帰国子女大学入試・合格体験記vol.58

浅野卓也さん。1989年東京生まれ。小学校、中学校と地元の公立校に通う。04年、9年生の開始に合わせ渡米。アメリカコネチカット州のGreenwich High Schoolを卒業後、帰国する。現在は早稲田大学教育学部複合文化学科に在籍し、3年目を迎える。第2外国語はスペイン語を選択。課外活動ではゴルフサークルに所属し、年2回のリーグ戦に向けて、日々練習を重ねている。

【早稲田大学教育学部複合文化学科合格】

<はじめに>

小学校から高校まで、すべての学生生活を公立校で過ごしました。つまり、大学受験まで一度も受験というものを経験したことがなく、唯一の大学受験も帰国子女枠での特殊な受験となりました。自身の周りに限って言えば、帰国子女の中でも、このようなバッググラウンドを持つ学生は、実は多くないという印象を持っています。以下で記す私の経験が、今後受験する方で似たような境遇にある方に役立てば幸いです。

<帰国前>

基本的には難関私立大学の合格を目標としていたので、SATⅠやTOEFL(iBT)などの統一試験の点数が高ければ高いほど有利であるという認識で対策をしていました。私にとって、SATⅠもTOEFLも非常に難易度が高く、かなり苦労しました。形としてはSATⅡも受験しましたが、正直なところ使いものになる点数が取れたとは思いません。慶応大学を目標とする人は、SAT全般における高得点が必須だと思います。

~SATⅠ対策~

Mathのセクションで高得点をとることは、SATⅠ全体の点数アップに必須でした。私は数学に対する苦手意識が強かったのですが、通っていた個人塾で徹底的に対策をして、満点には届かないものの、使える点数として結果を残すことができました。問題の傾向を頭に入れて、電卓をいかに上手に使うかが重要です。

Readingのセクションでは、間違いに対して減点があることを、特に考慮する必要がありました。短い時間で多くの問題を解かなくてはならない状況で、なるべく多くの問題をこなしたい。しかし、問題数をこなすことによって、間違いが増えることは絶対に避けなくてはならない。非常に難しいと思います。Vocab問題のための対策として単語も暗記していましたが、パッと見てできる問題だけ解き、読解問題に目を通すことを優先していました。

Writingのセクションは、まさに時間との戦いでした。Essayは得意でしたが、いかに早く文の構想を立てるかが鍵でした。ある程度型にはまった構成でも、結論がはっきりしていて、それを支えるディテールが明確であれば、点数がもらえると思います。他の選択問題は、Mathと似たところがあって、傾向を見抜くことが重要でした。その中でいかにミスを最低限に抑えつつ問題数を解くかです。

~TOEFL(iBT)対策~

ReadingはPC上で行わなくてはならないので、一番苦労した記憶があります。ライン引きもできなければ、要点を書き留める時間もありません。先に問題に目を通したうえで、文章の中から答えを探していくという作業に加え、文章の中の一番伝えたい部分を理解するという意味で、最初と最後のパラグラフは熟読していました。

Listeningは日常生活が活きる部分でもあり、付けが回ってくる部分でもあります。何となく理解して、いざ問題を目の前にすると、厳密な理解が出来ていなかった。そんな経験が多々ありました。そういう意味でも、問題を想定しながら、必要と思われるディテールを自分なりにメモ書きするという作業をしていました。

Speakingはとにかく騒がしい。そして、信用ならないマイクに話しかけるということもあって、「しっかり」「はっきり」が重要でした。と言っても、恥ずかしさは拭い去れなかったので、マイクを手で覆って、その中で自分なりにはっきりと話していました。出される問題の難易度はそこまで高くないので、嘘でもいいから短時間で話をまとめること。問題に対して適切な回答かどうかを確認しながら解く必要もあります。

WritingはEssayが2問。上述したSATのEssayと同様で、構成が鍵だったと認識しています。問題に対する自身の答えを明確に提起することと、それを強化するディテールを数個あげることを徹底していました。また、そのディテールには具体的な例を盛り込むことを意識していて、O.Henryの短編小説の内容を使い回して、文章を組み立てていた記憶があります。

<帰国後>

大学受験をするに当たって、経済学部や商学部に照準を定めていましたが、正直なところ何かやりたいというよりは、早稲田大学に行きたいという気持ちが強かったです。そのため、併願可能な商学部、社会科学部、教育学部の3学部を受験し、教育学部のみ合格しました。教育学部は他大学でいうところの教養学部のような部分があり、自分次第で様々な学び方を選択できるのではないかという理由で受験しました。

早稲田大学は、英語、現代文、日本語小論文の筆記試験と、学科・専修によって面接が行われます。それらの対策はすべて予備校で行いました。クラス分けのテストでは下の方のクラスに振り分けられ、自分の中にあった学力へのコンプレックスがさらに強まったことを鮮明に覚えています。遊びはできるだけ避け、漢字や英文法の勉強と小論文の書き直しを集中的にやりました。

英語は、帰国前に行ってきた統一試験等とは全く異なる、文法を中心とする対策が必要でした。過去に受験経験のない私のような者にとっては不得意分野とも言えますが、集中的に復習をし、間違えやすい部分を明らかにしていくことで結果は出ると思います。比較的楽しく、苦にならずに勉強ができたと思います。

現代文は、実際の過去問などを扱い始めると、答えが曖昧な問題というのがいくつか出てきた印象があります。大学から正式な回答が発表されていないことから、先生方の中でも答えが割れていることがありました。しかし、それらは逆に、各問題の答えに対する根拠をしっかりと考える必要性を気付かせてくれたという点で、悪い経験ではなかったと思います。

小論文はとにかく書き直しを再提出し、量でレベルアップを図りました。毎回先生方にコメントを頂いていたので、それを参考に、自分なりにどのような小論文が評価されるのか考えながらやっていました。基本的には、評価はかなり厳しくつけられたので、どれだけ良い評価をもらえるかを目標に、ただひたすらに書き続けました。漢字も同様で、ただひたすらに覚え続けていました。

<おわりに>

私の合格までの道のりは上述したようなものでした。しかし、これらは滞在国や滞在年数によって変わりますし、その日その時の出来や運なども大いにあると思います。もちろん努力は実を結ぶと思いますが、帰国子女入試には様々なパターンがあることを理解する必要があると思います。また、自分の経験で心残りに思うことが2点あり、それは是非今後受験をされる方に参考にして欲しいです。

1点目は、海外生活では浸かれるだけその地に浸かるべきだということです。現地での統一試験の勉強は確かに必要ですが、ネイティブに近い環境に身を置くことは、語学力向上には最善の策だと思いますし、一度帰国してしまうと絶対に経験することはできません。例えそのとき辛くとも、意味のある辛さだと強く感じます。

2点目は、将来何をやりたいか自分で考え、調べることです。私のように入りたい大学を考えるより、何をやりたいかを考えるべきです。もちろん、どんな環境下でも出来ないことはないと思います。しかし、どのようなことをやりたいか明確にすることで、受験の先の大学生活が充実してくると思います。さらに言うと、その後と将来のビジョンも描きやすいと思います。