海外生活体験者・学生インタビューvol.146

interviewee_g_143_profile.jpg 小川雄さん。愛知県出身。地元の中学校に入学して1年が過ぎた04年5月、インディアナ州Seymour Middle Schoolに編入。05年8月にSeymour High Schoolに入学し007年1月日本に帰国後、愛知県豊田西高校に編入した。09年4月に中央大学法学部国際企業関係法学科に入学。大学入学後はタイのNGOでインターンシップを行ったり、インドのマザーハウスでボランティアをしたりと、積極的に活動の幅を広げている。学生団体であるアジア法学生協会にも所属し、他大学との交友関係も広くもつ。

―本日は、インタビューに応じてくれて、ありがとうございます!

私なんかでいいなら、いつでも答えますよ(笑) でも何を聞きたいの?

―今日は、子供の頃の話やアメリカ生活を振り返って、今感じていること、そして、今現在持っている将来の夢や目標、その実現のために大切にしていることをお聞きしたいと思っています。

なんだか深いですね。。。

―(笑) そんな堅苦しくならず、ありのままを取材したいと思っていますよ!

日本人に戻ることを許された日

―さて、アメリカでの思い出はどんなことがありますか? 聞かれて最初に思いつくことは何ですか?


そうですね。週に一回日本人学校で、日本人の友人と日本語を話すことですね。一週間に一度だけ、「日本人に戻ることを許された日」という感じがして、楽しみでした。

―ということは、普段は現地校に通っていたのですね?

そうです。私以外には日本人はいませんでした。登下校で一緒にバスに乗り、一緒にランチを食べ、一緒に授業を受けるのは、大抵アメリカ人。もう、生きていくためには、英語の習得が必須でした。今思うと、かなり実用的な語学力を身につけたのですから、非常に恵まれた環境だったと思います。

―アメリカのクラスメートは日本人の小川くんを毛嫌いしたということはありませんでしたか?

それは全然ありませんでしたね。いい友人に恵まれたと思います。もともと多様な人種の人々が生活する国ですから、違和感は少なかったのでしょうし、日常の会話やコミュニケーションもとれていました。1年が過ぎた頃には、自分の両親よりも英語が上手に話せていましたので、両親と一緒にホームパーティーに行くのが恥ずかしかったぐらいです。

―それはどういうことですか?

つまり、自分の方がうまく話すことができるのに、両親の英語のレベルと同じレベルだと相手方は勘違いしてしまうのです。それがもどかしかった。いわゆる反抗期だと思います(笑)

―なるほど。

広大なトウモロコシ畑が広がる

でも、やはり両親には感謝していることが多いです。父は普通のサラリーマンですが、私を自然の中で遊ばせようと配慮してくれました。カナディアンロッキーやイエローストーン国立公園に連れて行ってくれましたから。自然に対する親近感はここで培われたなぁと思います。

そもそも、私がいたインディアナ州は、車を持っていないと生活できないほどの田舎で、広大なとうもろこし畑が広がっている場所です。この生活環境も自然への親近感を養ってくれたと思いますよ。アメリカは、ニューヨークのような都会というイメージを持っていましたが、実際には田舎もある。アメリカの広さ、多様性を強く実感することができました。

―そういう環境の中で、小川くんの感性は磨かれていったのですね。

アメリカ人は自己主張が激しい?

―アメリカでの生活を通して、自分が変わったと思うことはどんなことでしょうか?

引っ込み思案でなくなったこと! 幼少期は静かで、言われたことを素直にやる子供でした。自分でいうのも変だけど、育てやすい子だったと思います(笑) でも、アメリカに行ってからは、自己主張をしないと生きていけない生活になったので、奮闘しました。泣くことはなかったですけどね(笑)

こうした生活を通して、集団の中での自分の立ち位置を見極めようという姿勢が生まれたと思います。今は自己主張しよう、今は意見を言うのを控えようと判断するようになったので。

「アメリカ人は自己主張が激しい人たち」と考えている日本人が多いように思うけど、それは単純に考えすぎだと思います。実際には自己主張が苦手な子供だっています。確かに、学校や先生は自己主張をすることを求めてくるけれど、全員それができるわけではないのです。私はそういう教育環境の中で、自分なりの自己主張の仕方を確立していったと思います。

―それはおもしろい視点ですね。「○○人は○○な人だ」と単純化した方が分かりやすいと思います。しかし、それはその人自身を見ようとしない考えなのだと、話を聞いて思いました。

ずばり! その通りだと思います。異なる人を受け入れるということの出発点は、ここにあると思っています。どんな人かを見ようとせずに判断することは、非常に危険な考え方のように思いますね。

羊のもふもふ感に囲まれて

―インタビューを通して小川くんの過去を取材してきましたが、ではここから未来のことを聞きたいと思います。単刀直入に聞きますが、将来の夢は何ですか?

