Whitgiftでは、これに向けて、7年生の頃からたくさんの課題が課せられます。一日平均3つの宿題が出て、常にそれぞれの宿題の期限を気にしながらこなしていくことになります。学年が上になればなるほど宿題の量や難易度もあがるので大変ですが、複数のことを常に頭に入れておくことに早くから慣れることができたと思います。Whitgiftでは、毎年ほとんどの生徒がこれらの試験で好成績を残しています。

GCSEでは、全ての科目で、AからC以上(GCSEに限り成績のトップはA*)の成績を修めた学生が9割以上を占めています。AS-Levelでは85.9%、A-Levelでは98.3%の学生がAからC以上の成績を修めています。IBの評価も申し分なく、どの科目でも平均5から7の成績です(7がトップでNが落第)。09年度は130人中16人がケンブリッジ大学、5人がオックスフォード大学に進学したようです。

学業以外の学校生活

Whitgiftはクラブ活動や課外活動、校内の行事も盛んで、実に多くの種類のものがありました。スポーツや音楽はもちろん、短期交換留学やハウス対抗競技、CCF(Combined Cadet Force)と呼ばれる軍事訓練体験などがありました。日本のように1つの活動に集中するのではなく、単発のものやシーズン制のもの、1年間だけのものなど様々です。

ハウス対抗競技というのは、ハウス(自分が所属しているクラス)別に様々な競技で対戦するもので、スポーツはもちろん、チェスやディベートなど文化系のもあります。全学年が参加できるように、学年別に設けられています。これで総合的にハウスのランク付けがされるのです。

Whitgiftはラグビー、ホッケー、クリケットに強く、よくトーナメントを勝ち進んでいました。特にラグビーは強く、イギリスのDaily Mail Cupで、U-15は99年と03年に、U-18は10年に優勝を果たしています。08年には、数人のWhitgiftの学生がイギリスで最もレベルの高 いプロラグビーチームでプレーしているようです。強さの理由の一つは、元プロの選手がコーチとして教えているという点が挙げられるでしょう。クリケットも U13 England Schools Cricket Association National Finalで勝利したことがあります。

言語学習面では、短期交換留学を用意しており、フランス、イタリア、ドイツなど、自分が勉強している言語の国の生徒とパートナーになり、お互いに1週間ほどホームステイをします。また、この学校は埼玉県立浦和高校と姉妹校で、日本語の授業がありましたし、日本への短期交換留学も用意されていました。

CCFは9年生のとき全員強制でやります。陸軍、海軍、空軍(Royal Airforce)の3つから選ぶことになり、海軍、空軍希望者は入る前に試験を受ける必要があります。私は陸軍に入りました。あくまで体験なので、厳しい訓練やしごきといったものはなく、行進の仕方や応急手当の仕方、ライフル銃の撃ち方などを週1回、1年間通して習うというものでした。

年の最後に5日間程度のキャンプに行き、そこで習ったことを発揮するというプログラムになっています。匍匐前進や暗闇での行動、ライフル銃での射撃など、様々な貴重な経験をすることができました。1年間これを体験し、これからも続けたいと希望する人は、もちろん活動を継続できます。彼らが次の9年生の面倒を見る番になるのです。

最後に

Whitgiftは教育だけでなく、その他の活動もかなり充実していました。生徒のポテンシャルを上げるためにも、生徒が自主的に活動するような仕組みが ありましたし、それに生徒も応えていました。何もしないでただ学校生活を送ることはできますが、豊富な活動内容と施設がそうさせません。差別もなく、様々 な人種の人が発言や活動を活発にしていました。勉学もよく面倒を見てもらえたし、ここでしかできないような機会を与えてくれ、本当にいい経験ができたと思 います。

Whitgift School :
http://www.whitgift.co.uk/index.htm