海外生活体験者・社会人インタビューvol.80〜第3編〜

interviewee_s_205_profile.jpg 堀井貴史さん。1976年生まれ、滋賀県出身。同志社大学法学部卒。キヤノン(株)本社の海外部門にて、デジカメ・ビデオ関連製品の海外調達業務に従事後、外資系ベンチャー企業の日本事業立上げに参画するために転職。その後、ロータリー財団国際親善奨学生として、バージニア州立大学ダーデン経営大学院に留学しMBA取得。卒業後、武田薬品工業株式会社 事業戦略部にて海外事業戦略立案に従事しつつ、土日を使い「キャリア教育の変革と普及」を掲げるNPO法人「JUKE」の共同代表(社会人サポーター代表)として活動中。(2010年8月取材当時)

盛りだくさんの休暇期間

―大学の休み期間はどう過ごされていましたか。

向こうは、オフは本当にしっかり休みをとるよね(笑) 社会人になってから、まとまった休みなんて滅多にないので、時間とお金が許す限り、いろいろなことをしました。ブラジルに行って現地のビジネススクールに通ったり、大学の別コースに通う生徒のつながりでバーレーンに行き、向こうの経済産業省の人とディスカッションをしたり、中東のファイナンスの考え方を聞いたりしました。

他には純粋に旅行で、大学の友だちとマチュ・ピチュに行ったり、エジプトで遺跡を見ながらナイル川クルーズをしたり、キヤノン時代の友人に会いにオランダに行ったり、カリブ海クルーズをしたり、カンクーンでひたすら大好きなスキューバダイビングをしたり、本当にいろんなことをしました。国内旅行にも行きましたし、夏休みは外資系戦略コンサルティング・ファームや外資系投資銀行でインターンも経験しました。

―盛りだくさんですね! そんな2年を共にした大学院時代の友人とは、今も交流がありますか?

本当にみんなが大変なときに助け合ってがんばったからね。今でも連絡を取り合っていますよ。9月の始めには、大学院時代の同級生であるインドネシア人と韓国人の結婚式がソウルであるので行ってきます!

日本人として危機感を持つ

―大学院卒業後の進路はどのように決断されましたか。

大学院の夏休みに、外資系コンサルティング・ファームと外資系投資銀行でインターンをしました。そのときに感じたのが、今まで日本で内需に基づいて成長してきた医薬品、化粧品、飲料などの産業が、もうこれから人口も減り続ける中で、そのための成長戦略として海外の新興市場に目を向け海外企業の買収なども含めて検討することが必要となるほど危機的な状況であることを改めて認識しました。そして、そういうものに関わっていきたい、と考えました。

関わり方はいろいろあると思いますが、僕は外部から戦略コンサルタントとしてではなく、会社の中で戦略作りをして、それを実際に実行していく、そんなことができる人になりたいと考えていたところ、武田薬品という会社に出会いました。武田薬品は、これから世界的企業になるために、会社自体をどんどんグローバル化していくという時期にありました。ボストンで僕のような海外の留学生を、しかもキャリア入社で採用するのは初めてだったようです。

武田薬品には優秀な研究者がたくさんいて、彼らが作った薬が患者さんに届くわけですが、そんな彼らの努力の結果を最大化できればという思いがありました。だから、ひとつは日本企業のグローバル化に関わりたいと思っていてちょうど良い会社があったというのと、もうひとつは、産業としても既にグローバル化している自動車やエレクトロニクスではなく、次の日本を引っ張っていけるのは何かと考えたときに、医薬品産業はそのひとつなのではと。

あとは、80年代は日本経済が急成長し、アメリカなど他の国々から「ジャパン・バッシング」を受けていていましたが、私自身は今回の留学を通じて、「ジャパン・パッシング」を感じました。皆が中国、インドに注目していて、日本に見向きもしません。留学生にも中国人やインド人は多く、ハングリー精神もあるため、日本人として危機感を持ちました。日本もがんばらないと! 日本で働く決意もしました。

―学生としても、教室の1列目で必死にノートを取り質問をするのは留学生ばかりというのを見て、負けてる! ヤバい! と感じています。

「Pay Forward」の考え方

―現在は武田薬品にお勤めの堀井さんですが、NPO法人JUKEという団体で、共同代表として、大学生向けのキャリアシンポジウム開催などのボランティア活動をされていますよね。それは何故ですか。

僕のモットーとしている「Pay Forward」の考え方ですね。自分がこれまで、さまざまな先輩や留学する際に奨学金を受けたロータリー財団など、多くの人のお世話になって今があるのを感じています。ただ、お世話になった先輩方に何かを返すのは難しい。ならば、僕にできるのは次に伝えることだと考えました。大学生に僕自身が感じたことを伝えたり、何かのきっかけになる行為のサポートをするために土日を使ったりするのは、僕なりの「Pay Forward」です。

