活動報告 「世界の学校から」vol.35 小掠瑞希‏

John Mall High Schoolはアメリカ・コロラド州南部のWalsenburgという小さな町にある高校です。全校生徒は200人弱の小さな学校です。コロラド州はアメリカ中西部に位置し、マイルハイステートと呼ばれています。その所以は、ロッキー山脈の最も標高の高い部分がコロラド州に位置しているから。あまり豊かな地域ではないそうですが、大自然と人々の暖かさに囲まれた高校生活を、中央大学法学部国際企業関係法学科3年の小掠瑞希さんにご紹介いただきます。

interviewees_g_152_profile.jpg 小掠瑞希さん。1990年愛知県生まれ。地元の公立小中学校を卒業後、愛知県立千種高等学校国際教養科に進学。在学中に単身アメリカ・コロラド州のJohn Mall High Schoolに留学。帰国後、千種高等学校を卒業し、中央大学法学部国際企業関係法学科に進学。大学では学生団体The Asian Law Students’ Association(ALSA)に所属。日本支部の代表補佐外務担当として、アジア各国支部との交渉に尽力した。国際労働機関(ILO)本部のインターンシップにも参加した経験がある。

活動報告

〜はじめに〜

Walsenburgはコロラド州南部に位置する小さな町です。州の真ん中を走るHighway 25に直結し、州都のデンバーから175マイル離れています。全校生徒は200人弱と小規模です。残念なことに、アメリカ全土を見ても1、2を争うレベルの貧困地域で、町の7割の家庭が州から生活保護を受けています。

かつてWalsenburgは鉄鉱採石で栄えました。当時は、裕福な白人が新興移民であるヒスパニックの人々を奴隷として労働をさせていたそうです。Walsenburgでは次第に鉄が採掘できなくなり、裕福な白人は町から逃げて行きました。残されたのは貧しい奴隷のヒスパニックたち。Walsenburgは現在、そのヒスパニックたちの子孫が多く暮らしており、生活水準は依然低いままなのです。

〜渡米のきっかけ〜

report_s35ogura1.jpg 私は高校2年生の夏から一年間、アメリカ・コロラド州のJohn Mall High Schoolに留学しました。県立高校の国際教養科に通っていましたが、高校入学まで海外生活体験はありませんでした。クラスの7割は帰国子女で、流暢な英語を話す彼らに大きな憧れを抱きました。彼らの語学力とのギャップを埋めたい。その一心で高校1年生の夏に単身留学することを決めました。


〜チアリーディングとの出会い〜

学校は人数も少なく、課外活動のスポーツも1シーズン1種類しかありませんでした。最初のシーズンは、男子はアメリカンフットボールで、女子はバレーボールのみ。1年間断続的に続くのはチアリーディングだけでした。私はあまりスポーツが得意ではありませんでしたが、友人を作りたいという思いから、挑戦しようと思い立ちました。

年に一度のホームカミングデーに、私はアメリカンフットボールの試合でチアリーダーとしてデビューしました。周りのチアガールたちが応援するのに合わせて、必死にパフォーマンスをしたのを覚えています。ゲームは大盛り上がり! パフォーマンスは大成功しました。学校が一丸となってチームを応援し、その最前線に自分が立っていることに、大きな喜びと楽しさを覚えました。毎週金曜日に行われるゲームはいつも楽しみでした。ひとつひとつのゲームに思い出がつまっています。 report_s35ogura1.jpg

〜広大な自然〜

Walsenburgは広大な自然に囲まれた小さな街です。ホストファミリーの計らいで、週末はよくドライブに出かけました。山の中を車で進んで行くと、鹿や熊に出会うことが出来ます。春先になると街まで鹿が降りて来ます。コロラドでの1年間は、自然を目一杯楽しみました。

その他にも、野生オオカミの保護施設の見学に行ったり、広大な平原で乗馬を楽しんだりと、日本では出来ない週末の過ごし方を体験しました。小中学生のときに乗馬をやっていましたが、習っていたのはイギリス式の乗馬でした。コロラドはアメリカ西部。まさに映画で見る西部劇のような馬の乗り方は、私にとっても初めてでした。

report_s35ogura1.jpg 自然と戯れて遊ぶ週末。そこには人々の暖かさがありました。小さい街だからこそ、みんながみんなを知っている。買い物に行けば、お店のおばさんは私の好きなアイスクリームの味を覚えていて、乗馬に行けば、そこで出会った小学生の女の子と馬を走らせて競争しました。都会では味わえない人の温かさとつながりを実感することが出来ました。


〜貧困・格差・差別〜

この街の人々は、正直に言うと、総じてとても怠惰でした。生活保護に頼り、働こうとしません。違う国に生まれただけで、こんなにも違うのかとショックを受けました。人々は暖かいですが、過去に先祖が奴隷だったことを今でも根に持っていて、自分たちが生活保護を受けて当たり前だと主張するのです。

