海外生活体験者・社会人インタビューvol.113~後編~

interviewees_s_110_profile.jpg 清水宏美さん。1984年生まれ。東京大学出身。大学4年次を休学し、約10ヵ月間ケニアにてNGO研修を行う。研修先は、NPO法人AIESECを通して見つける。現地では、スラム内のCBOを自ら研修先として開拓し、資金調達活動を行う。08年株式会社ワークスアプリケーションズに入社。リクルーティンググループに所属している。

まさかの人事配属!

―それでは、就職される際に、ワークスアプリケーションズと他のベンチャーで迷われていたとのことですが、ワークスアプリケーションズを選択された決め手は何ですか。

決め手は、裁量権の大きさと仕事の規模感ですね。裁量権の大きさに関しては、私が働いていたベンチャーは何でもやれたので、当時は同じくらいかなと判断しました。そこで、どうせ自分の裁量でやれるのであれば、案件の規模が大きい方がいいなと考えました。裁量権の大きさと仕事の規模が両立するところって、なかなかないんですよね。両方を良いとこ取りできるのが、ワークスアプリケーションズだったんです。

―現在は、ワークスアプリケーションズで人事の仕事をされていますよね。

営業に行きたいと言って入社したんですけどね。配属先は、入社後にある適性を測る研修の結果と本人の希望をふまえ、ドラフト会議で決まるのですが、その結果が人事でした。もう、びっくりしましたよ(笑) 人事は第3希望には入れていましたが、まさか配属されるとは思っていなかったので(笑)

―必ずしも希望の配属先ではなかったのですね。そこで現在まで3年続けられているわけですが、気持ちの切り替えはどのようにされたんですか。

最初の時点で切り替えはしていました。入社前は「営業じゃないならやめる!」とか言ってたんですが(笑)、入社前に人事社員と接する機会があって、仕事内容が面白いことは知っていました。加えて、仕事内容が他企業の人事では行われていない特殊なものだなと。

アップルやグーグルみたいに、海外の成長企業くらいの勢いで人採るんですよね。そういう採用って他ではないし、日本ではやりにくいんです。アメリカなら、成長企業に人がどんどん集まってくるんですが、日本では……。ワークスがなぜ採用に力を入れているのかというと、普通にやっていても必要な分は採用できないからなんです。日本の人材市場が新卒も中途も新興企業に不利なように構造化されているので、その中で戦わなければいけない難しい状況があります。ただ、それができないとワークスの理念を達成できないんです。それを考えたときに、人事の仕事は非常に面白く、会社の根幹を支えるものだと。

普通の人事は、集まってきた母集団に対して見極めるだけですが、ワークスの場合は、まず集客をしなければいけません。マーケティングができなければいけないんです。さらに、マーケティングした相手が自社に入ってくるので、その相手の活用を見据えたマーケティングが要求されます。ただのマーケッターになってもいけないんですね。難しいけど、面白い仕事なんです。配属された時点でここまで考えていたわけではないですが、面白い仕事だから頑張ってみようと思いました。

就活って難しいよねという話

―私がワークスアプリケーションズという会社名を知ったのは、事業内容ではなく面白いインターンをやっている会社としてでした。おそらく大学生の多くがそうですよね。

ワークスは本業での広告宣伝費をほとんどかけていないので、学生への認知はゼロの状態からやらなければいけません。認知ゼロならまだいいですが、実際にはこの規模でたくさん人を採るので、大量採用だとネガティブに言われてしまうこともあります。離職率は10%以下なので、健全なんですけどね。

―清水さんは人事として日頃から大学生と接していらっしゃいますが、今の大学生に思うことはありますか。

いろいろありますね(笑) いつも学生に言うのは、就活って難しいよねという話です。働いたこともないのに、会社を決めるなんてすごく難しいじゃんって。そこで、会社を選ぶ際に、なぜそうもたやすく企業のイメージ戦略を受け入れるのか、と思います。サッカーできないのに、サッカーチームを選んでいるようなものですよね。就活では、仕事やったことがない学生が、近似体験としてサークルとか学生団体での話を持ってきますが、そういうときにその組織やビジネスとは何かについて、なぜもっと知ろうとしないのかなと。安易ですよね。

私の場合は、ビジネスや組織というものをケニアやベンチャーでの経験を通して自分なりに学びました。自分の軸を作るのに2年ほどかかりましたが、自分の頭で考えた結果だから、すごく納得しているんです。非常に泥臭くて、決して賢い方法ではなかったですが。でも、大学生を見ていると、それをしない人が多い。別に2年かけろという意味ではなく、ビジネスって何だろうとか、仕事って何だろう、組織って何だろうとか、そういう部分を理解しないままに、かっこよさに憧れて選んでしまうと、日本にとっても損失だなと感じます。

そこで思うのは、なぜ良い大学の学生は既にブランドを持っているのに、またブランドを求めるのだろうという点です。

―うーん(笑)

人生のご褒美みたいに捉えちゃう

唸ってますね(笑) 自分の人生のご褒美みたいに就職先を捉えちゃうと、もったいないなと思うんですよね。良い大学に入ったから良い企業に、という等価交換をしているつもりなのかな。でも、なぜそんなに自信がないのだろう……と。せっかく良い大学出てるのだから、キャリアではもっとチャレンジすればいいのに。そういうことを良い大学の学生さんには思っています。

―いろいろと考えるところがあります。なぜみんなして大手大手!と言うのか……。

受験が偏差値で決まったように、就活も偏差値で行われていますよね。周りに対する自己顕示欲というか、自分の軸がないから、世間の軸や、いわゆる偏差値的な勝ち負けで決めてしまう。その勝ち負けは、恐らく就職後は通用しないんですよね。

