海外生活体験者・学生インタビューvol.116

interviewee_s_116_2_profile.jpg 石巻綾乃さん。1989年東京生まれ。父親の転勤で3歳から7歳までをパリ、11歳までをミラノで過ごす。いずれの場所でもフランス人学校に通い、帰国後は白百合学園中学に進学する。同高等学校を卒業し、09年東京大学文科Ⅲ類に入学。現在、教養学部地域文化研究学科フランス分科の3年生で、フランス外交、国際関係論を勉強中。大学ではフリーペーパー制作サークルに所属。11年後期から1年間パリ政治学院に留学予定。

みんな自分の国に誇りを持ってる

―3歳からパリに住んでたんだね。パリでの生活はどんな感じ?

現地の幼稚園に通ってたよ。フランス語は最初は何も知らなかったけど、聞いてるうちに話せるようになったんだと思う。今でも覚えてるのが、幼稚園選びのために幼稚園を回ってたとき、園児の女の子が話しかけてくれたの。お互い名前を教えあったんだけど、その子はMarieって子だった。でも、私は“r”の発音ができなくて。私が普通に「マリー」って言ったら「違う違う!」って何度も言われた(笑)

―イタリアでは、現地校じゃなくて、フランス人学校にいたんだ。 それはどういう学校なの?

フランス人学校の先生は、みんなフランス人だった。生徒は、フランス人でミラノに駐在してる人の子どもとか、フランスとイタリアのハーフとか、フランス語圏のモロッコやアルジェリア出身でミラノに駐在してる人の子どもとか。私の他に日本人はいなかったけど、日本人とフランス人のハーフがいたよ。アジア人はあまり多くなかったと思う。

フランス人学校だから、普通のフランスの学校と同じような勉強をするの。小さい頃からフランスやヨーロッパの歴史を教わった記憶がある。フランス文学とか詩の勉強もした。イタリア語は第一外国語扱いで、週に2、3回授業があった。イタリアにいた頃は、日本の補習校にも週1で通ってた。科目は国語だけだったけど、漢字の勉強とかしてたよ。

―フランス人やイタリア人は、日本人と比べてどう違うの?

フランスやイタリアの人は、知らない人と話すハードルが低い気がする。同じマンションの人だったら、エレベーターとかで気軽に話せるし、小さい弟を連れて歩いてると、会う人が、「可愛いわね!」って話しかけてくれたり。他にもスーパーとか、どこでも声をかけてくれた。

それから、フランス人はみんな自分の国に誇りを持ってる。日本ではそれが日常生活の中で見えないけど、フランスではフランスの有名な詩人の詩を毎週一個暗記させられたりした。そういう、ナショナリズムっていうか、教育はあったんじゃないかな。もしかしたら国民が多様だからかな。日本だとみんな一様だから、その必要がないのかも。

日本の良くないとこしか、目に入らなかった

―日本に戻ってから、困ったことや変だと感じたことはあった?

海外にいたときは不自由しなかったけど、帰国してから簡単な漢字がわからなかった。字も書き慣れてないから汚かったし。今は日本語の方が楽だけど、帰国した頃はフランス語で考えてた。寝言もフランス語で言ってたらしく(笑) けっこうフランス人モードだったな。でも、中学高校の成長段階で日本にいたから、今では日本人モードに形作られてると思う。

向こうの学校を離れたくなかったから、帰国してすぐは、日本の良くないとこしか目に入らなかった。例えば、ヨーロッパの街は景観が厳しく守られていて、統一感がある。古い建物もあるし、とても綺麗だった。日本はマンションも家も乱立してる。ごちゃごちゃしてあんまり綺麗じゃないなって。あと、路側帯。向こうはどんな小さい道でも必ず歩道があるのに、日本は線が引いてあるだけ。真ん中に電柱立ってることもあるし。なんで電柱をよけて歩かなきゃいけないんだろうって。

学校は女子校で、みんな大人しかった。いつも集団で動かなきゃならなくて、最初は慣れなかったな。授業も雰囲気が違ってた。イタリアでは、先生の質問に対して、絶対大勢の人が手を挙げて答えてたのに、日本では全然挙げないよね。なんで答え知ってるのに、誰も答えないんだろうって不思議だった。

私は、向こうではたまにしか手を挙げてなくて、「控えめすぎる」とか、「もっと授業に参加しなさい」って、よく言われてた。日本で同じ感じで手を挙げてたら、周りからすごく積極的な人だと思われて、それが意外だったな。あとは、授業中にみんな寝るのはなんでだろうって。今では私も普通にしちゃうけど(笑)

大学デビューしようとか、考えてなかったし

―大学生活はどう過ごしてる?