将来の夢は漠然としているのだけど、国際開発や国際協力に関わる分野に進みたいと考えています。やはり、アメリカで生活した経験が大きく影響しているように感じます。とりわけ、国際開発の中の社会開発、特に教育分野に関心があります。この点は、大学2年次にタイの貧困村落に行ったこと、インドに1か月行ったことに起因していると思います。貧困地域の生活水準を上げること、そのために人材を育てることの大切さを痛感しました。

―なるほど。国外に視点を置いているのですね。

確かに海外に興味がありますよ。でも円満な家庭を築くのも夢なのです。実はここも私としては非常に大切にしているところです(笑)

―円満な家庭ですか!? 国際協力というグローバルな規模から一転して、ドメスティックな夢を示してくれましたね(笑)

私の両親はとても仲が良くて、今も週に1回か2回はどこかへ遊びに行っているようです。ハイキングに出かけたり、イチゴ狩りに行ったり、潮干狩りをやったり、とても楽しそうなのです。こんな夫婦仲に自分もなりたいと思います。

あと、羊飼いにも興味がありますね。。。

―えっ!? また奇抜な(笑)

友だちからもよく笑われます。でも、私は本気ですよ! あのもこもこした体毛を全身で感じつつ、巧みに牧羊犬を操り、アルプスの大自然のもとで暮らす羊飼いというライフスタイルには、強い魅力を感じています。羊のもふもふ感に囲まれて毎日癒しとのんびりとした生活を営むことをやってみたいと思います。

―なるほど、もふもふ感ですか(汗)

すいません、突拍子もない夢を挙げてしまって。しかも、これら3つには相関性はあまりないですね(笑) 具体的には、まだまだ将来の夢を決めていないのですが、とにかく、自分のやりたいことをやっていくために、できることから始めていきたいと思っています。

大切なのはその人自身を見ること

―ところで、小川くんのモチベーションは何ですか?

いろんな人に会うことですね。

―いろんな人とは?

自分とは異なる考えをもつ人、自分にはない感性・知識をもつ人ですね。アメリカでの生活やインドへの旅で強く感じましたが、自分の常識は常識ではないのです。ですから、いろんな人と出会って、自分の考えの幅を広げていくことは、とても楽しいです。もちろん、自分の知らない考えを受け入れることがストレスになることはありますが、それ以上に自分の人生の幅が広がったように感じます。

―考えの幅を広げるには海外に行くことが大切なのでしょうか。

もちろん海外に行くことは大いに意味があると思います。でも、考えの幅を広げるために必要なことは、それだけではありません。日本国内でも北と南で人々の感性は大きく違います。「秘密のケンミンショー」という番組を見ているだけでも面白いですよ。一番大切なのは個人、つまりその人自身を見ることなのだと思っています。

―本を読むことでも知らない世界を知ることができますよね。

そうです。本を読んで知的に思考を広げることも大切ですし、体験をしながら体を通して、新しい考えを自分に取り込んでいくことも重要なことだと思います。要するに、バランスを保つこと、これを忘れてはいけません。いろんな人に会うことができるシチュエーションを作ること、これが私の将来のビジョンですし、自分のモチベーションになっていることですね。

Seymour Middle School :
http://sms.scsc.k12.in.us/
Seymour High School :
http://shs.scsc.k12.in.us/

インタビューアから一言

小川くんとはよく学業のことや将来のことを話します。しかし、アメリカでの経験や幼少期のことなど、今の人格形成に至った経緯を深く聞いたのは、今回のインタビューが初めてでした。やはり、過去の体験や人との出会いが、自分の人生の指針になるようです。私も進路については真剣に考えなければいけないと思う次第です。拙いインタビューアでしたが、これからは、もっと的確な質問を投げかけて、インタビューウィからうまく回答を引き出すスキルも身につけたいと思います。本日は貴重な時間をありがとうございました。

interviewees_s_241_profile.jpg 神谷貴大。1989年愛知県生まれ。現在、中央大学法学部政治学科3年。大学2年のときにJICA Vietnam法整備支援プロジェクトのインターンシップに参加。The Asian law Student Association(ALSA)に所属しており、現在は11のALSA加盟国・地域の法学生を日本に招き、学術活動・文化交流活動・全体総会を行うAsian Forumを主催。企画の副委員長を務める。ゼミでは国際政治と現代思想を学んでいる。また塾講師として主に小中学生の指導にもあたる。