海外生活体験者・学生インタビューvol.157

interviewees_g_157_profile.jpg 舟木園実さん。福島県出身。91年から93年まで、親の仕事の関係でアラスカへ。一旦帰国し、その後94年から97年までアメリカ・シアトルへ。帰国後は7年半日本の学校へ通い、04年に再びシアトルへ。08年にRedmond High Schoolを卒業し帰国する。09年上智大学外国語学部英語学科に入学。現在はIAESTE Japan関東地区学生委員会(国際インターンシップ斡旋団体)でボランティア活動に励む。

どちらの国に帰国するのか

―舟木さんの海外在住歴ってまさに「行ったり来たり」っていう感じだね。

うん。両親の仕事の都合で本当に日本に戻ったり、アメリカに戻ったり。どっちの国に対して「戻る」って使えばいいのか分からないぐらい(笑)

―行ったり来たりというのは辛くはなかったの?

もちろん、しばらく一定の場所に住んでいればそこに馴染んでしまうし、離れるのは辛かったかな。だって、例えば東京から千葉とか、日本でよくある「引っ越し」なら会おうと思えば会えるけど、国がそもそも違うからね(笑)

その都度、その都度、新しい友だちができるのはとても楽しかったし、「どんな友だちができるのだろう」って、わくわくしながら新しい土地に行くことはあったけど、同時に別れなきゃいけない友だちもいるから。小さいときなんて、メールでやりとりとかしないから、特に辛かったかも。中学で日本からアメリカ行くというのも、なまじ成長しちゃっているから、感極まったところがあるかな。でも、逆にアメリカの高校が楽しかったので、日本に戻るのが辛かったりもしたかな。

―日本に戻るのが辛かった? そんなにアメリカの高校楽しかったんだ。

うん。すごく楽しかったよ。英文を読むスピードが現地の子と全然違う、そういうギャップやショックは経験したけど、すごくゆっくり生活ができていた気がする。自由な時間が多かったのかな。もちろん、日本の学校にずっと行っているわけじゃないから、比較できないけど。でも英語力に自信あったし、アメリカの高校生活は楽しかったよ。

深夜の2時、3時まで勉強して

―英語力に自信! すごいね。どうやって勉強したの?

マンツーマンの英会話塾に、日本にいる間行っていたから。両親が「せっかくアメリカでの生活を経験しているのだから、忘れたらもったいない!」って(笑) それでもアメリカに行ったら、さっき言ったみたいにギャップ感じたけどね。

―舟木さん、英語の発音綺麗だもんね(笑)

またまた(笑) でも、発音とか言葉が分からないとか、そういう問題よりも、単純に「スピード」が大変だったかな。先生にドサって教科書とかプリントとか渡されて、「明日までこれだけ読んできなさい」「この教科書を読まないと授業についていけません」って言われたり。だから高校1年のときは、深夜の2時、3時まで勉強して、必死に課題をこなしていたよ。そのおかげで1年間だけでESLを抜けられたしね。

―……(絶句) すごく勉強したんだね。

あれ? 今私そんなに勉強するタイプに見えないって思ったでしょ!(爆) でも本当にすごく勉強したかな。あの時は苦しかったけれど、今思えばあの時頑張ったから今の自分があるって思えるかな。今も大学の授業でどさっとプリント出してくる先生とかいるけれど、クラスメートが「うわー、いっぱいあるー」って言っている中で、私は「こんなのなれっこだもん」って思ってるから(笑) いっぱい読んでいっぱい勉強してきたから、量に圧倒されるっていうことはまずなくなったよ。

―いっぱい文章を読みたいなら、ぜひ法学部へどうぞ!(笑)

「なんでやりかえさなかったの?」

―上智の外国語学部英語学科にしたのには、そういう理由もあったんだね。

うん。やっぱり慣れていることをやるのが一番だと思って。それに、私って文章に関しては英語派なんだ。上智の外国語学部英語学科受けたのもそれが理由の一つ。英語エッセイと英語解釈、リスニング、そして面接が試験内容だから。面接ももちろん英語。つまり全然日本語がないの。日本語に自信がなかったっていうわけじゃないし、日本では受験するつもりで勉強していたし。でも、やっぱり直前まで慣れていた英語がいいかなって。

―なるほど。日本では受験する予定だったの?

うん。中学から高校受験ね。だから普通に塾通ってたよ。12時過ぎに帰って来る日々。そういう疲れちゃう学校生活と、いじめの問題とか間近で見てきたのもあって、「アメリカ行くよ」って親に言われたとき、ちょっぴり嬉しかったっていうのもあるかな。

―でも、待っていたのは2時、3時までの勉強と(笑) いまいじめの話が出たけど、アメリカではそういうことなかったの?

うーん。。。日本である「仲間はずれ」みたいな、陰湿なタイプのいじめはなかったかも。もっと直接的なことかな。

―直接的というと?