街が僻地にあったからでしょうか、教育には十分な人材が揃っていませんでした。一番の問題は、性教育を教えられる人がいないことでした。生徒たちは避妊を知りません。高校卒業までに、ほとんどの女子学生は妊娠と出産を経験していました。若くして母になった人たちの子どもが、同じように若くして母になる。そんなサイクルの繰り返しが存在していました。教育を十分に受けられない、受けようとしない。アメリカの他の土地と比べて、教育水準はかなり低いと言わざるを得ません。

生徒の9割はヒスパニックでした。学校には白人の生徒もいましたが、ヒスパニックの生徒の中に溶け込んでいる人はごく少数です。ヒスパニックの生徒たちは白人の生徒を嫌い、差別によるいじめも数多く存在しました。20マイル離れたLa Vetaという町にある学校に転校する学生もいたほどです。

〜積極的に挑戦する大切さ〜

学校生活以外で、私は2つの大きなイベントに参加しました。Presidential ClassroomとColorado Columbine Girls Stateです。自分の英語力を試すことと、もっとたくさんの人に会うことが目的で、このようなイベントに飛び込んで行きました。 report_s35ogura1.jpg

Presidential Classroomは、毎年春にワシントンD.C.で開催されます。世界中の高校生が400人ほど集まり、世界の社会問題について議論を交わします。日本代表としてそこに参加し、世界中の高校生との出会いにとても興奮しました。そこで英語というツールの強さを実感しました。

1週間いろんな国の同世代の人と過ごし、一つの問題について様々な考え方を持っていること、そして各自の意見を聞き合い、なにか一つの解決策を見いだすことの難しさを学びました。とても基本的なことですが、互いが互いの意見に耳を傾けることの大切さ。それが出来れば世界は平和になるのではないかと強く感じました。

一週間のプログラムの最後、私はチームの代表として閉会式でスピーチを任されました。互いが互いの意見を聞き入れることの大切さについて話しました。その閉会式には、アメリカ政府の専属ジャーナリストや米海軍のヘッドなど、たくさんの著名人が出席していました。最後にゲストの方がスピーチをしたときに、私のスピーチの内容に触れ、お褒めの言葉をいただくことが出来ました。

夏休みにはColorado Columbine Girls Stateに参加しました。これは、コロラド州の高校2年生の女子生徒が500人ほど集まり、一週間共に生活しながらアメリカ政治について議論をする場です。Girls Stateという一つの州に住んでいると仮定し、グループは街を表し、自治を行います。一週間で州知事や副州知事を決めるという、実に面白いイベントでした。

ちなみに、イベント期間中は男子禁制。ボーイフレンドと電話をすることも許されず、外に出て男性と会話をするのも禁止です。お世話をしてくれるのはGirls Stateの卒業生たちでした。Girls Stateは各州で開催されていて、各州から2人ずつ代表が派遣されGirls Nationという全国イベントに参加します。

この頃までには、他の学生と対等に議論を交わせるだけの英語力をつけていました。一週間のプログラムの中では、議論だけでなくタレントショーもあり、私はグループの代表で日本の歌を歌いました。

最終日には、Girls Nationに参加する学生の最終投票があります。私は最終10名のなかに選ばれていました。500人全員の前で、どれだけGirls Stateを愛しているか、各自がスピーチをしました。残念ですが、私は代表に選ばれませんでしたが、投票で4位となり、閉会式で壇上で表彰されました。

2つのイベントに参加したことで、私は自分が積極的に行動を起こすことの大切さを学びました。たくさんのスピーチを経験させていただき、自分の英語に自信がついただけではなく、自分のトークで人を惹き付ける楽しさも知りました。これらの経験がなければ、積極性や行動力を身に付け、人前に立つ楽しさを感じることはなかったでしょう。

〜さいごに〜

アメリカはたくさんの顔を持つ国です。小さな街で体験して学んだ貧困や差別の存在。どんな環境にも飛び込んで行く勇気と楽しさ。John Mall High Schoolには最高の学習環境があるとは言えません。しかし、自分の行動次第で学校生活をいくらでも有意義にすることができます。これはアメリカだけでなく世界中どこでも同じだと思います。

アメリカは私に、挑戦することの大切さ、違いを受け入れることの大切さを教えてくれました。辛い経験も多かったからこそ、この留学生活は現在の自分を形成する大きな要素になっていると思います。

John Mall High School :
http://huerfano.k12.co.us/jm/
Presidential Classroom :
http://www.pc2010.org/
Colorado Columbine Girls State :

http://www.freewebs.com/coloradogirlsstate/