あとは、私はあまり社会貢献派ではなく、好きに生きればいいと思いますが、仕事をしていると、どうしても社会貢献を考えてしまいます。ワークスは、非常に社会貢献度が高いんです。ワークスがないとできないことはたくさんあって、本気で日本を変えようとしている企業だなと。入社時は、社会貢献って胡散臭いなと思うくらい興味がありませんでしたが、実際働く中で社会貢献があってよかったなと思うようになりました。

採用って怖い仕事で、それは人の人生を巻き込むからなんです。間違った人を入社させてしまったら、巻き込み事故もいいところじゃないですか(笑) だから、極力学生さんには自分で考えてもらいます。自分で考えてもらっても、やはり関わる以上には、ブラック企業には入社させたくないじゃないですか(笑) だから、自分が学生さんに売り込める企業であることが大事です。

かつ、入社後は仕事が難しくて、私は何度も折れそうになったんです。それでも、自分の仕事が社会にとってプラスの価値があるというのがあると、凹みそうになったときに頑張れる材料になります。どの企業も社会にとって価値はありますが、私が言う社会貢献は、「今何か世界を変えようとしているか」という意味の社会貢献です。

力をつけて好きに生きていたい

―人事の仕事の難しさややりがいがよくわかりました。それでは、清水さん個人のお話を伺いたいのですが、今後のプランは立ててらっしゃいますか。

長期的なプランはわかりません。短期的には、この場所で頑張ろうと思っています。国内でのブランディングに加え、海外採用も始まっているので、そちらにも関わっていきたいですね。今はグローバルの土壌がない状態なので、それを作る段階は面白いです。

―10年後のご自分の姿は想像できますか。

できないですね(笑) 子どもはいるのかな。力をつけて好きに生きていたいですね。その中で自分のライフワークが見つかったら、それに没頭しているかもしれないし、面白い仕事を見つけたら、そこで仕事をしているかもしれないですし。まあ、面白いことをやっていたいですね。

―面白いことをやっていたいというのは素敵ですね。現在は、仕事が非常にお忙しいとは思いますが、毎日湧いてくる大量の仕事をこなしながら、気持ちを切り替えたり、自分のことを考えたりという時間はとっていますか。

私、結構ドカンと休みをとって旅行に行きます。このインタビューの一週間後も10日程休暇をとります(笑) 休めるときは休んで旅行に行きますね。1年目は有給を使いませんでしたが、2年目は19連休をとり、小笠原の母島にひとりで2週間以上滞在しました。大量に本を持ち込んで、普段追いついていないインプットをし、静かな島なので、自分でいろいろと考える時間を意識的にとりました。3年目も、休みに振りかえる時間をとりましたね。

―旅行は「時間がある学生時代にやっておけ!」と言われる代表格ですが、清水さんは19連休で旅行という実績があるわけですね。

ウチの会社が休みやすいというのはあるかもしれませんが、別に大人になったら遊べないというのは嘘だと思うんですよね。大人になってからの方がお金もあるし、実力があれば休みもとることができます。結局、休みがとれないような働き方をするのがいけないのかなと。

別に学生時代は旅行するなというわけではないですけどね。「学生時代は心の内側に旅をしなさい」という言葉を聞いたことがありますが、外にも内側にも両方すればいいのではないでしょうか。心の内側を旅するのは大事だし、ただ、外側に出て刺激をもらわないと知れないこともたくさんあるので、内外問わず旅をすればいいと思います。旅行もただ単にレジャーで終わらせず、いろいろな探求をすればいいのかなと。

好きな言葉が2つあります

―では最後に、清水さんのモットーを教えてください。

ひとつは、「半径1メートル以内の人に誠実に生きる」です。結局、人が生きていく中で影響を与えられる人は、私が実際に話していたり、触れていたりする人くらいなんですよね。それが、例えばメディアに載ったとか、媒体を通した時点で私じゃないと思うんです。私が私として生きる中で大事なのは、今接している周り1メートルの人かなと。

そしてふたつ目が、ケニア時代の友達が言っていた、” I don’t care what I cannot change.” という言葉です。「変えられないものは気にしてもしょうがないよね」というのは、物事を諦める言葉ではなく、自分の世界を生きるときに、すごく自由になれる言葉だなと思います。自分が変えられるものに気を払っていれば自由になれる。この2つの言葉があれば、自由に自分らしく生きていけるかなと。

―本当に貴重なお話、ありがとうございました!

インタビューアから一言

約1時間とても濃い時間を過ごさせていただきました。働くということに真剣に向け合わなければいけない今、清水さんがケニアでの経験を通して働きたいと決意するに至った経緯はとても勉強になりました。どれだけ自分の頭で考えるかで、その結論も後から揺らぎづらいのですね。大学生に対する本音もお話いただき、非常に考えるものの多いインタビューでした。素敵なお話をありがとうございました!

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interviewees_s_251_profile.jpg 宮崎紗絵子。1989年生まれ。愛知県出身。高校1年の夏からアメリカ・カリフォルニア州のサンディエゴで暮らし、Rancho Bernardo High Schoolに通う。高校卒業後帰国し、09年早稲田大学法学部に入学。現在3年に在学。大学では、法律サークルに所属。大学2年の夏は、早稲田大学とKUMONの産学連携プロジェクトに参加し「日本の子育てをもっと元気に!」を掲げて活動。また、夏と春の2度、NPO法人JUKE主催のジョブシャドウィング(一日かばん持ちインターン)に参加。現在は、ジョブシャドウィングプログラム、RTN Projectでのインタビュー活動を通して知ったNPO法人JUKEのスタッフをしている。