例えば、宮崎さんと僕は10歳離れていて、その差はすごく大きく感じるかもしれません。でも、10年後を考えると、同じオフィスで働いていることも考えられるわけです。もちろん、自分の会社に来いとか部下になれという意味ではありませんが、僕としては仲間を作っているという感じです。別に僕のようになれとは思いませんが、僕や僕の仲間から聞いた一言で、学生の人生が変わるきっかけになれたらと。本当に小さなことで人生変わりますから。

スタディ・アクト・バランスが大切

―学生と接していて、今の学生に何か思うことはありますか

今、JUKEでキャリア教育というものに携わっていて、就活支援みたいに誤解されますが、学生生活はスタディ・アクト・バランス(勉強、課外活動、趣味・サークルのバランス)が大切だと思っているので、就活のための活動は意味がないと思っています。

今って、学生起業が多いですよね。でも、話してみると、全然ビジネスになっていなかったり、起業とは言えない「なんちゃって」なものも結構あります。そういうのを見ていて思うのは、部活で全然良いじゃんと。部活を一所懸命やっていれば、そこから学ぶことはたくさんあります。別にそれが部活であっても、世界旅行でも何でもいいと思いますが、偏差値主義の延長線上のような感じで「最近のイケてる学生は起業するらしい」というノリで起業するのは違うのではと言いたいですね。

また、就活に有利だからと起業したり、安易にビジネスプランコンテストに参加するのは薄っぺらく感じます。そんなことよりも、大学4年間が自分の人生で何なのかというのをきっちり考え、その上で何かひとつ、ここ面白かった! これ頑張った! というものを見つけて欲しいです。

5つのメッセージplus ONE

―それでは最後に大学生にメッセージをお願いします。

そうですね、5つほどあります(笑)

一つ目は、一歩行動を起こすということですね。頭で考えるばかりでなくとにかく動いてみようよと。

二つ目は、自分の土俵を作る、一歩レールを外れて自分の世界を持って欲しいということです。そのためには、自分ってどういう人間なのか知っておく必要があります。これは、就活で自己分析という言葉で使われますが、就活のためにというわけではなく、本当に大事なものなのだと思います。

三つ目は、大学生ってまだピュアですよね(笑)。だからこそ違う価値観に触れるのが大切だと思います。友人関係においても、日頃の行動範囲においても、自分のcomfortable zoneから出てみるのが大切なのではと。

四つ目は、1人でいいから10年後も20年後もずっと連絡を取り合い、そして語り明かせる友人を作ることです。その相手とは、同じ道を目指している人である必要はなく、根本の部分でお互いを切磋琢磨し刺激し合えるそういう仲間ができればいいなと。僕の場合は、大学時代語学が同じクラスで大学2年に一緒に短期留学をした友人がいます。彼は新聞記者という全く違うフィールドで活躍しており、全く価値観も違いますが、今でも会っては語り明かしています。

最後に、帰国子女の人たちにあえて言わせてもらえば、「語学が出来ること自体はアドバンテージですが、語学は所詮意思疎通のツールである」ということですね。重要なのは中身です。学業でも仕事でも趣味にしても、中身があることが大切です。

あとは、Have Funってことですね。大学生活をめいっぱい楽しんでください。

―堀井さんの大学生活は楽しかったですか?

めちゃくちゃ楽しかったですね!

即答ですね。そう答えられるような4年間にしたいです。本日は、ありがとうございました。

インタビューアから一言:

どれもメモをとるべきお話ばかりで、堀井さんの話術に引き込まれいつの間にか約3時間が経過していました。「日本の良さを外にアピールしたい」という一貫した思いで、企業側、大企業へサービスを提供する会社側などさまざまな経験された堀井さんのお話を聞いて仕事の選択肢の多さを改めて知りました。海外の仕事に関わるにも、方法はたくさんあるのですね。忙しい業務の間を縫って学生のための活動をされている姿を見て、今はお世話をしていただいている立場ですがPay Forwardの考えは将来決して忘れてはいけないと感じました。たくさんのアドバイスをいただきましたが、まずは「一歩行動を起こす」と「comfortable zone」から出る、を少しずつ実行していきたいと思います。

第1編はこちら>> 第2編はこちら>>
宮崎紗絵子。1989年生まれ。愛知県出身。高校1年の夏からアメリカ・カリフォ ルニア州のサンディエゴで暮らし、Rancho Bernardo High Schoolに通う。高校卒業後帰国し、09年早稲田大学法学部に入学。現在2年に在学中。大学では、法律サークルに所属。現在は、NPO法人JUKEのスタッフとして活動中。趣味は、ミュージカルなどの舞台鑑賞。