大学デビューしようとか、チャラチャラしようなんて考えてなかったし(笑) 文Ⅲは進振りも厳しいから、ちゃんと勉強しようと思って、勉強メインな感じ。ドイツ語を始めたり、仏検を受けたり。語学は授業もたくさん取ったよ。イタリア語も、帰国してからやる機会なかったから、もう一回やってみたりしてる。

旅行も好き。海外のいろんなところに行ってみたいっていう気持ちは常にある。日本国内もあちこち見てまわりたいな。普通は小学校で日本の地理や歴史勉強するじゃん? 私はそういうのやってないから、もっと日本のこと知りたいなっていうのはある。

―フランス科ではどんな勉強をしてるの?

フランス科では、フランスに関連するいろんな分野を学べる。文学、歴史、哲学、政治など、ジャンルが幅広くて、そこから自分のやりたいことに合わせて授業を取る感じ。国際関係をやるにしても、フランス科は一つの国に軸足置いてるから安定していて、自分には向いてると思う。私はフランス人学校でフランスの教育を受けてたし、フランスが自分の中で大きな比重を占めてる。

今はフランスの外交に興味があって、EUの中でフランスがどう動くかとか、アフリカの旧植民地の国々との関係とか、そういうことを勉強したいと思ってる。フランスがアフリカっていうコマをどう利用しようとしてるかとか。例えば、アフリカでの紛争に介入したり、国連の決議の場で自分の側に旧植民地をつけようとしたり、そのための援助もしたりしてる。それも時代とともに変化していて、今ではやすやすと紛争介入とかできないようになってるんだけど。

今年の夏からは1年間、AIKOM(東大教養学部の交換留学制度)でパリに行くんだ。現地にアパートを借りて、パリ政治学院の学生と一緒に授業受けるの。語学留学じゃなくて、普通の現地の学生が取ってるような授業に出られるよ。パリやミラノ時代の友だちとは、最近facebookで連絡取り合うようになって、向こうで会いたいねって話してる。

「また行ってやる!」みたいな(笑)

―卒業後の進路は考えてる?

まだ将来のことで迷ってるから、時間かけて考えたい。私は何を研究したいのか、まだ具体的に定まってないから、院には行かないかもしれない。そうしたら、海外に転勤があるような職種に就職できたらいいな。外務省に入るのも面白そうなんだけど、国際機関で働きたいっていうのもあるな。そんな感じで、今迷いに迷ってる。とにかく何か海外に関係あることをしたい。

―海外経験があってよかったことは?

日本語以外の言語ができるのは大きい。英語をやるにしても、ずいぶん助けられた。フランス人学校の英語の授業は、文法よりも会話メインだったし、先生も英語しか話さなかったんだけど、最初は訳がわからなくても“Repeat after me! ”みたいな(笑) ヨーロッパ系の言語なら、ゲルマン系でもラテン系でも、何個かやっていれば、他の言語を勉強するのが楽になるから、本当に助かったと思う。
それから、海外に住んでたことで、お互いの国の良さが見えやすくなった。最近思うことなんだけど、日本は安全なところがいい。中1くらいの子供が1人で歩いてても、大抵は大丈夫だよね。スリみたいな身近な犯罪も少ないし、犬のフンも落ちてない(笑) 好きなお店にも1人で出かけられる。外国人に対して身構えちゃうことはあると思うけど、差別みたいなものはないんじゃないかな。

―将来はまた海外に住みたい?

うん。でも、フランスやイタリアに固執してるわけじゃない。先進国でも途上国でも、行けって言われたら、どこにでも行くな。最終的には日本に戻って来るにしても、それまではいろんなところで暮らしてみたい。小さい頃に海外に住んでて、そこから途中で引き離されて帰国したから、「また行ってやる!」みたいな(笑)

帰国してからかなり長い間、日本は自分にとってはちょっと仮の住まいみたいな、ちょっと中高行って大学行って、社会的な立場を確立するための羽休めの場所って思ってたときがあった。また自分はどこかに海外に行くんだって思いがあったし、今でも機会があったら行きたいと思ってる。

―ぜひこれからも海外で活躍してください。ありがとうございました!

インタビューアから一言

パリ、ミラノというと、日本人が行きたがる観光地のイメージが。そんな素敵な街で幼少期を過ごしていたとは、なんと羨ましい! 私はどちらにも行ったことがなく、些細なところまで質問攻めにしてしまったのですが、丁寧に答えてくださり、ありがとうございました。普段は、お互い海外生活の話をすることがなかったので、今回のインタビューで、また新たな一面を知ることができました。夏からのパリ留学頑張ってください!

interviewee_s_116_3_profile.jpg 儀賀真由子。1990年大阪生まれ。生まれてすぐに千葉へ引っ越す。8歳から12歳までアメリカ合衆国ロサンゼルスに滞在。静岡市立豊田中学校、静岡県立静岡高校を卒業。09年東京大学文科Ⅲ類に入学。2年間の教養学部を経て、現在教育学部比較教育社会学コースの3年生。大学では、バレーボールサークル、フリーペーパー作成サークル、吹奏楽団など、様々な活動に挑戦中。