Martin Luther King Dayに、高校で全校集会があったんだけど、その時アジア人の悪口を言っていた白人の子に背中蹴られたことがあるの。

―えっ!? 激しいね……。しかも、Martin Luther King Dayにやるとか、確信犯的なものを感じるね。

うん。それでもう怖くて、怖くて。校長先生に呼ばれて、「どの生徒に蹴られたのか教えなさい」って、生徒アルバム出されたりして。でも、私蹴られたとき怖くて振り向けなくて、後で何されるかも怖いし。それだから「教えられない」「できない」って言ったのね。

先生は「なんでやりかえさなかったの?」って聞いてきて。「アメリカでは、あなたの文化と違ってやりかえすのよ。だって間違ったことされているんだから!」って言われたの。それが一番カルチャーショックだったかもしれない。すごく熱い先生で、そのあと全教師宛てに、メールでこういう問題があったって送ってくれて。それで異文化に触れたというか、何か自分が強くなったなって感じた。

―すごい経験だね。やっぱりアメリカはいろんな人種が集まっているから、差別は少なからず起きるのかな。

上智は私に合ってるかな

―舟木さんはそれでアメリカが嫌いにならなかったの?

それで嫌になることはなかったかな。アメリカへの憧れの気持ちもすごく強かったし、この蹴られたことだって、ある意味では自分の強みになったと思う。文化と文化の衝突を間近で見られて、経験できたっていう強み。

―そんなにアメリカが好きだったのに、日本の大学に来たんだ。

うーん。。。それはほら、学費とかビザとか、わりとリアルな事情があって(笑) でも、日本も嫌いだったわけじゃ全くないし、上智って国際的だし、私にあっているかなって思ったの。

―その上智大学での生活、いかがですか?

すごく楽しいよ! 同じような環境で育ってきた人がいるから、話が合うし、色々な文化に触れられるっていうのは、日本の大学の中でも特にすごいと思う。でも実際は、帰国子女はあんまり多くないし、留学生はFLA(国際教養学部)にしかいないし、そこまで国際的じゃないかもしれない(笑)

―東大の法学部なんて、帰国子女片手で数えられるほどしかいないのに……。

それはそうかもしれないけど(笑) 帰国子女は、確かに数の上では多いけど、私みたいに海外生活が長い帰国子女って、結構珍しいの。英語学科の中でも、学力とかで3つのレベルに分かれちゃうし、それで交流する機会っていうのも、大分減っちゃうかな。

先生の熱さが忘れられなくて

―それじゃあ、帰国子女の悩みであるこの質問。ずばり、学力の差は感じた?

ところどころ感じるところはあるけど、私の学科は英語学科だから、そこまでじゃないかも。むしろ、もっと自分よりできる人がいたと思っていた(笑) いろんな意味で、想像していたのとは違うかな。でも、すごく満足しているし、毎日楽しいよ。

―大学を卒業したら、将来何になりたいとか決まっているの?

まだ具体的な職業は決めてないけど、今は教育学に興味があって、教職課程をとっているよ。日本とアメリカという2つの国で義務教育を受けてきて、色々感じるものがあったから。それに、あの「背中キック事件」のときの先生の熱さとかも忘れられなくて。教師の現実とかを教職課程で聞いていると、ちょっと幻滅しちゃうところもあるけれどね。モンスターペアレンツとか、本当に想像以上に大変なんだなって思うから。

でも、自分でさっき話したように、遅くまで勉強してきたりとか、いろんなカルチャーに触れたりとか、そういった他人とは違う経験を持っているから、逆に活かせるんじゃないかなって思っている。先生にならなくても、自分の経験を強みに変えて、他人と接して行ける仕事に就きたいかな。

―そう聞いていると、自分が海外で経験してきたことを僕は活かせていない気がしてきちゃうな(笑) 舟木さんは本当に海外でいい経験をしたのだなって思う。そんな舟木さんから、後輩の帰国生たちに向けて何かメッセージはある?

否定的なことばかり言っちゃった気もするけど、そういうのも全部「経験」として受け止めてほしい。日本の大学生活は楽しいし、帰国生だからって浮いちゃうことを気にしないで、どんどんその「経験」を駆使して頑張ってほしいかな。一緒に日本で楽しい生活を送ろう!

―舟木さんは本当に帰国子女という特性をフルに、そしてポジティブに使っているね。本日はインタビューどうもありがとうございました!

Redmond High School :
http://www.lwsd.org/school/rhs/Pages/default.aspx
社団法人IAESTE :
http://www.iaeste.or.jp/

インタビューアから一言

舟木さんは予備校からの知り合いで、本当にエネルギッシュで、いつも頑張っている人です。ずっと前から、他の帰国生にはない、自分の海外生活をポジティブに使っている人だと感じていましたが、今回のインタビューを通して、それが一体どうやってなされているのか、どんな効果を生むのか、その一部を皆さんにも伝えられたと思います。何度もアメリカと日本を行き来している舟木さんだからこそ、双方の文化の衝突を実際に見て、触れて、感じてきたのだと思います。今後も積極的にその「経験」を活かして活動してください!

interviewees_g_154_profile.jpg 田中潤。1990年生まれ。アメリカ・カリフォルニア州出身。Palos Verdes Peninsula High Schoolにて生徒会長を務める。18年間のアメリカ生活から一転、帰国して09年東京大学に入学。現在同大学法学部3年に在籍。日比野勤的な、精神学、論理学の観点から憲法を解析し、掘り下げて行くメソドロジーを探求。同時に、寺尾美子教授の下で、英米法を憲法的観点並びに女性裁判官の視点から俯瞰し研究する指導を受けている。